jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

イヤホン・ヘッドホンを再考する--没入感,リアル世界との共存,耳への負担を考える

Bluetooth骨伝導イヤホンを使ってみた--万能ではないが耳への負担がないという安心感 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/1/10 という話題と,「メタバース」--クラウドに続いてまたまたネーミングで先を越されたと感じるIT - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/1/7 という話題をそれぞれ考えてきた。リアルな世界とバーチャルな世界,そしてその融合によって境界がなくなるのがメタバースだと定義してきた。

 映像は,情報量が多いためまだ少し時間がかかるが,音声はすでにメタバースの域に達しているように思えた。

 そもそもヘッドホンは,音楽など自分の好みの世界に没入するために,外界の音を遮断するところから始まった。耳を大きく覆う密閉型ヘッドホンが基本型である。音楽業界では標準だろう。

 しかし,街中でこの密閉型ヘッドホンを使うと,外界の音がまったく聞こえないため,衝突などの事故の原因になりかねない。外界の音と音楽などの音を両方ともバランス良く聞くためのヘッドホンが,開放型である。しかし,ヘッドホンと外界がつながっていることから,今度はヘッドホンからの音漏れが問題になる。外界の音が大きくなるほど,再生音量も大きくしがちであり,音漏れが大きくなる。

 一方で,耳の中で小型のスピーカーを鳴らすイヤホンも進化している。もともとはラジオ用のモノラルイヤホンだったが,ステレオ対応になり,音楽を視聴できるように低音から高音まで出せる工夫が加えられた。耳栓効果で,外界のノイズをシャットダウンしやすいようにシリコーンゴム製のイヤーパッドを使ったインナーイヤー型(カナル型)が現在の標準になっている。

 耳栓効果の高いインナーイヤー型では,耳の中に閉じ込めた空気を直接振動させるため,鼓膜に振動が伝わりやすい。それでも外界のノイズに対応して音を大きくすることもあり,このため耳への負担が大きくなりがちという欠点があった。

 そこで登場したのが,ノイズキャンセル機能付きのインナーイヤー型イヤホンである。外界のノイズをマイクロフォンで検出し,小型スピーカーを振動させる際,このノイズの逆相の音を足し合わせることで,外界のノイズ分をキャンセルする。実際に使用してみると,いわゆるホワイトノイズと言われる環境ノイズまで消してしまうので,無響室に入ったような違和感を覚えるほどである。このノイキャンの方式もいろいろあるようである。車両の走行音のようなノイズはなくすが人の会話は聞こえるといったアレンジもあるようだ。

 しかし,ノイズキャンセルは電子回路上でデジタル的に音を合成しており,フィルターを通した音ということで,正しい音ではない可能性がある。また,デジタル処理をするためにメモリー(キャッシュ)に情報を格納する分,入力と出力の間に遅延が生じる。人の耳は多少の遅延には寛容なようであまり気にならないようになっている。

 Bluetoothで信号を飛ばし,ケーブルのないワイヤレスのイヤホン・ヘッドホンが,最近のブームである。もともと,Bluetooth規格は信号容量が少なく,マウスやキーボードなどの低速機器の接続用に考えられており,音声通信には適さないと言われていた。規格をアップし,通信速度や通信容量を拡大することで,イヤホン用にも多く使われるようになった。当初は,音声の遅延もあったが,現在はほとんど遅れはなくなっている。

 Bluetoothイヤホンは,インナーイヤー型が多くノイズキャンセル機能を持ったものも増えている。ケーブルがないため,服などとの擦れノイズがないのが特徴で,運動時の使用にも適しているが,耳の穴と耳たぶだけで支える構造のため,落下の危険がまったくないわけではない。イヤーパッドなしで耳たぶだけで支えるタイプは,密閉性がやや低く,開放型に近い使いごこちである。この辺りは好みによるだろう。

 そこに入り込んできたのが,骨伝導型イヤホンである。もともとは医療用に補聴器として開発されており,人の声が聞き取れればよかった。骨伝導型で音楽を聞こうとすると,高音や低音が十分に再生できなかった。近年,振動ユニットや音の波形のチューニングによって,十分音楽を楽しめる製品が出てくるようになった。

 骨伝導型イヤホンは,基本的に耳の穴が開放状態で外界の音をリアルで聞きながら,耳骨の近くの頭蓋骨に振動を伝えることで音が聞こえるようにするのが原理である。鼓膜を振動させないため,耳への負担が少ないと言われている。外界の音を減らすには,耳栓をすればいい。ノイズキャンセルほど完璧にはノイズを遮断できないが,適切に減らすこともできる。Bluetooth接続型が最近は標準になっている。耳の外の皮膚上で支えるため,左右のスピーカーをバネ性のあるツルでつないで頭を挟む形が標準である。左右完全独立型で,耳たぶに挟むタイプもある。

 さて,音楽などへの没入感では密閉型ヘッドホンかBluetoothインナーイヤー・ノイキャン・イヤホンが適していると思われる。一方,街中でBGMを聞きながらでも安全に楽しむには,Bluetooth骨伝導イヤホンも結構いい線を行っている。運動時には,左右独立のBluetoothインナーイヤー型イヤホンは落下の可能性があるが,Bluetooth骨伝導イヤホンは落下しにくいというメリットもある。

 一流ブランドがまだ骨伝導イヤホンを出していないので,音質には多少不安がある方も多いだろうが,逆にクラウドファンディングで意欲的に生産しているグループもいくつもある。Youtubeでも評価動画が結構アップされている。3000円ぐらいの製品もあるので,まず試してみるといいかもしれない。

 ちなみに,ヘッドホンは販売店の店頭で視聴することはできるが,イヤホンは衛生上の問題があるため,店頭では視聴できないことが多い。かつて,日本の大手家電メーカーのやや高額な製品をブランドを信じて購入したが,音質が非常に悪かったことがある。販売店に持ち込み,クレームをつけたのだが,聞き入れてもらえなかった。そのときは,もう1つ別のイヤホンを購入した。その場で開封して両方で音を再生し,明らかに違う,と言ったのだが,店員には通じなかった。買い替えたイヤホンはその後,長い間,筆者の標準イヤホンとして使えた(ある日,片耳側のケーブルが切れてしまった)。いまや,100円ショップでも多くの種類のイヤホンが販売されているが,さすがにまともな製品には出会っていない。個人の耳の特性もあるようで,なかなか選択は難しい。とはいえ,落下や紛失の恐れのある完全独立ワイヤレスインナーイヤホンに相当額の投資するほど,イヤホンが絶対に必要というわけではないので,筆者はとりあえずお試しは5000円を上限,これはというもので1万円前後を上限としている。骨伝導イヤホンもこの価格帯の製品がいくつかあり,Youtubeや販売サイトのユーザー評価などを見ながら判断するといいだろう。

 家事をしながら,スマホ画面で再生しながらBGM的な使い方をするなら,骨伝導イヤホンが結構オススメである。