節水をうたうトイレが増えている。少量の水で一気に流す,いやむしろ吸い込むようにして流すことで,従来の半分ぐらいの水量で流せるという。
一方で,トイレットペーパーの使用量は増える傾向にある トイレットペーパーの使用長さの件 - jeyseni's diary 2921/3/11。このときのブログにも書いたが,1回5m,これを3回繰り返して流す,などは普通に行われている。
フラッシング(トイレを流す動作)1回では,トイレットペーパーで3m分ぐらいが最大量らしい。上記の例などは,もってのほか,ということになる。
ならば数回に分けてフラッシングすればいいが,そうすると節水トイレの意味がなくなる。2回のフラッシングで,以前のモデルと同じ水使用量になる計算だからだ。
さらに,節水したために汚れが残りやすい傾向がある。最新のトイレは,汚れが残りにくい防汚処理もしているが,それでも表面の乾燥によって汚れ成分からニオイが出る可能性はある。
これを防止するために,非使用時にも定期的に水を流していることがある。公衆トイレの多くは,この定期的フラッシングをしている。これにより,また使用水量は増える。
少量の水で流す,といえば電車,新幹線,航空機などが先輩格にあたる。その昔,電車,いや列車,特に長距離列車にはトイレが付いていた。しかし流したものはほぼほぼそのまま線路に撒き散らしていた時代がある。鉄道写真をささやかな趣味としていた当時の筆者も,親兄弟と旅行に行って線路脇で撮影したものだが,近づいてくる列車の脇から水しぶきが上がるのに何度か遭遇し,大慌てで線路から離れたものだ。広い範囲に撒き散らせばそのうち消えてなくなるだろう,的なおおらかな時代の話である。その後,すべてタンク式に変わったが,その分,メンテナンスは大変なことになっているに違いない。
家庭用の水栓トイレも,後工程のことを考えると,ある程度多めに薄めて流した方が排水管の詰まりが少ないのではないかと想像する。すると,節水トイレでは返ってトラブルが増えるような気がする。
家庭のトイレが詰まるのは,その原因は分かるだろうから,家族で相談して紙の使用量に気をつけるようにすればいい。しかし公衆トイレではそのような指導ができないとすると,トイレットペーパー側に使用長さカウンターを表示したり,一定量以上は有料にするなどのIT的指導が必要なのかもしれない。
大阪人は昔から「ケチ」が美徳だったが,今はどうなのだろう。ケチはケチくさいのではなく,節約の知恵である。単に大阪人が「デパートでも値引き交渉する」オバちゃんのイメージでケチ精神を表現することが多いが,むしろ美学である。昨今のリユースの先駆けでもある。
トイレでトイレットペーパーを自由に使えるのは,モノが豊かになったのと逆行して精神が貧素になった現れではないか。まさに矛盾である。