わずか5分~10分,目を離した間に子供がいなくなった,という事件が立て続けに起こっている。子供をすべて無事に成人まで育て上げた筆者にとっては,子供が小さいころを思い起こしてみるのだが,正直,親バカと言われようが過保護と言われようが,子供の手を必ず握っていたと思うし,手から離れたときもすぐに呼び止めていたと思う。歩道を歩くときでも,向かってくる人とは反対側を歩かせ,後ろからくる自転車にも注意していた。
家の前は行き止まりの路地なので,クルマや人の通行はほとんどない。近所の子供と縄跳びをしているようなときでも,できるだけ一緒にいたし,プライバシー侵害の危険を冒して監視カメラを家の外に設置して路地の映像を小型テレビに映して様子を見ていた。勝手に公園に行かせることもなかった。
正直,最近の親子を見ているとヒヤヒヤする。親はスマホを覗き込んで歩いているし,子供は勝手に走り回る。自転車が近づこうがクルマが近づこうが子供に注意を促したり手を握り直したりする姿をほとんど見かけない。
これは,年寄りやペットも同様である。堂々と道の真ん中を歩いて道を譲らない。振り向こうともしないので,気づいているのかどうかもわからない。イヌの散歩をさせていても,立ち止まることも,イヌを自分側に引き寄せることもしない。
行方不明になった子供の事件の原因が,親が目を離した隙きに,ということで,これはどれだけ注意しても絶対に見失わないことはないことは理解できる。しかし,自分の子供はしっかりしているから,という思い込みがあったのではないか,という気もする。注意に注意を重ねても事故を防げないこともあるが,後悔しても始まらない。
筆者の場合,小学生になったときにPHSケータイを持たせた。防犯ベル機能もあり,位置情報も取得できた。いずれの機能も使うことはなかったが,安心をお金で買えるならそういう仕掛けも使おうと考えた。
その後,現在は子供はそれぞれのスマホを持っており,スマホの紛失に関してはそれぞれが管理しているし,親が子供のスマホの位置を特定する方法は使用していない。そこの自主性は尊重しているつもりである。
紛失防止デバイスは,出始めのころから関心はあった。個人的にも,ケータイやカギをどこに置いたかわからなくなることが結構あるからである。しかし当初のデバイスはBluetoothで1対1に接続する機能だけであり,家の中でどこに置き忘れたかぐらいしか検出できなかったので,勤め先に置き忘れた,などということを検出できないことから,導入は見合わせていた。GPS機能を搭載,などと歌われていたが,日本では機能しなかったようである。
AppleのAirTagが登場した。通信機能はBluetoorhだが,複数のiPhoneのネットワークを通じて,位置を特定できる機能を持つ。iPhoneのシェアが6割を超える日本では結構使えるデバイスと思われる。筆者はAndroidなので使えないのだが,自転車の盗難防止などに使えばいいのではないかと家族には提案していた。
ペットにも取り付ける提案はある。筆者宅のイヌたちももう老齢なので,ボケて徘徊するようにならないとも限らない。もちろん筆者自身もそのうち必要になるかもしれない。
子供の人権問題もないとは言えないが,AirTagを標準的に子供に持たせるようにしてはどうだろうか。カギを持たせているのならキーホルダーに取り付ける,またお守りのように首からいつも下げさせるなどである。
幼稚園で送迎バスの中に子供を置き忘れる事故も続いているが,これも幼稚園の名札の中にAirTagを組み込んで管理することを園と親の間で申し合わせて使ってもいいのではないか。複数の子供の状況をモニターして,たとえば園内で登録数より少なくなれば警報を出すようなシステムを組むこともできるのではないか。
関西には「命札」という仕組みがあるそうだ。個人の名前を書いたカマボコ板を,水泳などの際に預け,帰るときに持ち帰る,といった運用をすることで,残った子供がいないことを確認できるという非常にアナログな方法である。
AirTagでももちろんいいが,このカマボコ板による命札でも,チェックリストでも,何でもいいから,ルールを決めた方がいいのではないか。
お金をかければいい,というものではないが,行方不明になったときにいち早く探し出すためには,AirTagは十分使える現実的なしくみだと思う。