「髪は煩悩を表す」と,通勤の途中にふと思いついたのでメモする。
煩悩を払うために頭を剃ったのが,僧侶である。修行の妨げになるから,という理由だろうか。思い切って剃ってしまったとしても,普通はすぐにまた生えてくる。煩悩を断ち切ったとは言い難い。実際,さまざまな欲に惑わされて悪事を働く坊主も結構いる。檀家がどんどん減っている現在,寺を維持するためには,賽銭と托鉢によるお布施だけでは足りない。とりあえず,墓仕舞いする檀家からもかなりの高額を徴収する。
筆者の通った市立中学校は、男子は丸刈りだった。最初は嫌だったが、何しろ手入れが要らず、散髪時間も短く、料金も安かった。元々、女子にモテるキャラではないので、勉強と運動部の部活に集中できた。煩悩がなかった。
大人で丸刈りといえば、当時は反社だった。煩悩はなかったのかどうかは分からない。悩んでいる暇はなかったかもしれない。
今は、生徒の丸刈りは学校からのパワハラになるとして、消えた。唯一、高校野球の選手の多くが丸刈りだが、長髪OK の学校も増えつつある。
プロの野球選手を目指すとして、勉強もしっかりしなければならない年令である。整髪だ、調髪だと時間を掛けなくて済む丸刈りは、一度始めると便利だと思うが、女子とも付き合いたい時期だけに気になるのかもしれない。せっかくの丸刈りなのに煩悩の塊になってしまう。
一度、髪を気にし始めるとキリがなくなる。ヘアスタイルからアクセサリー、髪の色とどんどんエスカレートする。ついには原宿のカリスマ美容師に何万円も払うことになる。それでもまた、満足行かなくなるだろう。髪があることによる煩悩である。
逆に、髪が減って来たり、白髪になって来ると、煩悩が拡大する。男性の場合は、男性ホルモンが多くて元気であることをアピールするようになる。白髪の男性は年令以上にマウントを取ろうとする女性にとっては迷惑な話である。
日本人の標準が、黒髪ストレートである。基本的にこの線を外れると違和感を覚える。
なるべく普通の髪型で黒髪をキープできることが望ましいと思って踏ん張っている。髪は黒に染めている。白髪の実力者ではないからである。
まだ薄くもないのに、敢えて丸刈りにしている人の気が知れない。反社以外のイメージがないからである。社会人としては、投資をしてでも増毛がカツラの方が望ましいと思うのである。
近ごろの育毛剤は,かなり進んでいるのかもしれない。少し前までは,大手製薬メーカーの1種類が医薬品指定で効果がある,と宣伝されていたが,今は複数の製品が効果を競って市場投入している。かつての養毛剤として血行促進するだけではなく,毛根を活性化する育毛効果があるとしている。美容整形医院でも医療として取り組んでいたり,AGC専門のクリニックができたりしている。男性だけでなく,女性の髪の悩みにも応えるとしている。男性ホルモン,女性ホルモンの働きとの関係をベースに理論的なアプローチが進んでいるのだろうか。花粉症が国民病と言われるようになったが,薄毛も国民病になったかのように,若い人から蔓延しているようにも思える。
一方で,若者男性に流行りのツーブロックだが,筆者の目からは「お子ちゃま刈り」「タラちゃん刈り」「コボちゃん刈り」,そして「カリアゲくん」にしか見えないことを,いちおう書いておくことにする。襟元がさっぱりすることと,髪型でオシャレができることの双方のメリットがある,という理由もあるのだが,どう見ても変である。
どうも,ある時期から流行り始めた,頭の上や後ろで髪をゴムでまとめて束ねるスタイルに,スソの刈り上げがミックスされて,ツーブロックに進化したのかもしれない。そもそも,髪を束ねる理由が筆者には理解できない。きちんとまとめるには時間もかかるし,第一,髪を流れに逆らって引っ張るこtになり,ダメージになるような気がする。それとも,時代劇アニメの影響で,チョンマゲに憧れてしまっているのか。ちなみに,チョンマゲは戦いの際に被るカブトの下で汗をかいても蒸れないようにするために前髪を剃ったのだと,チコちゃんは言っていた。これも,髪があることによる煩悩をなくす意味では理にかなっていたと言えるのだが,ツーブロックは若者の煩悩を軽減しているのだろうか。
ちなみに筆者は,洗髪した後,ドライヤーである程度乾かし,ヘアリキッドを軽くつけて,クシで整えながらドライヤーで乾ききるやり方を長年続けている。ヘアリキッドである程度ボリュームを持たせながら,なるべく風通しも良くし,頭皮にも軽く刺激を与えるような整髪法である。ドライヤーの使用時間も2~3分と短い。それでいて,元の形を保ちやすい。手櫛でセットし直すだけで済む。ワックスほどガチガチに固める必要もないし,かつてのポマードのように固める必要もないと思っている。
これに適した毛量になるように散髪してもらうこともポイントである。同じ散髪師に,ビジネスマンカットの長さで少しカジュアルに振った感じに仕上げてもらっている。残念ながら,3分間ヘアカットショップでは,同じ髪型をリクエストしても気に入った仕上がりになることはまずなく,煩悩が生まれてしまう。
かつて通販で,掃除機で髪を吸い込みながら一定の長さでカットする,という商品が販売されていた。また,切り過ぎないようなアタッチメントを付けるバリカンタイプの商品も販売されている。おそらく慣れれば使えるとは思うのだが,社会人として表に出られるほどの腕前になれるかどうかは自信がない。リタイヤしたら使ってもいいかなと思うのだが,なかなかリタイアできない経済状況にある。
同じ原理を使って,プログラミングすれば,散髪ロボットができるのではないかと,ずっと以前から思っている。ちょうど昔のパーマ機械のように頭を覆うようにすれば,あとは勝手にそれぞれの部位をちょうどいい長さにカットしてくれるロボットである。あらかじめパターンはセットしておけるので,毎回同じ仕上がりになる。カット時間は1分で済む。手術ロボットに匹敵する精度が必要なので,開発は難しいかもしれないのだが。
うーむ,やはり髪は煩悩の始まり,と言えるようである。