jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

新型コロナウイルスで「専門家」の問題点が噴出か

筆者は,モノづくりが好きで,子供のころから発明工夫展などに作品を出したりしていた。単に好きだった。親になってからも,子供たちの夏休みの工作の宿題の手伝いをするのが楽しかった。自分でいろいろと部屋の改造をするのも趣味だが,最近紹介されているような洒落たインテリアだの,本格的DIY工具の利用だの,そんな美的な才能はない。基本的に機能重視,コスト重視である。

 インターネットが普及し,普通の人が情報発信できるようになって,このモノづくりの聖域にも一般人が情報発信を始めた。「自作〇〇」で検索すると,山のように情報がヒットする。料理,アクセサリー,リフォームなどの工夫から,製品使用レポート,怪しげな実験まで,さまざまだ。独自の情報収集ができなくなったマスコミが,このプチ素人さんをピックアップし,メディアで紹介し,多くの「カリスマ〇〇」が誕生した。そして本を書かせて出版し,ブームが去ればポイっと捨てて,次のネタ探しに奔走する。それでも,個人で無料販売サイトを利用したり,情報発信したり,オンラインで教室を開いたりできるような時代である。さまざまな「専門家」が世の中に出現した。

 「専門家」で厄介なのは,もともと別分野で活躍していたような人たちが幅を利かせてきていることである。いちばん厄介なのが芸人だったり,芸能人だったりする場合である。昔からゴルフ番組の常連ゲストだったり,釣り番組,麻雀などにこうした人たちが登場してきた。芸能人の存在感により,番組の視聴率も上がる。いわばコマーシャル効果である。「この人はこういう趣味なのか」という情報がわかるのはいいが,ある意味での素人講釈が始まるのが,鼻につく。しかし,番組制作者はご機嫌取りが必要なので,言われるがまま番組を作って放送する。これに視聴者も騙される,という流れである。DIY番組,料理番組など,ほとんどこの「専門家」の宣伝番組になっているのではないか。「評論家」と呼ばれる専門家たちも,結局は自身や自身の所属機関の宣伝窓口になっているだけなのではないか。

 スポーツや趣味などは,まあお遊びの世界なので好きな人たちが関心を持てばいいのだが,問題は,災害や今回の医療での「専門家」によるミスリードや,「専門家」の宣伝広告化が見えてきたことである。

 災害時,コメントする専門家の多くは,大学の防災関連や気象関連の研究者であったり,気象庁などの公的機関の担当者だったりする。正直,マスコミ報道でのコメントの内容は,素人が考えてもわかるような内容だったり,逆に「知っていたなら,なぜもっと早くアピールしなかったのか」と思えるような内容だったりする。「想定外」という言葉が使われると,それでも専門家かと反発したくなったりするし,そのあとで「数十年に1回の」とか「数年に1回の」という表現をされると,またキツネにつままれたような感じになる。逆に予想が空振りになると,次回の危機のときに信頼できなくなってくる。もうAIに任せた方がいいのではないかと思ったりする。

 今回の新型コロナウイルスでメディア報道に出てくる「専門家」についても,怪しい噂が聞かれるようになっている。感染症の専門家として,国の機関である国立感染症研究所からの情報発信は真実だとして,市中のさまざまな医院の「専門家」がコメンテーターとして登場する。普段からインフルエンザにも対応している医者だから,経験も豊富で,コメントも正しいと思っている。

 しかし,某医院では,新型コロナウイルスについての電話相談をかなりの高額の有料化したり,PCR検査も「優先的にできる」として値段を吊り上げたりしている,といったうわさが出始めた。自由診療であり,自己采配での経営なので,客である一般人がそれを適正と考えれば,需要と供給の経済原理が成り立つ。

 広告を出して,自分たちのサービスや価格を公共の情報として提示するのは,広告で成り立っているメディアの一つの経済の形である。しかし,ゲストコメンテーターという立場で招へいされて,その情報発信を利用して集客・課金するのは,いささかルール違反のように思う。ましてや,新型コロナウイルスの場合は,一般素人の恐怖心を煽り,安心神話を生ませる,という心理効果も手伝っている。

 すでに,複数のクリニックが,PCR検査の価格を示した広告を出して,活動をしている。価格が安ければいいというものでもない,というのが,今回の新型コロナウイルス禍の厄介なところである。

 これには,メディア側の認識の甘さもあるだろう。「専門家」を連れてくれば,視聴者は満足するだろう,ぐらいの気持ちなのかもしれない。さらにこういう事実が発覚すると,番組制作者側との裏取引があるのではないか,という勘繰りもしたくなる。

 政治家を信じられない。「先生」を信じられない(医者,弁護士,教員,政治家など)。公僕も信じられない(自治体,警察,自衛隊など)。企業も信じられない(食品偽装,談合,リベートなど)。国の制度も信じられない(年金,健康保険など)。

 そもそも,この時期にワイドショーで1時間も出演している「専門家」がいることが,おかしい,ということなのかもしれない。現在,新型コロナウイルスの患者を直接診療している医療機関は,医療ひっ迫から医療崩壊へと突き進んでいる。感染症法によって「指定感染症」とされた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,指定医療機関でしか処置ができない。この感染症法が改正されて「新型インフルエンザ等感染症」に分類されると,一般の医療機関でも診察,診療,治療が受けられるようになり,新型コロナウイルス感染症に対応できる医療関係者の数は一気に増えて,現在のような入院病棟の満床ギリギリ状態や,感染確認者の対応保留中といった状況はかなり改善できる。逆に,市中の医院でのクラスター発生などの感染拡大が起きてしまうかもしれないため,感染症法の改正は行われない,というのが現在の見方だろう。

 ならば一般の医療機関は,次に予想される「ワクチンの大量接種」に応える準備をしておいてもらいたいものである。ワクチン接種が解禁されると,インフルエンザワクチンと同様,接種希望者が殺到して密状態になったり,数日でワクチンがなくなったりする。

 インフルエンザワクチンの場合でも,ワクチンが足りなくて受けられない人が出る一方で,さっさと2回の接種をしてしまう不届き者も数多く見られる。海外のワクチン接種の状況を見ていると,全員が整理券のようなものを見せて,受診している。これはおそらく行政機関が発行したワクチン接種のための整理券だろう。国民皆保険というのは,そういう情報をきちんと整理し,不公平にならないような仕事をすることが当たり前だと思うのだが,おそらくフタを開けてみるとまた大混乱が起きることは目に見えている。

 肝いりで登場したマイナンバー制度はいったいどうなっているのか。個人への一律配布など,このデータを元にすれば簡単なのではないのか。事業補助についても,毎年毎年,確定申告で個人事業主も含めて各事業体の収入などの数字は把握しているはずなので,それに応じた資金援助を自動的にすればいいのではないのか。総額を把握しているのなら,逆算すれば必要な予算も一発で計算できるのではないか。

 中国のような完全管理社会がいいとは思わないが,せっかくのデータベースが全く活用されていないのが日本である。「専門家」の問題点は,その抜け道を利用しているとしか思えない。

 「専門家」かもしれない一般クリニックの先生方,ワクチン接種が始まったら,テレビ出演などせずに,寝食を忘れて一般人のために活動してくださることを期待する。