丸い粒子をできるだけ密にギュウギュウに詰める問題といえば、最密問題である。立方最密充填と六方最密充填がある。
一つの面内を見ると、正三角形がつながっている。粒子を詰め込む際には、容器をガタガタ揺すってやれば、だいたい素直にこの形に納まるものである。
ところが、満員電車ではこううまくはいかない。
一つはリュック問題である。もともと背中に背負っていて後ろに人に当たっていても気づかないことが問題にされ、「前に抱えてください」という指導になったはずなのだが、なぜか「前に背負う」人がほとんどになってしまった。
リュックを前に背負うと、そのリュックが人を押していれば分かるため、譲り合いが起こると考えられての提案だったか、まったく譲らない。おまけにリュックを机代わりにして、スマホや本を置いて支えるのに都合がよくなった。かえってグイグイと相手を押すようになっている。
おまけに皆んな同じような高さでリュックを背負うため、粒子でいうと直径が増えてしまい、ギュウギュウ度が上がってしまう。
リュックを肩から外し、足元、特に脚の間の床上に置けば、粒子の直径は減るし、2層目として荷物も他とぶつからずに持つことができるのだが、これをだれもしない。
また、いったん場所を決めたら、足の位置も身体の向きもテコでも変えようとしない人が多すぎる。そう、身体の向きを変えれば直径が少ないところで接触するだけになり、ギュウギュウ感が減るのである。しかし、しようともしない。
たしかに算数も物理も苦手だった人が多いのだろう。でも、最密充填を習ったときには同じような場面を想像して覚えた記憶がある。せっかく覚えたことが実社会で役立つのに役に立たないようにしている人が多いのは、残念なことである。