jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「進入」か「侵入」か,台湾をどう扱うか微妙な問題--「横切った」「通過した」で十分表現できるのでは。

2021/10/4から,中国機が台湾の防空識別圏を4日続けて通過したとの報道がされている。

 この報道を筆者が最初に聞いたのがNHKニュースで,そこでは「進入」という言葉が使われていた。筆者としては違和感を覚えた。「侵入」を使うのではないか,と思ったのである。

 その後ネット検索してみると,「進入」を使っているのはNHK朝日新聞,読売新聞,毎日新聞産経新聞,CNN,「侵入」を使っているのは日経新聞時事通信NewsWeekBloombergなどがあった。日経新聞を除く日本の大手メディアが「進入」を使っていると見られる。

 国土交通省の航空機関連の資料を見てみると,「進入」は主に滑走路へ入るルートを示すか,「レーダー進入管制」のようにある空域に入ることに使われている。

 空域に物理的に「入る」ことを進入と呼んでいるようで,それが通常ルートであっても,違法な立ち入りであっても「進入」で間違いはないだろう。一方,「侵入」には何らかの違法性,犯罪性を念頭に置いているように思える。

 つまり,日本の多くのメディアは,「台湾の防空識別圏」に「中国機」が入ることに違法性はない,あるいはその事実を客観的に報道した,という立場を取っているのだと思える。

 そもそも,日本は台湾を国として承認していない。「地域」という呼び方である。台湾の防空識別圏について,「権利のある空域」として認めるのか,国ではないので権利がないと見るのか,そのあたりがあいまいである。

 日本の主要メディアは,中国軍機が台湾の空域に入ったことについて,中国が違法行為をしたと主張できないために「進入」と表記しているのだと思われるが,これは中国からの批判をかわすための逃げ表現だと言える。なんだか情けないなと思う。

 国であれば,「領空」という明解な空域を定義できるが,国として承認されていない台湾の空域は「領空」とはみなされないようだ。したがってこの空域に他国機が入っても,領空侵犯にはならないとの考え方により,違法性はないという立場で「進入」が使われたのだと思われる。おそらく,台湾の空域でなければ,「侵入」「領空侵犯」などが使われたケースだろう。

 最初にニュースを聞いたのがNHKなので,「しんにゅう」という読みを耳で聞いて,なんだか意図的に「侵入」を「進入」に置き換えているように受け取れる。台湾の新聞も「進入」という漢字を使っているようで,これにならったとしても「逃げ」と言われれば逃げである。安易な言葉の使用例だと言えるのではないだろうか。

 筆者なら,誤解を招く可能性のある「進入」を使うより,「空域を横切った」「空域を通過した」と表現した方が事実を伝えやすいと思う。

 メディア屋としては,「感染」と「観戦」を同じ記事の中で使うのが一番しんどい。同じ読みなのに,悪いことと良いことを表現しなければならないからだ。どちらも同義語があまりなく,読み替えがしにくい。「感染」は感染拡大,感染防止,など,熟語も多いので,「スポーツ観戦」を「スポーツを観る」などとできるだけ言い換えるようにしたいと思う。