筆者は，信号待ちをする際，パーキングブレーキを使う。昔は「ハンドブレーキ」あるいは「サイドブレーキ」と呼んでいて，実際に「運転席のサイド（運転席と助手席の間）あるいはハンドルのサイドにあるレバーを『手で引っぱって』後輪に機械的なブレーキをかける」仕組みだった。
その後，手で引っ張る方法ではなく，足で踏み込むタイプが登場した。オートマチック車がほとんどとなる中で，マニュアル車のクラッチのあった左足を置く位置にパーキング用のペダルを設置した。さらに新しくなると，パーキングブレーキは「ボタン」を押すだけの電磁ブレーキになっている。このタイプのパーキングブレーキは，筆者はほとんど使ったことがなく，レンタカーや車検時の代車のときには緊張している。
ハンドブレーキの時代は，坂道発進時にハンドブレーキをうまく使っていた。坂道でハンドブレーキで止まっている状態で，ブレーキからアクセルに右足を移動させてアクセルを踏み，エンジンの回転数を上げ，左足でクラッチをゆっくりと離しながらハンドブレーキをゆっくりと外し，車体が後ろに下がらないようにしてクラッチを完全につないでアクセルを踏みこんで前進する，という「クラッチ合わせ」という動作をしていた。
オートマチック車になってから，坂道発進でクラッチ合わせは必要なくなった。ハンドブレーキを使わなくても，普通にブレーキから足を上げても車体が後ろに下がることはなくなった。オートマのクラッチが自動的にクラッチ合わせとアクセルへの連携を取ってくれるからである。
ということで，おそらく現在の多くのドライバーが，踏切待ちや信号待ちの際にハンドブレーキを使うことはなく，普通にブレーキを踏み続けている。信号待ちの際，ブレーキランプがずっと点きっぱなしになっている理由である。
筆者は，ハンドブレーキを使うことで信号待ちをするときに脚をリラックスさせている。何しろ，運転中は右脚がほぼ常にアクセルを軽く踏んでいるが，ブレーキをかける時も右脚を強く使うため，せめて信号待ちの間ぐらいは脚を楽にさせたいと思うからである。
一方，ハンドブレーキを使わずに，信号待ち時に右脚でブレーキを踏み続けていると，結局は運転中も停車中もずっと右脚を使い続けることになる。しかも停車中のブレーキもしっかり踏み込んでいないと，オートマ車ではクルマが勝手に前に動くクリーピングを起こす。右脚がどんどん疲れてくる。
そこで，信号が青になり，ブレーキからアクセルに脚を移動させて踏み込むが，ブレーキをずっと踏み込み続けていた右脚は，疲労が溜まっている。次の瞬間，渡り切れていない人に気づいてブレーキをかけようとするが，疲れた脚は感覚が鈍っている。自分ではブレーキの位置に踏み変えたつもりだが，アクセルから離れていない間に踏み込んでしまって，アクセルを踏み込んでしまう。慌ててまたブレーキを踏み直そうとしても，まったく同じ状況が続き，アクセルをさらに深く踏み込んでしまって，暴走することになるのである。
「アクセルとブレーキの踏み間違い」というのは，詭弁，あるいは虚偽だと思っていたが，本当にブレーキを「踏んだつもり」になっていたケースもあると思う。
そこで提案である。「信号待ち時，ブレーキ踏み続けをやめよう」。パーキングブレーキを活用しよう。また，ブレーキを踏み続けて停車している場合，5秒を過ぎたら自動的にパーキングブレーキになるように制御してはどうだろうか。どうせ，現在のほとんどのクルマが，アイドリングストップ車である。信号停止したらすぐにエンジンが止まる。その後，パーキングブレーキも自動的にかかるようにしてはどうだろうか。
そうすると，ブレーキを踏み続けなくてもよく，信号が青になったときにアクセルを踏めばスタートできる。ブレーキペダルを踏み続けないため，ブレーキランプも消える。後続車のドライバーがブレーキランプの明るい光にさらされ続けることがなくなる。脚の疲れもなくなり，踏み違えの確率も下がる。
ブレーキを踏むと，ブレーキオイルに圧力が加わり，これがブレーキパッドをブレーキディスクに押し付けてタイヤが固定される。ブレーキを踏み続けると，ブレーキオイルの圧力がかかり続けるため，オイル漏れのリスクが高まる。ブレーキパッドもディスクに押し付け続けられるため，摩耗が進む。一方，ハンドブレーキを使うと，ブレーキパッドをワイヤの張力で機械的に固定するため，ブレーキオイル系への負担が少ない。もともと停車に必要な力を加えられるため，ブレーキパッドへの負担が少なく，減りも少ない。
