2021/5/20,新たに米モデルナ社と英アストラゼネカ社の新型コロナウイルス対応ワクチンが,日本での使用承認がされた。先に承認されて接種が始まっている米ファイザー社製ワクチンが8500万回分,モデルナ社製ワクチンが9月までに5000万回分,さらに5000万回分の追加が予定されている。これにアストラゼネカ製ワクチンが年内に1億2000万回分が供給される予定である。
このうち,モデルナ社製ワクチンは管理温度が-20℃前後でファイザー社製ワクチンの-80℃より管理しやすいため,主に大規模接種会場での使用が予定されている。先に輸入された分以外の生産は,国内の武田薬品工業が担当する。
さて,順調にいけば年内に2社のワクチンで1億3500万回分,人数で6750万人分が2回接種可能ということになる。高齢者から進み始めたワクチン接種が年の前半なので,主に高齢者がこの2種類のワクチンを受けることになる。
一方,アストラゼネカ製のワクチンもJCRファーマが9000万回分を国内で生産するが,おそらく先にイギリスからの輸入が始まると思われる。
問題は,このアストラゼネカ製ワクチンの効き目がやや弱く,副反応が血栓というちょっと厄介なリスクが報告されていることである。しかも,若い年齢層で血栓ができる確率が高くなる傾向にある。欧州各国は接種を一次中止,アメリカもまだ承認していないなど,各国とも接種にやや消極的になっている。
順番からすると,高齢者が先でその次の若い層への接種開始に伴ってアストラゼネカ製ワクチンが供給されるようになる。しかし,若い人に副反応が多いとなると,アストラゼネカ製ワクチンの接種を拒む若者が増えても仕方ない状況になっている。そうすると,欧州と同じように,行き場がなくなってしまうのではないかという危惧がある。
頭数は揃えたが,接種拒否によって余ってしまうことが考えられる。最初から途上国に回してしまえという議論もあるようだが,いまさらそれも失礼な話である。価格を下げて供与するという話になるのだろうか。
筆者が来週に来る予定の接種券で予約するワクチンは,おそらくファイザー製になるのだと思うが,その次の世代が選択をしなければならなくなり,また取り合いが始まる,あるいは接種完了まで時間がかかり,その間にまた感染拡大してしまって,ワクチンの意味がなくなる,といったこともシナリオとして考えられる。
接種券の発行を,若い人向けにもなるべく早く出して,ファイザー製やモデルナ製を早めに選択できるようにするのが望ましいようにも思えるが,また早い者順,抽選の運のいい順という格差がついてしまう。
日本人のわがままで,ファイザーからの追加供給の交渉と,アストラゼネカ製ワクチンの低価格での途上国への供与が,日本人としての平等制を維持するには必要なのかもしれない。いやむしろ,欧州と同じように,アストラゼネカ製ワクチンの承認を再度取り下げ,ファイザーとモデルナだけの供給を受ける,ということにしてはどうか。
【追記】アストラゼネカ製ワクチンは,承認はしたが,「当面は無料で打てる公費接種の対象外となる見通し」と厚生労働省はコメントしたようだ。「接種を勧める年齢層などが決まれば」とのことアストラ製は公的接種の対象外 米英2ワクチン、正式承認へ (msn.com) (さて,「公費接種」「公的接種」ってどちらが正しいのだろうか)。
船長といえば,船が沈むような場合でも最後まで船を離れないのが責任の表し方である。市長や役所職員が,住民に先立ってワクチンを接種してしまった,という居直りが相変わらず続いている。余った分は高齢者施設の職員,運転手などのエッセンシャルワーカーに接種し,さらにキャンセル待ちもきちんと管理してムダな廃棄をしない方法を考えてほしい。SNSでキャンセル情報を発信するのもいいだろう。そして,率先してアストラゼネカ製ワクチンの接種を受けて安全性の証明をするのが,各行政の長ではないかと思ったりする。まだまだあちこちで醜い人間の真の姿を見せられて,これもウンザリである。