jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

歩きスマホはなくならない--ネコにマタタビ

2021/11/1,全国の鉄道会社が協賛で「やめましょう、歩きスマホ。」キャンペーンが行われるそうだ。統一ポスターも作られた。またマイクで大声で呼びかけるのだろうか,具体的に歩きスマホしている人を制止できるのか,その効果は限定的だと考える。

 ポケットサイズの携帯電話が普及し始めたころは,電話で使うことが主で,これにメールのやり取りが加わって,筆者にとっても欠かせないアイテムになった。しかし,ガラケー時代は,ゲームもほとんどなく,かつ通信料金も恐ろしく高かった。常に携帯を使っている状態など,考えられなかった。

 いまやスマートホンは,電話ではなく,ほぼゲーム機かSNSによる情報発信マシンか,コミック・リーダーである。電話なら,電車から降りるまで使えないし,用事も長くて3分で済む。メールも,受信を確認して,必要な返信をするだけなら,トータルでも10分で済むだろう。しかし,ゲームは始めたら終わりがなく,電車に乗っている間も,電車を降りても,さらに道を歩いても延々と続く。またSNSの情報発信も,常に相手と双方向で情報がつながるため,切れ目がない。コミックも同じである。これが,歩きスマホになる最大の理由だと思うのである。新しいオモチャを与えられた人類は,スマホに魂を売り渡して快感を得るようになった。「ネコにマタタビ」というわけである。若い人ばかりでなく,いい歳をしたビジネスマンですら,このマタタビでイチコロになってしまった。

 では,今の特に若い人にとって,ゲームやSNSをやめなさい,と言ってもおそらく聞かないだろう。いや,実際に聞こえないのである。マイクで呼びかけても,ほとんどの人がBluetoothイヤホンをガッチリと耳に押し込んで,ゲームに集中しているので,周りの音も聞こえない。その分,どんどんとマイクの音量は上がり,結局「駅のアナウンスがうるさい」という状況がさらに加速するだけになる。

 では,呼び止めて制止させられるかといえば,法律もないので,実力行使はできない。まして,マタタビを与えられた状態でこれを制止しようものなら,反発を買うのは目に見えている。「駅員への暴力行為は犯罪」として,酒を飲んでの暴力行為には警告が出されているが,歩きスマホはシラフ状態でマタタビで神経が麻痺した状態なので,理屈で反撃されることが多い。厄介な相手になってしまうだろう。

 歩きスマホそのものが悪いわけではない。実際,GPS機能を使って行き先を訪ねるのに,画面を見ながら進むことはあり得る。さすがにずっと画面を見続けることはないが,これも歩きスマホだと言われてしまうと,この文明の利器が活かせなくなる。歩きスマホしながらでも,ときどきは周囲に気を配っている人も多い。歩きスマホで100%事故が起きるわけではない。

 実際に歩きスマホをしている人は,普通の人である。道で無謀運転して事故を引き起こしそうな確信犯的な人はほとんどいない。したがって,実際に歩きスマホで人とぶつかった現行犯で説得する以外に,効果は少ないと思うのである。といって,係員が終始,人の流れを監視し続けることはできない。

 ここは,画像解析+AI分析で,危険な接近・接触状況を把握し,即座に人物を特定して拘束する,といった技術が必要になると思う。歩きスマホをしていても,周囲に注意をしている人は画像解析で判断ができる。ずっと画面を見続けていて姿勢が変わらない人や,その進路上にある人を検出してレッド・アラートを出し,衝突やいざこざの場面に速やかに急行できるような,仕組みが必要だと考える。

 正直,スマートホンがここまで便利になるとは思ってもみなかった。筆者にとってもいまや超小型パソコンと同等の位置づけになっている。パソコンを手放せないのと同様,スマホももう手放せない。

 ただし,この小さな画面を見ながら,しかもその同じ画面上で操作する,というインタフェースは感心しない。当面は実社会と映像を重ねて映すAR(拡張現実)ディスプレイと,音声認識入力,あるいはエアタッチタイピングキーボードなどを組み合わせる方法が,次のインタフェースだと考えている。さらにその後は,自分の目の視界に情報が表示されたり,頭で考えただけで入力ができるといった,人体組み込みインタフェースの時代も来ることが予想される。歩きスマホはそのつなぎにすぎないと思っているのである。