世界初"屋内垂直型農園"、高さ9.1mのAI活用イチゴ栽培タワーがこちら 。アメリカ・バーモンド州の「プレンティ・リッチモンド農場」で,高さ9.1mの垂直型のイチゴ栽培の話題が紹介されていた。
筆者がイメージする農業工場は,平面的な栽培層を何層も積み重ねて高密度化を図り,同じ床面積で地面の数倍の収量が得られるもので,連続的に層内と階層を移動させることで年中収穫ができるような仕組みである。既存の廃工場や廃校などの建物を利用して,中に棚とベルトコンベア式の栽培層を作っていく。狭い日本でも導入しやすく,キット化して海外での展開も容易,というイメージである。
今回の垂直型栽培は,正直言ってそれほど魅力を感じるものではない。施設が大型になることや,搬送装置の設計が難しそうなこと,栽培照明の効率が悪そうなことなど,いくつか理由はある。デリケートなイチゴをどうやって収穫するのかも疑問が残る。
しかし,ここで紹介したのは,その発想の豊かさを示したかったからである。
海外で見られる新規プロジェクトは,なんでも発想の大胆さに驚かされる。他人がやっていないことをやってみようという意気込みが感じられるのである。
もちろんそこには,アイディアを出すベンチャー企業とそのベンチャーを資金面でサポートするベンチャーキャピタルがある。投資規模が桁違いに大きい。もともとエネルギー事業やモノづくり産業,そしてコンピューターやバイオ,エンタメなどの巨大産業で財産を築き,さらに資金を運用する経済システムがある。一方で大損をしてももう一方で大儲けをしてさらに規模を拡大してきた歴史がある。
広大な土地を持ち,農業をまるで狩猟生活のように南から北へと移動しながら収穫する。種まきには飛行機を使い,収穫のための巨大なコンバインを開発した。なんでも規模が大きいのを感じる。高さ9.1mのイチゴ育成タワーなど,日本では発想が出ないだろう。
戦後の経済成長期でさえ,日本の産業は自動車,家電などのモノづくりで物まねして「改良」を加え,品質管理で市場を獲得してきた。しかし,規模のさらなる拡大競争で海外勢に再び市場を奪われた。成功した企業の2代目が事業継承するだけで,新しい発想がなかったからだと推測される。
筆者は,水素エネルギー,陸上養殖,農業工場を日本再発展の切り札と何度も書いて来ているが,大型の水素プラントがすでに中国で稼働を始めているし,そのベースとなっている太陽電池パネルによる発電もすでに広大な土地で展開されている。自然破壊をしようが,その行動力はすさまじい。今回の農業タワーも日本人では発想できない。
2024/11/6のアメリカ大統領選挙では,トランプ氏が圧勝した。具体的な政策を大ボラではあっても次々に発する言葉に国民が刺激されたと想像される。ハリス氏がイメージ戦略に終始したのと真逆だった。日本の衆議院議員選挙ではもっと酷く,各党とも何の具体策も出さないままだったため,求心力を失った自民党が惨敗した。そして姑息な連合構想だけが暗躍しており,また国民不在な政治が続くように思われる。
アメリカの政治が新段階に入るが,民間の発想の気質が変わるとも思えない。一枚板ではない「合衆国」の良さが見え隠れする。もちろん,筆者が予想するようなアメリカ分断というシナリオもあり得る状況になっている。あるいはクーデターや内乱が起きるかもしれない。それでも,前向きに新しい発想を提示しているその底力に,日本人にはないバイタリティを感じるのである。