最近の若者が出演するドラマでも,男性が女性に向かって自分のことを「オレ」と呼称しているのが,意外に気になった。
セクハラ,パワハラが横行する中で,ハラスメントをやめる動きが強いと思うのだが,男性の自分呼称の「オレ」は,自分が男性であることを相手に対して強くアピールしていると聞こえる。これはパワーハラスメントに当たる場合もあるのではないか。
家族の中でも,夫が自分のことを「オレ」と呼称する。夫が妻のことを呼ぶのに「オマエ」と言う。これも,明らかに上下関係を意識している。
筆者は,妻のことは基本的に名前で呼ぶ。子供の前では「お母さん」と呼ぶが,二人のときは名前で呼ぶ。これが当たり前だと思っている。昔のドラマなら,妻のことを「オイ!」と声を掛けることがよくあった。主人とか旦那とか,そういう位置づけに自分を置いているために,妻を見下した言い方である。まさか今どき,そんな言い方を若い人が言わないと思ったので,「オレ」「オマエ」も非常に強く聞こえる。
多くのドラマが,コミックが原著である。コミック本の中では,ハラスメントがテーマになることも多い。ストーリー展開にドラマ性を持たせるために,あえてきつい表現をしていることも多い。これをリアルでドラマ化する場合,その感覚を引き継いでいるのだがいかがなものだろうか。
そもそも,漫画やコミックの表現は,昔からどぎつい。テレビや映画にはそれなりの自己規制がかけられて来たが,コミックや週刊誌などは,作家や編集者の良識の範囲でしか規制されてこなかった。販売経路で区画するなどの常識的な判断も行われていた。しかし,ネットワーク時代に,もはやどんな歯止めも効かなくなってきている。
テレビドラマの原作がコミック,という設定があまりにも増えてきているように思う。テレビ作家はいったい大丈夫なのか,と言いたいところである。
コミックにおける女性の描き方も,結局はエロティシズムに走っており,リアルドラマでこれと同様な設定となると,やはりおかしな表現になるように思える。
やはり,文字やセリフを仕事にする人は,もっと言葉使いに気をつけた方がいいと思う。ここのところ,国語辞典の改定版の編集者がテレビによく登場するが,正直,流行り言葉は国語辞典には要らない。「流行語辞典2021」で十分である。一緒にしないでもいいのではないだろうか。