jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

ワクチンの一部廃棄が心配な事態に

新型コロナウイルス対応ワクチンの高齢者への接種が各地で始まった。1自治体あたり1500人とか1900人とかが2週間ぐらいの間に接種するようなスケジュールのようだ。

 ファイザー社のワクチンは,マイナス60度からマイナス80度の超低温冷凍庫で最大6ヶ月保存できる。インドでは最大9ヶ月まで保存期間を延ばす措置が取られている。しかし,超低温冷凍庫から出して通常の冷蔵庫の2度から8度では5日間,医療用の冷凍庫のマイナス15度からマイナス25度では2週間の保存ができることになっている。

 さて,通常の冷凍食品と同じように,超低温で凍った状態から接種できる常温,あるいはいつでも使用できる冷蔵保存状態にすると,原則としては5日で使い切らなければならない。再解凍は基本的にできないからである。1本のバイアル(容器)での接種回数はとりあえず6回として,1日の接種予約に対して同数用意するのかというと,多めに解凍して準備するのだろう。しかし,予約どおりに接種予定者が来るとは限らない。都合によるキャンセルもあるだろう。このあたりの本数管理は現場に任されているのだが,果たしてうまくいくのだろうか。

 八王子市の場合,1900人がまず先行接種を始めるが,その次のワクチンの供給がいつになるか現時点ではまったく不明である。その供給が決まってからまたバタバタと予約取りが始まる。前回も,供給が知らされて実際にワクチンが届くのがわずか30分だったという。正直,どういう管理,連絡体制が取られているのか,疑ってしまう。連絡は,オペレーターによる電話なのだろうか。供給のクルマが発車してから連絡されたのだろうか。

 リアルタイムの個数管理が極めて薄弱な状態にあるような気がする。前回,冷凍庫の故障で1000人分ぐらいのワクチンが廃棄された。今回も,たとえば冷凍庫の準備ができていない段階で供給が始まったり,接種予約の流れがうまくいかずに解凍されたまま放置されたり,といった不手際が,各地で起こらないか心配である。

 供給から利用までの流れをリアルタイムに管理する手法がトヨタ生産方式であり,これは日本のお家芸である。カンバンという物理的なタグを回すことで,滞りなく物流を管理する。これをさらに進化させてコンピュータを利用した物流システムもすでにできている。政府,医療機関,そして接種者までの流れは,まさにこの部品供給システムと同じである。自動車部品の場合は,「コスト」というムダが生じるが,ワクチンの場合は「廃棄」というムダが生じる可能性がある。大量接種を進める先進各国では,柔軟に接種者の枠を広げて廃棄のムダをなくしつつ,データによって接種の進行管理が完全に行われているように見える。少量ずつ,段階的に増えていくような日本の現状で,この物流,温度管理,接種の流れがうまく機能するのか,また接種データの管理もカード式のアナログ方式で,予約も電話というアナログ方式で進めている日本で,ムダなくワクチン接種が進むのかどうか,心配している。