猛暑続きで,野菜の出荷量が減り,価格が上昇している,というニュースを耳にする。需要に対して供給が少ないと、物の値段が上がるというのは一般的な経済原理なのだが、何となく納得が行かないので、素人的に考察してみた。
供給数に値段を掛けると売上になる。供給が少なくてその分の値段が上がれば、売上は変わらない。つまり、売る側(店)の売上高は変わらないことになる。客(消費者)は高い商品を買うことになり、さらに数が少ないために買えない人も出てくる。値段でも買えないかもしれないという不利益を消費者が受けることになる。
一方で店の売上はいつもと変わらない。仕入れ値も上がっているが、仕入れ値×供給数は変わらない。損はしない。
生産者も同様である。収穫できた個数は少なくなり,出荷できる個数は少なくなる。しかし,出荷価格も上がれば,売上はいつもと変わらなくなる。
つまり,収穫量の減少のしわ寄せは,すべて消費者に押し付けて,生産者も販売者も損をしないということになる。
これが一般の工業製品だったらどうだろうか。たとえば部品会社の火災で組み立て用の部品が入らなくなり,生産数が減ったクルマがあるとする。出荷数が減る一方で購買意欲は変わらないとすると,単に早い者勝ちになるだけで,その分を価格を上げるなどということはしない。購入者,消費者は入手までに時間がかかるかもしれないが,同じ価格で購入できる。販売台数の減ったディーラーは売上が減り,苦しくなる。出荷台数が減ったメーカーも売上が減る。消費者は時間というデメリットはあるものの,価格的に問題は発生しない。ディーラーとメーカーの営業成績が落ちるだけである。
どうして農水産物は,天候に左右されて価格が変動するのだろうか。天気は予測できないから,収量にもバラつきが出る。品質にもバラつきが出る。しかし,そこで勝手に価格を上げることが許されるのだろうか。売れる数が半分になれば,売上も半分になる,という普通の計算がなぜ通らないのだろうか。なぜ生産者には手厚い仕組みになっているのだろうか。
国による米の買い取り価格は決まっている。米はそういう意味では価格は変動しないはずだが,販売店との直取引になれば価格は自由に設定できる。米が価格制限があるから,果物や野菜などの商品の生産に力が入る。天候が悪ければ価格を上げて出荷する。これでは米の生産,備蓄がどんどん減るのを食い止められない。主食の自給率を上げ,第二の主食である小麦も自給率を上げなければ,近い将来の世情不安や気象異常に陥ったときに日本人が食べる食料を自給できなくなる。目先の利益を追うことばかりしているから,日本の農水産業は駄目になるのだと思う。