jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

情熱は政治家を頼もしく見せる(理想的かどうかは別問題だが)

政治家という人たちの多くは,選挙の時はあれほど情熱を持って理想を語るのに,いったん当選してしまうと,まるで官僚のようにお決まりのセリフしか発言しなくなるようである。

 型破りといえば,アメリカのドナルド・トランプ氏だろう。選挙でも自分の理想を語り,当選してからも自分のしたいように行動した。誰もが腫れ物を触るように遠目で注視するだけだった北朝鮮金正恩氏を米国に呼んで会談し,ミサイル開発や核開発問題にズバリ切り込んだ。傍目には,いつミサイルの発射ボタンが押されるか,と気が気ではなかったが,一定の成果を出したとも言えるだろう。

 アメリカ第一主義で,中国とまともに関税対決を仕掛けたり,日本とも市場開放に圧力を加えた。防衛の負担を各国に要請したり,産業を圧迫するとして環境問題の枠組みから脱退した。同様に雇用を圧迫するとしてメキシコとの間に壁を作って移民を規制した。アメリカを一つの企業と考えれば,まさに経営者の利潤追求の視点からの行動といえるだろう。大統領選挙で劣勢になると,裁判に持ち込んで事態を長引かせようとする。これも経営者的な視点である。

 トランプ氏の魅力は,その情熱とある意味での一貫性である。共和党が何を言おうが,世界が何を言おうが,首尾一貫して自分の考えを通した。サイコパスではないかとの観測もあるほどだが,仕事が得られる,収入が増えるという層には圧倒的な人気を保っている。

 近代の日本の政治家では,小泉純一郎氏が型破りだったという印象が強い。総理大臣を5期も務めた安倍晋三氏も,ある意味で情熱家だったといえる。安倍氏の場合は,側近やブレーンと呼ばれる人たちがブレなかったことが,自信のある発言になっていたと思われる。最後は体調不良と夫人の不祥事(おそらく),そして予想だにしなかった新型コロナウイルスの世界的蔓延など,自らコントロールできなくなって,失速してしまった形かと思われるが,オリンピックの招致や天皇の生前移譲による新年号への切り替えにも立ち会い,「歴史に名を残す」ための情熱が凄まじく,さまざまなイベントを作り上げてきたと思う。

 さて,新総理大臣の菅義偉氏だが,長年,官房長官として記者会見でのやり取りを聞いてきた印象がそのままである。感情を抑えた言動は,思慮深いのかと思いきや,実は「何かを成し遂げたいという情熱がない」ように見える。根回しが得意と言われており,自分が先頭に立って理想論を語る前に,すでに裏で決着を付けているため,熱く語らなくても世の中は前に進む,という構図である。

 しかし,国民にとっては,国の中心人物が何を考えているのかが見えない。Go Toキャンペーンなども安倍総理時代に決めたことを淡々と消化しているだけのような気がする。筆者が主張しているような「全員PCR検査」や「ホワイトロックダウン」などの具体的な方策ではなく「勝負の3週間」などと訳のわからない標語を出して,結局「何をするのか」に対する主張がないので,国民も何も動けない状態である。飲食店への時短要請も,結局は各地方自治体の長の判断に任せていて,政府は何も指示しないという構図である。

 こうした中,新型コロナウイルス対策の発言で頼もしく思ったのが,北海道知事の鈴木直道氏と大阪府知事の吉村洋文氏という若い二人の政治家である。独自の判断基準を設けたり,独自の施策を進めたりと,会見があるたびに発言に期待ができる。自ら決めたことを実行する行動力にも優れている。

 専門家に代弁させる政府も無責任だが,国との協議や責任の押し付け合いばかりする小池東京都知事の「言葉遊び」にもうんざりしてきた。地元を守ろうという気持ちよりも,自らの中央政界への道筋の方が大事とも見えるような言動である。

 鈴木,吉村両知事の若さと決断力,行動力に,期待するところが大きい。新型コロナウイルス禍は,決断が1日遅れると分岐点を外す可能性も出てくる。決断が早いほど効果が期待できる。

 若手という意味でちょっと期待していたが裏切られたのが環境大臣小泉進次郎氏である。環境省は昔は環境庁と言っていた。いまでこそ大臣だが,以前は環境庁長官である。環境問題について,それこそトランプ氏とやり合うのかと思いきや,得意の英語でジョークを交えた軽い演説をして,受けて終わり。女優滝川クリステルさんとの結婚で話題を撒いたが,正直なところ,この二人の関係はどうなんだろうか。大臣のポストを得るような人物とは思えない。

 そもそも,環境省自体の位置づけが弱い。今や日本は環境後進国である。再生エネルギーもダメ,リサイクルもダメ,切り札の原子力発電も福島第二原発事故で完全に頓挫している。これのケリも付けられていないし,冷却水の処理でも結論を出していない。SDGs時代にほとんど何も絡んでいないのが,今の日本である。

 新型コロナウイルス禍で,世間からのツッコミが環境省ではなく厚労省に向かっており,命拾いしてのうのうと窓際大臣を続けているというのが,今の小泉氏ではないのか。

 菅内閣には論客がいない。もちろん,野党にもリーダーシップがない。イギリスのように,闇の政府を作れるような立案者はおらず,ただ与党の政策を批判し,揚げ足を取り,過去の不正をあげつらう。新型コロナウイルスで被害を被った人に補助金を出せ,と言いながら,その財源についての言及がなかったりする。政権政党に盗まれようが,どんどん具体的な政策を発言すればいいのではないか。「こんなアイディアはどうですか。一緒にできませんか」となぜ言えないのだろうか。まったく狭量な考え方しか持たない野党である。

 かつて,吉田茂池田勇人田中角栄といった,豪放磊落な政治家がいた。その政策は必ずしも正しい政策ではなかったかもしれないが,経済を向上させ,日本という存在感を高めるのに貢献した。今の政治家は何だろうか。5期務めた安倍氏ですら,小玉といった印象しかない。

 老獪な菅氏への期待は,残念ながら薄れてしまった。石破氏も一線を退いてしまった形だが,なにかグイグイと引っ張ってくれる印象がなかった。岸田氏はエリートで卒なく進められそうだったが,国民の期待には応えられそうになかった。

 山東氏が衆議院議長を務める現在である。今の政治は,まるで素人集団のように思えてしまう。カリスマ性がまったく感じられない。

 トランプ氏のいいところは,「いつまでに」「何を」「誰に」と明言していることである。ウジウジしない。ダメだったらその時にやめたり先に延ばしたりを考えればいい。とにかく今何をするか,が重要なのである。そのメッセージが今の日本の政治家からはまったく聞こえてこない。

 SNSTwitterなどを使う手腕も,今の日本の政治家にはまったくと言って戦略性が見えない。オンラインに隠れてしまった国民に訴えられるとても有効な手段,という認識がまったく見えない。

 マイクを持って街頭で演説して自己主張する時代はもう終わった。しかし,ネットワークをベースに国民と対話できる政治家が出てきてほしい。トランプ氏はその点では天才的だったと言える。反発は買うものの,惹きつけられる部分も多かった。

 スケールが小さい日本の政治家。国民に自粛のお願いしかできない,無策な政治家は,はっきり言って税金の無駄である。本当に今,手を打たないと,日本は世界の笑いものになってしまうだろう。オレオレ詐欺や万引,性犯罪など,レベルの低い犯罪が蔓延する日本。先進国の中で最も貧困な国である。政治家もバカなら国民もバカである。バカでない国民には言葉の力がないが,バカでない政治家には国を動かす力がある。まず,鈴木,吉村両知事のこれからの活動に注目し,サポートして行きたいと思う。