2024年8月末に迷走をした台風10号が,9/2に温帯低気圧に変わり、ようやくほぼ普段のような気候になった。といっても、熱中症の危険のある蒸し暑い天気である。これを残暑といっていいのだろうか。
さて、筆者は台風になる前の低気圧の状態を「熱帯性低気圧」とずっと認識してきた。一方、台風が日本上空や周辺で衰えて低気圧になると「温帯低気圧」になると認識していた。なぜか、南洋で台風に発達する前の低気圧には「熱帯性」と性の字を付けて覚えているのである。
日本が温帯にあるので、日本周辺の低気圧は「温帯の低気圧」あるいはただの「低気圧」でいいが、南洋の熱帯、あるいは亜熱帯の地域で発生して温帯に移動してくるヤツは「熱帯性」と呼んでいいような気がする。ずっと熱帯にとどまっていれば「熱帯低気圧」でいいからである。
辞書には両者の併記も多いが、天気予報や気象庁のホームページは厳格に「熱帯低気圧」になっている。どこかに「熱帯低気圧に呼び方を統一した」といったお知らせもない。2019年に「弱い熱帯低気圧」という表現をやめたことは書かれている。弱いといっても風が弱いだけで,雨が弱いわけではなく,このために被害が出たという理由だそうだ。
延々と検索をしてみたが、見つからなかった。1つだけ、堀川まゆみさんのアルバムの中に「熱帯性低気圧」という曲があることを知った。
一方,英語では直訳したようなtropical low pressure systemという表現や,tropical storms,tropical depressionなどがある。アメリカではtropical cyclone,つまりサイクロンそのものを指すことが多いようである。いずれも,「熱帯」でも「熱帯性」でもどちらとも取れる形容詞である。熱帯という名詞ならthe tropicsである。
ということで,おそらくどこかで聞いた「熱帯性」の方が語呂がよく思って,思い込んでいるのだと思う。ただ,上で解釈してように,熱帯で生まれて温帯にやってきた,という意味で,普通の低気圧と区別して「熱帯性低気圧」と特別に呼んだ,という方がやはりすっきりするのである。まあ,台風が衰えた場合,「通常の低気圧」になったというより「温帯低気圧」になったと言った方がわかりやすく,これにあわせて「熱帯低気圧」という言い方が一般的になったのだろうと,ぐるっと回って納得するしかないかなという気がしている。