jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「高気圧,低気圧,前線」では解説できない線状降水帯--カオス,揺らぎで表現する時代に。「気象予報士」資格の見直しを

「環状不安定パターン」という定義をしてみる--日本海から太平洋を丸で囲うと答えが出てくる - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/7/19 と書いた翌週に,日本各地で線状降水帯による大規模な河川氾濫が発生してしまった。山形県最上川の氾濫をはじめ,新潟,福井,秋田など,まさに日本中どこでも大雨になっておかしくない状況だった。

 日本全体を丸で囲むと見えてくると書いたが,その丸の下側に太平洋高気圧が居座り,丸の両側に南からの湿った暑い空気を送り込み,これが太平洋側からと日本海側から回り込んで環状不安定パターンの中で大雨を降らせた。

 天気解説では,線状降水帯を「停滞前線」で表現しているが,この解説ではもうムリがあると考える。

 そもそも,この環状領域の中では,気圧の高いところと低いところがランダムに発生しては消えることを繰り返している。そこに都度,前線を定義するのはムリがある。しかし,その揺らぎの中でいったん均衡が崩れると,いわばお盆にヒビが入って線状に地上に向けた湿った大気の流れが起き,これが線状降水帯になる。均衡が崩れると一種の安定状態になるため,長時間同じ状態が繰り返され,10時間20時間にも及ぶ長い大雨になるのである。

 ある程度流れが弱まると一気に流れが止まるが,全体の不安定状態は変わらず,次の均衡が破れる場所でまたヒビが入ることを繰り返す。今回の不安定状態は,台風4号から変わった熱帯低気圧が持っている湿った空気に,太平洋高気圧から環状不安定領域の両側からさらに湿った空気が供給され,大量の雨となったものと解説できる。

 気象予報士による解説を聞いていて,「雲の動きを逆回ししてみましょう」というのがあった。いや,予報士なんだから,戻して解説されても困る。戻ったところで「今後を予報」してもらわないと,意味がない。解説するのなら,「気象解説士」を名乗ればいい。

 気象予報士の試験は大変難しく,競争率も高いと聞いている。その試験に合格するために猛勉強し,晴れて資格を取得したのだろうが,そのときの固定的な予測パターンが頭の中にイメージされすぎて,柔軟な思考ができなくなっているのではないか。特に若い気象予報士の中に,その傾向が見られるように思う。アナウンサーと同様,テレビは見た目も大事にされる。かつては「お天気おねえさん」みたいな形でビジュアルで持ち上げられた時代もあった。ニュース報道の一部がAIに切り替わる時代となり,天気予報もAIでの解説の時代が早晩訪れるように感じる。

 河川の堤防や橋の基礎は,台風を想定した2~3時間の降雨に基づいており,10~20時間の降雨を想定していない。地震や海底火山,島の崩壊などに伴う津波も,おそらくいずれは映画「The WAVE」のような都市が沈む規模のものが襲来するだろう。

 「点滴石を穿つ」「雨垂れ石を穿つ」のたとえのとおり,水の力は繰り返されれば大きな加工力を持っている。ウォータージェット加工は,まさにこの水の力を利用したものである。

 降雨による水の流れは,すべて落差によって集まり,その位置エネルギーを運動エネルギーに変えて山を削り,河岸を削り,そして橋脚の基礎も削る。橋の崩壊は,単に上流から流れてきた大木がぶつかっただけで壊れるものではなく,それ以前に水の流れによって基礎が削られて支えきれなくなっていることが原因と考えられる。護岸も繰り返し流水にさらされれば,その裏側を支える土砂が流出し,一気に崩れる。舗装道路が突然陥没するのも,地下の水の流れによって土砂が流出したことによる。

 今回,山麓でのがけ崩れや土石流,川沿いでの堤防決壊以外に,河川や山が近くにない市街地でも家屋の浸水被害が出た地域がある。筆者宅近くでも,ここ10年ほどのゲリラ豪雨の際に道路に数十cmの水が一気にたまり,アンダーパスが通れなくなったりすることがあった。ごく普通の起伏しかない幹線道路でおそらく2~3mしか高くない位置から,ゲリラ豪雨による水が舗装道路上を一気に流れて筆者宅の近くの交差点で巨大な水たまりを作ってしまうのである。おそらく,10~20時間も線状降水帯に捕まれば降雨だけで浸水被害が生じることが予測される。なにしろ,近くにある巨大な調整池がゲリラ豪雨時に満水になって周囲に一時期溢れたことがあったからである。線状降水帯による降雨量にはおそらく耐えられないだろう。調整池の水門を開けるタイミングも重要で,非常に判断の難しい作業となるだろう。

 地球温暖化が進むと,温度の高い空気は大量の水分を含んで移動することになる。かつては巨大台風への危機が叫ばれてきたが,むしろこの環状不安定パターンが島国である日本の最大の脅威になるのかもしれない。