jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

報道される数字や,お笑いタレントにマヒしてきた

2020年7月以降の新型コロナウイルスの感染確認者増加は,筆者は「第ニ波」だと認識している。第一波のときと違って医療体制が整ってきて,感染爆発にはならないから第二波ではない,という言い方がされている場合もあるが,現在の状況は明らかに第ニ波である。収まる兆しもなくだらだらと続くイメージもあるが,ここで収束させるか,拡大させるか,という瀬戸際にあると思うのである。

 連日,報道は「今日の感染確認者は何人」と報じている。現在は全国でだいたい1日1000人規模である。この状態が仮に1年続くと,感染者は単純計算で36万5000人ということになる。年間1000万人が感染するインフルエンザと比べて規模は桁違いに少ないのかもしれないが,いまだにワクチンも特効薬もなく,医療現場が逼迫している中で,これ以上の感染者数の拡大はぜひとも食い止めたいところである。

 問題は,連日の報道によって「今日は4日ぶりに感染者が200人を切りました」とか「連続4日,200人超え」とかいった数字が発表されることである。

 報道は,数字を使うことでより正確な情報を提供している気持ちになっている。事件や事故でも,何人亡くなって何人ケガをして,その人が何歳で,職業が何で,とコメントし,最後は「警察・消防が原因を調査している」で終わる,というパターンである。マスコミはこういう情報提供の方法しかできないし,それが最良だと信じ込んでいる。

 視聴者はこれを受けて,「今日は感染者が多いな」とか「今日は少ないな」とか思うだけになっている。数字にマヒさせられているのである。「今日の感染者数が減ったから良かった」という単純な思考をさせられてしまう。報道する側も,「今日の数字を正確に言えばいい」という思考に陥っている。数字が間違っていれば訂正するだけだし,情報元の数字が違っていれば,その揚げ足を取る報道をする。実に単純な思考過程しか持っていないように思う。

 この火に油を注ぐのが,ワイドショーのタレント司会者であり,タレント素人コメンテーターである。数字を煽り,何とか話題を膨らませるように誘導する。招聘された専門家まで,自分の意見に賛同させるような誘導質問をし,言葉尻を捉えて賛意を得たとばかりにコメントする。国会での質問も同じレベルだったことを思い出すが,ワイドショーは一方的に情報を拡散するため,国会以上にタチが悪い。ほとんど犯罪的行為である。

 このような番組構成は,視聴率を稼ぐことができるのだろうと思う。視聴率が上がるから広告主もお金を出すらしい。スポンサーとして金を出す気持ちが筆者には理解できない。良識ある企業は,順次こういう番組のスポンサーを降りていると思う。穴の開いた枠を,ほかの企業に売りつけ,広告費を稼ぐ仕組みである。広告主の質がどんどん落ちているように思うが,お金さえ入れば報道側は問題ないらしい。その辺りの線引きもできないほど,報道経営側もマヒが進んでいるのを感じる。

 情報を発信する専門家は,「専門バカ」になっており,一般人に理解のできる情報発信ができない。この「専門語」を一般人にわかるように咀嚼して提供するのが,報道などのマスコミの仕事である。マスコミは「情報翻訳業」に徹する必要があるにもかかわらず,いまや“情報捏造業”や“情報宅配業”に成り下がっている。ワイドショーは,司会者と素人コメンテーターが寄ってたかって情報を捻じ曲げてエンタテインメントにしているし,ニュースはただ数字を送出するだけの宅配業になっている。そこに何のインテリジェンスも感じず,逆にアジテーターになっていることを感じる。

 インターネットで万人が情報発信できるようになった今,既存のメディアはプライドをかなぐり捨ててでも既得権益を守ろうとしているのだろう。広告収入が経営の柱であり,広告主に左右される番組作り,視聴率に左右される番組作りを続けるためには,視聴者に受ける内容,視聴者に受ける司会者やコメンテーターにせざるを得なくなる。お笑いタレントが司会をし,元局アナをフリーの司会者として高額で起用し,くだらない意見交換で時間を稼ぐ。

 演劇や音楽など,発信する情報のオリジナリティとクオリティで客から正しく販売収入を得ていた業界が悪戦苦闘する中で,放送許可という既得権益の枠の中で生きている放送業界は,もう基本的な報道の使命を捨ててでも生き残ろうとしているように思える。もう一度,「情報のオリジナリティとクオリティ」を見直してもらいたいものだと思う。番組の内容に全く関係のない広告主を入れるべきなのか,そういう線引きをしてほしい。

 同様に広告主側も,クオリティを維持してほしいものである。おそらく出演料の関係で,出演者がこれまでの俳優系からタレント系にほとんど変わってしまった。以前だったら,絶対と言っていいほど声がかからなかったようなお笑いタレントが,上場企業の広告の顔として起用されている。おそらく消費者の「好感度」という指標での採用とは思うが,筆者のように完全に逆効果に思っている消費者も数多いことを認識してほしい。これも,広告代理店側のレベルの低下が原因だとは思われるが,企業側ももっと意識を高く持ってほしいものだと思う。それでも「背に腹は代えられぬ」なのであろうか。