jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

日本にSPはいない--「身を張って要人の命を守る」という精神が警察にはない。誰を信じればいいのか分からない時代に

安倍晋三・元首相の暗殺事件で,警察庁奈良県警察が警備の甘さについて「責任は誠に重い」という警察庁長官の会見の言葉に引っかかっている。

 そもそも,誰を要人と考えるのか,その要人の警護という仕事のスケジュールを誰が立てるのか,について,おそらく警察にシステマチックなマニュアルはないだろう。現職首相の警護は,業務の範囲なのだろうが,それ以外の「要人」は,依頼されたら配置する,程度の扱いなのではないか。

 「SP 警視庁警備部警護課第四係」というドラマがあった。警視庁に実際にこういう部署があるようで,SPは「セキュリティポリス」のことである。

 お手本になったのが,アメリカ合衆国シークレットサービスである。警察系の組織かと思っていたが,Wikipediaによると「財務省傘下に、貨幣の取締とともに伝統的に大統領警護の業務」を担っており,2001年のアメリカ同時多発テロ事件後に設置された国土安全保障省(DHS)に移ったという。警護担当のエージェントが3000人,その他職員を入れて6000人の組織だという。

 現在は,銃による狙撃に対応するため,守る対象である大統領などの要人にピッタリ寄り添い,事件が起こればまず要人に対して盾となり,要人に弾が当たらないように伏せさせ,その上を被さるように保護する。自分の身を呈して要人の命を守る,というスペシャリストである。

 安倍氏の警護では,不審者を探す目的で配備された。しかし,事件が起きても安倍氏の周りには警護がなく,伏せさせたり覆いかぶさったりする動きは全くなかった。犯人の特定と逮捕,という警察としての仕事はしても,要人の命を守るという仕事が入っていなかった。実際,犯人はすぐに逮捕されたが,安倍氏は命を奪われた。これは要人警護ではない。

 実際,その場になってみないと,自分の身を呈して要人の命を守るという行動が取れるかどうかは保証できない。動きはあっても,要人に被害が及ばないという保証はない。しかし,残念ながらもともとそのような業務内容にはなっていなかったようである。残念ながら,見殺しにされてしまったと言わざるを得ない。

 もともとドラマ以外で銃が使われることは,日本ではほとんどない。せいぜいナイフを振り回すだけで,飛び道具が使われることはほとんどないからである。その辺りの考え方の甘さが,警護という仕事に穴を作ってしまった。

 警察は公務員だから,義務をきちんと守る,という理想論は,すでにここ数年で全く崩れてしまっている。警察官の立場を利用した飲酒運転から痴漢,窃盗,殺人まで起きている。もはや,一部の警察官では効かなくなっている。全国どの県警でも,不祥事が起きている。残念ながら,警察に命を預けることは安全を手に入れることではなくなってしまった。

 正直,テレビドラマにおける警察内の不祥事や,悪徳弁護士,チャラチャラした恋愛物語入りの消防官ドラマ,カネで動く医者,そして学校の教員の不祥事なども,当初はドラマを面白く見せるための設定だったはずだが,いつの間にか現実の専門職の失態を反映してしまっている。官僚や税務署員が詐欺の首謀者になっていたり,もう世の中,だれを信じればいいのかわからなくなってしまっている。