ドローンというと,プロペラの軸を四角く配した4軸の姿を筆者はイメージする。最初にこのタイプを開発したのは誰だろう。このタイプはクワッドローターと呼ばれた。
Wikipediaによると,1989年に日本企業キーエンスが発売したらしい。その後,一般に発売されたのは2010年のフランスのParrot社の「AR.Drone」。ここでドローンという名前が出てくるようである。
さて,それまではヘリコプターでプロペラの軸は1個。ブレードの長いプロペラを回すために強力なエンジンを使う。これに対して一般的なドローンは短いブレードのプロペラをモーターで回転させる。ヘリコプターの1軸で安定させて飛行させるよりも,4軸の回転数を独立で調整した方が安定させられる。かつてはこういう細かい姿勢制御ができる電子回路がなかったが,マイコンの能力が向上し,さらに姿勢を検出するセンサーの能力も向上して,安定した飛行ができるようになったと考えられる。
しかし,ヘリコプターはブレードの長さを長くすればプロペラで大きな揚力を得ることができるのに対し,4軸ドローンはブレード同士が干渉しないように,ブレードの長さには限界がある。ブレードを長くするには軸同士を離さなければならない。
つまり,短いブレードでコンパクトに設計しようとすると,揚力には限界がある。同じブレードで揚力を得るには回転数を上げる必要がある。するとモーターを強力にしなければならず,軸が重くなる。さらに,騒音も大きくなる。この辺りのバランスをうまく設計する必要がある。
つまり,重量物を運ぶには,ブレードを長く取れるヘリコプターが有利だし,積載量よりも安定性を重視するなら4軸ドローンが有利と言えるように思える。
近年,ヘリコプターやオスプレイの墜落事故が続いており,それは安定性が足りないからではないかと考えて4軸ドローンの方がいいのではないかと書いた(2軸プロペラのオスプレイへの疑問--ドローンの垂直4軸+水平2軸を重量級飛行体に応用する提案 - jeyseni's diary (2024/11/17)。しかし,結局,軍隊や自衛隊の任務は人命救助にある。重量物を運んだり,引き上げられなければ役に立たない。
人命救助に使えるような強力な4軸ドローンを設計するのは,なかなか微妙なのかもしれない。
まず,基本的にはハイブリッド方式。プロペラの回転はモーター,電力供給はエンジンによる発電で,バッテリーの重量は最小限にして,長時間の飛行も実現できるからである。
これでヘリコプター並みの積載能力のあるドローンは作れるだろうか。かなりの難題と思われるが,ぜひ実現してほしいものである。