jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「新しい生活様式」ではなく「新しい産業構造」の発想転換が必要

「新しい生活様式」を専門家会議が具体例を提示した(2020年5月4日)。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200504/k10012417741000.html

 これは「日本の国民の新しい生活様式」の提言だが,正直,日本国民がこれを実行しても社会はよくならない。産業構造そのものを新しくすることを提言したい。

 この「新しい生活様式」は,「ゆるい目の“自粛”」にすぎない。今,求められている程度の“期間限定的な自粛”すらできない国民に,「少し自粛した生活をこれからずっと続けてください」とお願いしても,できないことは目に見えている。

 しかも,世界中が行動制限の解除の方向性を出し始めているのに,日本は今の状況では緊急事態宣言を今後も何度か延長することになると見ている。その段階で,世界から孤立し,グローバル化した世界の中においては今のままでは日本経済は完全に破綻してしまう。

 中小,零細,個人を問わず,各企業は思い切った業態変更を考えなければ生き残れなくなっていると考える。政府・行政の補助金や融資では,年内を持ちこたえることはまず無理なのではないだろうか。特に観光,その中でも海外からの観光客需要と海外への観光需要に頼っている企業は,まったく新しい仕事を始める覚悟が必要と考える。

 日本がいつまでもウイルス騒ぎで自粛が続いていることを世界各国が認識しないわけはない。したがって日本への渡航はほぼなくなる。無理して誘致した東京オリンピックもおそらく中止になる。福島原発事故による観光客激減を一掃しようとしたツケが,ここでも顕著の現れる。日本という「エキゾチック」でちょっと「ハイソサエティ」的なイメージは,この新型コロナウイルス対策の失敗によって完全に崩壊し,観光としての魅力もなくなるだろう。「日本に行ったら,放射線の影響もあるし,ウイルスもあるから,もう行かない」というイメージが定着したら,もう海外からの観光目当ての構図は崩壊するのである。

 もちろん,海外での日本人受け入れの姿勢も変わる。「日本人お断り」とどの国も日本からの観光客をシャットダウンするだろう。海外向けの観光案内業務も崩壊する。

 もともと資源のない日本にとって,製造業による外貨の獲得の構図が崩壊したあと,観光立国による外貨の獲得は根本的な産業構造の改革のシナリオだった。社会主義の恩恵で安い人件費を武器に世界の工場となった中国が外貨を稼ぎまくり,裕福になって日本に観光に訪れ,外貨を落としていく。この「おこぼれちょうだい」が海外からの観光客誘致の構図である。新型コロナウイルスのおそらく発生源だった中国は,すでに規制を緩めており,海外への渡航も近いうちに始まると見られるが,日本には向かわないことは想像に難くない。ただし,感染の第2波を恐れる各国も,中国からの観光客は受け入れないかもしれない。日本からの観光客も同様に海外各国で受け入れられないだろう。日本人の海外旅行のビジネスも崩壊する。

 予約がほぼゼロになったと答えるホテル業界には申し訳ないが,国内,海外からの観光需要は当分は回復しないと言わざるをえない。維持費,従業員の給与,賃貸料など,出て行く経費は減らないので,収入を得る道を選ぶしかない。苦渋の決断をしなければならないが,「療養施設への転換」を図っていただくのが現時点では最も望まれているだろう。また「テレワークのための遠隔施設への転換」という道もあると考える。

 都内を中心に,新型コロナウイルス感染者の軽症者が経過観察をするために施設を提供しているホテルがあり,頭が下がる思いである。しかし,通常の部屋を提供するだけが精一杯で,滞在者にとって快適な空間にはなっていない。また,従業員がそこで働けるわけでもない。

 ホテル業は今後,療養施設業への業態転換を図ることで,「ゆるい目の自粛」を余儀なくされる一般の人や軽症者に対するサービスを提供することで生き残りをかけるしかないのではないかと考える。そのためには,療養中の人に対するサービスの提供の仕方も設備もこれまでと変わってくる。従業員の教育も,療養設備に合わせたものにすることで,医療関係者不足を補いつつ雇用を守ることができると考える。

 密集を避けつつ楽しめる新しい娯楽設備の開発と導入,従業員と施設利用者の間の意思疎通が図れる設備や自動化設備の導入,そして従業員の教育と,課題は山積だが,早く取り掛かった企業が先頭に立てるのではないかと考える。

 以前,京都のタクシー会社が全社員,日本赤十字の救急資格を取り,話題になった。また都内を中心に,介護専門のタクシーを運用する会社も出てきた。従業員にとっては大変な負担だが,新しい顧客需要に対応する業態変化の一つである。

 テレワークの施設もこれから積極的に増やす必要があると考える。テレワークに適した施設への転換も,通信設備や大型ディスプレイなどの設置など難しい点は多いが,これも一種の投資である。特にリゾート系のホテルにはその需要に合った環境を提供できるのではないだろうか。そこに「安全」なエリアを構築できれば,一種の城下町を作ることができる。テレワークについては,別のスレッドで考えてみる。

 海外からの物流は何とかなるので,エネルギーや必要な製品,食糧は当面は確保できると考えられるが,これもいつまで続くかわからない。特に食糧は,もう少し自給自足率を上げることが求められる。研究が進む植物工場への転換,魚介類の陸上養殖の整備,大豆タンパク質からの肉生産などを大幅に進めることで,食糧自給率の向上と雇用の確保を図ってほしいところである。

 リゾート地でのテレワークや療養を進めることで,都会の公共交通による慢性的な混雑も解決する。それぞれの「城下町」にたとえば数千人という街ができれば,そこに食のニーズもできる。都内で閑古鳥が鳴いているというレストランが,各地での需要に応えてくれればいい。席に座るだけでウン万円,料理がウン万円といった商売をしている料理人は,そこには要らない。

 あとは,物流の充実である。すでにタクシー業界で食事を運ぶ業務を受注した例が紹介されている。人が動かなくてもモノは動く。モノを移動させるのにドローンだけではできない。必ず人が必要であり,雇用機会も生まれる。宅配で食事を届けるビジネスも,本業のタクシーの配車サービスが行き詰まっていることからの発想拡大とも言える。

 観光だ,海外需要だ,オリンピックだ,と浮かれてきたのを反省し,今一度,足元を見直して発想転換し,しっかりした地盤の国を構築することを提言したい。