南海トラフ地震臨時情報が2024/8/8の宮崎日向沖地震の後に発令され,8/15に解除された。そもそも,南海トラフ地震が起きる可能性が,従来の0.1%から0.5%に上がったとして発令されたが,その後の大地震が起きていないことから,「解除」という発表になった。「大規模地震の可能性がなくなるわけではない。いつ発生してもおかしくない大地震に備えてほしい」と松村祥史・防災担当大臣が発言したというのだが,いかにも取って付けたようなコメントに聞こえる。
コロナ禍でも,2023年3月13日のマスク着用義務解除が恐ろしい--自主的テレワーク再開も視野に - jeyseni's diary (hatenablog.com) (2023/3/11)と「解除」という言葉が使われた。新型コロナウイルスによる感染の拡大を防ぐために,マスク着用は義務とされたが,この解除によって個人の自由意思で外すことができるようになった。
いずれの場合も,「発令」はON,「解除」はOFFであるように一般国民には受け取られる。つまり,制限を「解除」することは,制限をゼロにすることとイコールだと一般には捉えられるのである。
大地震の可能性がゼロにならない以上,国民は地震に対する対応を考えなければならない。つまり,情報が発令されようがされまいが,基本的に何も変わらないはずなのだが,「解除」と言った途端に何もしなくなるのが一般国民である。
筆者は,何らかの対応を求めている場合,「解除」ではなく「制限緩和」という言葉を使う方が適切だと考える。つまり制限を緩める,ということである。
緩和であれば,ここに「レベル」を加えることができる。「制限緩和レベル1」ならほぼ日常となるが,レベル4や5なら引き続き可能性が高いことを意識すべき,というメッセージになる。「解除」では完全にゼロである。
かつては「空襲警報」と「空襲警報解除」が日本人には馴染みがある。明らかに,爆撃機が通りすぎれば解除可能である。爆弾が落ちてくる可能性がゼロになるからである。しかし,地震も感染拡大も,ほぼまったく予測ができない相手だけに,「可能性がゼロ」という言葉を使うべきではないと思うのである。
逆に,「南海トラフ地震への警戒レベルを1から4に上げた」とか,「4から2に下げた」と言った方がわかりやすい。火山の噴火に対応したレベル表示と同じ考え方である。
この考え方で言えば,現在の「解除」レベルは,「警戒レベルを4から2に下げた」という段階ではないかと思うのである。すぐには大地震は発生しないが,万一(万に2)ぐらいの考え方で従来よりも早めに対策を考えておきましょう,というメッセージになるからである。
まあ,天気予報の「雨が降る確率が何%」と言っているのと同程度にいい加減であり,あとでなんとでも言い訳ができる,という意味で,地震の場合もレベル表示にすべきではないかと考える。ちなみに,首都直下地震は,警戒レベルが3ぐらいではないかと個人的には考えている。千葉,横浜,栃木,茨城と,それなりに周辺から地震が接近しているのを感じるからである。