筆者はデザイナーでもDTPオペレーターでもないが、Adobeの業務用ソフトを使った仕事をしている。製品を作るためのプレゼンのプロトタイピングに、どうしてもプロと同等のクオリティが必要なためである。Office系のお絵描きレベルでは正確さが出ないためである。
Adobe系ソフトを難点は、できたファイルサイズが膨大になることである。ページ1枚分なのに300MBなどは当たり前になる。これをときには1日に10枚も用意する必要がある。
オフィスでも自宅でも、ほぼ同じ環境で仕事をしている。オフィスで仕上がりきれないデータを持ち帰って続きをすることは、クリエーターとしては普通だと考えている。
このために、オフィスと自宅のファイル構成を同じにしている。そのファイル群が1個のフォルダに入っているのだが、この容量が年々増えている。
5年前は32GBのUSBメモリーで事足りた。ところが、ほぼ毎年のように必要な容量が倍増する。現在使っているのが256GBのUSBメモリーである。
このUSBメモリーによるやり取りを可能にしているのは、フォルダ間の差分のみをコピーしてくれる実に優秀なソフトを使わせてもらっている。差分検出に1分、差分容量がだいたい3GBぐらいが普通で、このコピーに3分ぐらいで終わる。
これができる背景には、ほぼ毎年のようにUSBメモリーの価格がほぼ半額になっていることである。現在の256GBメモリーも5000円程度で入手できる。5年前は32GBが同等価格で、256GBなら5万円という値付けでとても買う気にはならなかった。
そこに1ヵ月前のブラックフライデーである。たまたまクーポンもあったので、NAS対応のハードディスクを購入したのである。
家族5人で割っても1人1TB ほどを割り当てられる。スマホの容量が256GB時代なのだが、1年分ぐらいは使えるのではないかという計算である。
家族に提供したのはWeb共有である。主に自宅でバックアップに使ってもらう目的である。この設定はほぼ一発でできた。最初は、個人のフォルダが丸見えだったが、パスワードの設定で解決できた。
ところで、筆者がしたかったのはFTPサーバーとして使うことである。先に紹介した差分コピーソフトは,通常のボリューム間以外に,google driveとの間で差分が取れるほか,FTPサーバーとの間でも差分が取れる機能がある。
google driveは無料では15GB,「100GB」プランで2,500円(年額),「200GB」プランが3,800円(年額)、「2TB」プランが13,000円(年額)となっている。どうもサブスクが何でも嫌いで,OfficeもAdobeも買い取り版しか使っていないので,クラウドドライブも固定にしたいと思ったのである。
筆者にとって,このFTPの設定は生まれて初めて。NAS,ルーターのIPアドレス,開放するポートなどを設定すればいいはずなのだが,どうやっても接続ができない。ローカルネットワークの中ではNASのIPアドレスを使って接続できるのだが,インターネットから接続しようとするとどうしても接続できない。
取り扱い説明書を読み,インターネットで複数のサイトを検索して,設定を確認したがつながらない。ルーターのプロバイダーのホームページの説明に従っても接続できない。
原理的には「ルーターの固有のIPアドレスにアクセスし,その信号を開放したポートを通じて,NASのローカルIPアドレスにつなぐ」といいはずなのだが,どこに何の数字を入れればいいかがはっきりしなかった。「当然,外部接続IPアドレス」のところにルーターの固有IPアドレスを入力するものと思っていた。
ところが,プロバイダーが提供する10種類近くのルーターごとに,設定方法を解説したサイトがあった。そこには,「外部接続IPアドレスのところは空欄のままにする」と書いてあった。そこで,この指示に従って設定すると,やっとインターネット経由でのFTP接続に成功した。実に購入から3週間も経ってしまっていた。
これで,オフィスから自宅のNASと差分を確認して差分コピーすれば,USBメモリーを持ち歩くことによる情報漏えいリスクを減らすことができそうである。
問題は,差分をチェックするのに,USBメモリーに比べると3倍ほど時間がかかることである。現在のPCのUSBは規格が3.0となっており,20MB/sぐらいの転送速度は出る。しかし,ネットワーク経由だと,やり取りの時間差もあることから,転送速度は10MB/sぐらいになってしまうようである。
退社時刻の10分前ぐらいまでに差分検出と差分ファイルのコピーをする必要がありそうだ。また,退社時刻ギリギリまで使っていたファイルは,差分検出するのではなく,別のFTPソフトで該当するファイルのみを転送すればいいだろうということにしている。
スマホのファイルマネージャーソフトでも,FTP接続が使えるものがあり,スマホからもNASにアクセスが可能になった。無料のクラウドストレージを探すこともなくなりそうである。ファイルサーバーとしてPCを24時間稼働させておくよりも,はるかに節電型のファイルサーバーを持てたと思っている。とりあえず,「ヤッター!」という感じなのである。