jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「首相のテレワークスタイルに違和感」と言っているメディア側の言い分に,筆者は違和感を覚える件

岸田文雄首相が新型コロナウイルスに感染し,総理官邸からリモートで業務を続けている。首相の姿を映したモニターを首相公邸の記者会見場や会議場に設置し,記者や委員,大臣などは首相公邸に来邸して,モニター越しに岸田首相と話をする。

 このスタイルに,複数のメディアが違和感を唱えているという。首相がオンラインなら,記者や委員もオンラインで参加すればいいのではないか,という指摘である。

 筆者は,このスタイルはまったく普通だと考える。というのも,「リアルな集まりに参加できない人がモニターで参加する」というスタイルだからである。実際,企業でもリアルな会議の場にコメンテーターがモニターで参加する,というのは当たり前の形である。テレビのワイドショーなど,MCも素人ゲストもスタジオにリアルに集まっている中に,専門家がモニター越しに参加してコメントするというスタイルは定着している。

 正式な会見場所が首相公邸というのは通常どおりであり,そこに首相がリアルで現れて会見するのか,バーチャルでモニター越しに会見するのか,だけなので,何の違和感もない。

 ところがどうも,「首相がバーチャルで会見するのなら,会見場所をバーチャル(zoomなど)にして,メディア側の記者も各社のネットワークから参加すればいいのでは」という違和感を唱えているらしい。

 筆者には,このメディア側の考えの方が変だと思う。

 首相の会見をインターネットに接続した回線上のバーチャルな空間で実施したとすれば,あらゆるセキュリティーを見直さなければならない。情報漏えいの可能性,ハッキングの可能性,そして成りすましによる回線への侵入などである。記者が会見場に行くのが面倒くさいからオンラインにしろ,とワガママを言っているようにしか聞こえない。

 「他の官僚も首相公邸に続々とやってきて,モニター越しに首相と会談」することも,ことさら違和感があるように報道しているが,これも筆者には当たり前のように見える。これまででも,急ぎの連絡であれば双方の電話で行われていただろうが,膝詰めで打ち合わせをする場合,ほかの場所を使うことはなく,秘密を保持できる首相公邸で相談が行われるのが当たり前である。

 今でこそ,モニター越しで各国の首相・大統領が,お互いの顔を見ながら対話をする環境は整っているが,それ以前でもホットラインでの電話会談は行われていた。国同士のトップのモニター会談のための回線やシステムは,たぶん特別なVPN(仮想プライベートネットワーク)でつながれ,画面共有の仕組みもzoomやteamsのような一般的なソフトウエアではないと考える。最高度のセキュリティが求められるからである。

 それよりも,首相の記者会見が大型モニターに映る首相の姿に対して,記者陣の配置の方が変である。モニター前は空間になっていて,モニター正面には誰も記者がおらず,テレビ局のカメラが手前にあるようである。モニターを挟んで左右にロープが置かれ,そのロープに沿って左右それぞれ10人ずつぐらいの記者が立って並び,モニターを斜めから見ながら質問をかけている。いわば,通常の「ぶら下がり会見」のような雰囲気を出そうとしている。このスタイルの方を変に感じないのだろうか。

 ぶら下がり会見なら,首相の近くにいる記者がまず質問し,遠くの記者はその後ろから腕を伸ばして録音用のICレコーダーを突き出して録音するというスタイルが一般的である。しかし,モニターによる会見なら,首相に物理的に詰め寄ることもできないわけだから,前にいることは何のメリットもない。首相にICレコーダーを突きつけてプレッシャーを加えることもできない(これがメディア側がぶら下がり会見を要求する1つのやり方である)。そもそも,このコロナ禍の中で,ぶら下がり会見のように密集した状態での会話が許されていいのだろうか。首相のコロナ感染の一因になっている可能性もある。記者同士でも感染のリスクは否定できない。

 普通の登壇方式の会見場のように,記者は席に座り,壇上にモニターを設置すれば,多くの記者がモニターを正面に近いところから見ることができるし,テレビカメラの邪魔をすることもない。

 現在のモニター越しの会見スタイルを作ったのが首相側だとすると,メディア側は自分たちの立ち位置を変に拘束しているスタイルに意見をして,通常の会見場での会見を要求すべきではないだろうか。テレビ画面に映る記者陣が,他の記者の肩越しにモニターを必死に覗き見しようとする姿が映っていることにこそ違和感を覚えるべきだと思うのである。