KDDIの通信回線の故障で,2022/7/2から7/5にかけて60時間も通信障害が起きた。7/5の朝現在で故障は復帰し,回線の不具合の完全解消が7/5夕方の予定という。
ITに限らず,何にでも故障はつきものである。相手が自然災害の場合は過失はないから補償を求めるわけにもいかず,被害を復活されるために災害保険があり,保険料を自己負担している。
一方,列車の遅延には,自然災害による不可抗力なものと,人身事故など人的なものがある。これによって仕事の遅れなどの直接の被害を被る場合も多いが,通常,このことで被害者が補償を求めることはない。可能な範囲で複数の利害を異にする電鉄会社間で振替輸送が行われ,時間は失うものの金銭的な被害はないからである。
ところが通信回線では,「他社回線への振替」ができない。そんなことは当たり前だと思っていても,実際に今回のような事故が起きると,対応の方法が分からなくなる。
似たような事故は,例えば高速道路での事故による渋滞にも当てはまる。1ヵ所で事故が起きれば,数十kmにわたって渋滞が発生する。そこから逃げることができない。大雪とドローン(追記あり) - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/12/18 で書いた上越自動車道での大雪渋滞は30時間も移動ができなかった。真冬のことでもあり,命の危険性もあったはずだが,非常食の配給ぐらいでそれ以上の被害補償問題は,個別にはあったかもしれないが大々的には報じられていない。
また,停電による電力供給が止まる事故についても,原因が自然災害であれ,人災であれ,設備の不具合であれ,ユーザーはじっとガマンするだけである。停電後に補償金が支払われたなどというニュースはまったく聞かない。
ところが今回のauの回線事故では,回復に60時間もかかったとはいえ,運送会社やタクシー会社,そして一般の人までこぞって「補償」「弁償」と騒ぎ立てている。なぜなのだろうか。
デジタル社会で,ワンアンドオンリーの仕組みなら,ほかに代替手段がない場合は,やはりガマンするしかないのではないか。故障が直るまで待つしかないのではないか。
自分のパソコンが壊れた場合,データのバックアップを取っていなかったのはユーザーの責任だし,すぐに仕事を続けたければ至急にもう1台調達してセットするしかない。修理に出して,それが直って戻ってくるまでの数日~数週間,仕事をしないわけにはいかないのではないか。
携帯電話回線が切れたといっても,固定電話は使えるし,公衆電話も使える。Wi-Fiが使えればLINE電話など各種IT電話も使える。
メールも,キャリアメールだけで仕事をしている人は少ないだろう。仕事のメールは使えるし,フリーメールも複数持っているのが普通なので,一時的に利用することもできる。何が困ったのかが,よくわからないのである。
筆者の場合,携帯電話の使用は1日多くて2回程度で,それぞれ3分以内である。メールは受信も含めると100通以上はあるだろうが,移動時間は通勤時間に限られ,電話回線で受信することは少ない。仕事相手で携帯電話番号しか知らないという人は少ないし,最悪,所属している組織の固定電話で取り次いでもらえば済む。
とすると,今回の回線事故で被害を受けたのは,常に携帯電話の通話・通信で仕事をしている人,ということになるのだが,それは秒単位で取引をしている「投資家(デイトレーダー)」か,固定電話を持たない「オレオレ詐欺グループ」や風俗関係ぐらいしか思いつかないのである。
もっとも,新型コロナウイルス感染で自宅療養している人との連絡が携帯電話というケースもあったが,大都市でも数十人程度だったというから,固定電話での代替や直接訪問などでカバーできる範囲だったと考えられる。
ならば,「au加入者全員に被害補償」というのは,ありえないのではないだろうか。なんでも被害者意識で相手にたかっているように思えて仕方がない。
いかにも自己防衛せず他人のせいにして何もしない日本らしい面が,国民レベルでも明らかになった例だと思える。
電話がつながらなければ,普通なら少し時間を置いてかけ直し,それでも掛からなければ別の番号を探してみたり,メールで尋ねたりするだろうと考える。それでも緊急連絡手段が必要な仕事をしている人なら,複数キャリアの携帯を持ち歩くなどは,自己防衛として当たり前の行為だと思うのである。
今考えると,たとえばレンタル携帯電話会社が,docomo回線の電話を通常の半額で貸し出すなどもできたのではないかと思うし,docomoやSoftbankがやはり「1ヵ月無料で乗り換えキャンペーン」とかがあり得たのではないか。中古携帯ショップと組めば本体も数量を確保できただろうし,そのまま乗り換えの顧客をとらえられたのではないか。
つまり,電鉄会社における「事故遅延時の振替輸送」対応に相当する取り決めを,携帯キャリア会社はいずれもしていなかったということになる。極めて寡占市場であるために,双方の立場ばかり気にして,顧客のことを考えていない証拠でもある。
筆者は,電電公社時代を知っているので,民営化したNTTおよびNTT docomoは顧客のことを考えないとして却下。しかも当時の携帯電話は音声品質が最悪だったので,音声帯域の広いPHSのJ-Phoneでスタートした。その後も個人的にはWillcomに変わっても使い続けた。家族が携帯電話を持つタイミングで,KDDI,後のauを選択した。その後,全員の契約をいったんWillcomに変えたが利用できるサービスが増えず,再びauに戻した。ガラケーからスマホに変わる際,家族はiPhoneを選ぶのにSoftbankに移行。筆者はPHSサービスがいよいよ終了になる直前までPHSだった。正直,Appleも嫌いなので,Androidでdocomo互換の格安SIMであるDTI(dream.jp)を挿して使っていた。筆者の場合,通信速度は必要ないので,低速で安いところで使い続けた。現在は楽天Mobileだが,これは消費電力の少ないシャープのIGZO液晶パネルモデルを採用していたからである。実際は結局はバックライトの消費電力が大きく,効果は限定的だった。現在の楽天Mobileモデルは,唯一,マイナンバーカードに対応したモデルである。その後の5Gモデルがマイナンバーカードに対応していないので,買い替えるわけにいかず,大事に使っている。DTIのデータSIMも実は持ち続けており,現在はモバイルルーターに入れてある。Wi-FiネットワークのないところでPCを使いたい場合がたまにあるが,スマホのテザリング契約を追加するほどの頻度もなく,維持費が格安なのである。
地震で帰宅困難者になった場合を想定すると,モバイルバッテリーは持ち歩いている人が多いのではないか。しかし,結局は自宅やオフィスでACで充電するので,モバイルバッテリーの出番はほとんどない。数年前と違って,スマホ本体の電池も数日は持つし,仮に使いっぱなしでも1日は十分使える。それでも万一のときを想定して購入するのではないか。街中のバッテリーレンタルを利用する人もほとんどいないのではないか。
どうしても重要な待ち合わせ先との連絡なら,たとえば駅の呼び出し放送を使うこともできる。頭を使えば,代替方法はいくつも考えられる。日本人はここまでダメになったのかと,思った次第である。