jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

女性は縫い物の設計と縫製の天才だ

世の中には職人と呼ばれる方が多数おられる。家を作る大工さん,工芸品の作家などなど。物を削ったり,組み立てたり,練り上げたり,色を塗ったりといった流れで作品が出来上がっていく。実に見事なものだと思う。

 一方,最近感心したのは,縫い物である。手作りマスクの作り方をおそらく数百人という方がYouTubeで紹介していたが,実に細やかな設計がされていた。

 感心したのは,その制作手順である。外側の布と内側の布の2枚の縁を縫い合わせるのだが,縫い合わせた部分を開いて縫い代を開き,ここにアイロンを当てて平にする。最後に裏返して形を整え,穴を縫って塞ぐ,という流れである。予め,縫い代を作って布を裁断すること,そして最後に裏と表をひっくり返して形にするなど,全体の工程を考えながら各パーツを設計していく必要がある。

 着物は基本的に直線縫いで長方形が基本形であり,着付け時に紐や帯で形をつくって行くが,洋服は着た時点で体型に合っていなければならないため,すべて立体裁断である。平面である布を切って,それを縫い上げながら立体を作っていく。出来上がった立体をイメージしながら,縫い方,裁断の仕方を設計する。

 同じ立体を作るにしても,削ったり練り上げたりする職人芸は,いわば力の入れ加減,手の感覚がポイントだが,立体裁断は,事前の綿密な設計がポイントになる。

 YouTubeに投稿された日本中の手作りマスク設計者の方は,基本的にみなこの設計をしてきたことになる。他にも,手芸店で型紙を配り,そこに製作法も解説した方が多数おられた。おそらく,このほとんどの方は女性だったと思われる。

 NHKの朝ドラ「カーネーション」で戦後の女性の洋服製作をミシンの直線縫いだけで指導する話があるが,直線縫い,ミシン縫いだけで立体を作り上げていく設計ができるのは,女性ならではの勘なのではないかと思えるようになってきた。

 最近見た「すてきにハンドメイド」というNHKの番組では,手作りのリュックサックを製作していた。切り抜きは比較的単純な長方形が中心だったが,肩紐の作り方からすでに驚きの連続。1mm単位で折り曲げて縫い込んで行く。ミシンで2本縫っていく際に,均等の厚さになるように設計されているのだ。何度かの試行錯誤の結果,この「レシピ」が出来上がっているのだとは思うが,実に綿密に設計されている。

 何よりも,マスク同様,表地と裏地を別々に作ったあと,合体させて,最後にぐるっと裏返して作品が出来上がる瞬間が,実に感動的だった。さらに,一般視聴者の代表3人が先生の指導のもとに製作し,見事に出来上がったのを見,さらにそれぞれが自分好みに大きさや生地もアレンジしていた。こういった手作業がよほど好きでないと,できないと思った。

 太古の昔,現世の人類が出現したころから,女性にはおそらくこの縫製の才能があったのではないかと想像する。旧人類はおそらく服を来ていなかったと思う。現世人類になって,男女の性差がよりはっきり現れ,腰ミノ的なものから始まってムシロに穴を開けたものを腰ヒモでまとめたものなど,服も急速に進化していったと考えられる。

 これを作ったのは,当時から女性の技だったのではないだろうかと考えている。より着やすい物,着て気持ちのいいもの,丈夫なものなどの工夫を重ね,縫い合わせる方法,編み方などを考案したのも女性ではないだろうか。

 現在,ブランド品の洋服やカバンなどを除いて,その他の多くの縫製品は中国は東南アジア諸国で作られている。縫製工場で主としてミシンを使った縫製作業をしているのは,女性が中心である。映像で見ても,業務用ミシンのあのスピードを使いこなしている姿もすごいと思う。極めてバランス感覚の必要な作業である。そして,的確な作業によってしっかりした縫製ができていると世界中でも高く評価されている。

 これをもって,女性の縫製は「職人技」と言ってもおかしくないと思う。設計はコンピュータ化でき,切断はレーザー加工機で一気に正確にできたとしても,これを縫い上げる作業はロボットでは決してできない作業である。人件費のかかる作業だけに,東南アジアに生産中心が移ったのはやむを得ないかもしれないが,世界中にこんな器用な職人技を持った女性が数多くいることにまた感動する。

 現世人類の男女差を支える衣服の文化は,女性の手によって作られ,進化し,現在も支えている。火を使った調理を支える食の文化も,女性が作ったと思う。家庭という枠の中に閉じ込められているようで,もったいなく感じる。衣食の文化については,ネットワークを通じた組織化が可能な時代に来ていると思う。在宅であっても共同で何か大きな事業を構築することができるのではないか。新型コロナウイルス時代,在宅,オンラインが大きなビジネスチャンスになるような気がする。