あえてマイナーなタブレットに挑戦--TCL NXTPAPER 11がやってきた【追記あり】 - jeyseni's diary (2024/11/24)について,もう少し技術的な内容をまとめてみようと思う。この商品を取り扱っている中国のtradeINN社より「レポートを書いて」と言われているのだが,どうも単に「見やすいタブレット」「目に優しいタブレット」と言うだけでは,一般の人なら手を出せないからである。
メーカーであるTCLの日本のサイト(TCL集団について- TCLの先進ディスプレイ技術 - TCLジャパン)には以下のように解説されている。そのままコピーしてみる。
「TCL NXTPAPER Technology (2.0)
1日の平均スクリーン使用時間が増加する中、TCLは2021年にNXTPAPERを開発し、ユーザーが目の健康を損なうことなく仕事やエンターテインメントを楽しめるようにした。ソフトウェアとハードウェアのブレークスルーにより、TCL NXTPAPER 2.0はオリジナルより最大150%明るくなりました。最大500nitsの眩い輝きで、ユーザーは明るい日差しの下でも鮮明な画面を楽しむことができ、最新の映画を観ながら外でくつろぐことが楽しくなります。この明るさは、TÜVのブルーライト低減レベルを上回るもので、ディスプレイ上の画像に実物のような色彩と深いコントラストを維持している。
TCL NXTPAPER 2.0は、マルチレイヤースクリーンプロテクションを採用したアンチグレアディスプレイ技術により、TCL NXTPAPERデバイスが明るい光の下でも使いやすくなったことを意味します。さらに、内蔵の光センサーが自動的に色温度を調整し、長時間の使用でも目を保護します。」
まず,PAPERという名称だが「電子ペーパーではなく,液晶ディスプレイ」であることは間違いないようである。その液晶パネルの表面に重ねた「マルチレイヤー」つまり多層のフィルムを使って,透過光,反射光をうまくコントロールし,明るさの向上,ブルーライトの低減,反射光の抑制を実現したということのようである。
肝の技術は「円偏光フィルター」の採用だろう。通常の液晶パネルが直線偏光フィルターを使うのと違いを出している。
直線偏光フィルターの場合は,2枚の直交する偏光フィルターを液晶パネルの前後に配置し,透過光を遮ったり出したり制御するのだが,基本的にバックライトの光の利用率はそれぞれ50%なので1/4の25%になる。これを円偏光を使えば,理論的には1枚分の光量減の50%で済む。明るさが倍になる計算である。
特に外光が内部で反射した光に対しては,円偏光フィルターで理論的には完全に遮断ができる。これが屋外での視認性につながっているようである。
円偏光フィルターは,すでに一般のカメラ用の偏光フィルター(PDフィルター)として広く使われている。フィルムカメラ時代には,直線偏光のPDフィルタが主流だったが,デジタルカメラではハーフミラーで光路を制御する際に偏光がさらに加わることから,円偏光フィルターであるC-PDフィルターが一般的だという。
しかし,タブレットクラスのサイズになると,この特殊な偏光フィルムを使うことでコストアップになるようである。圧倒的な物量を誇るiPadや数多くのAndroidタブレットで,見やすさ,目への優しさよりも画素数,色表現,反応速度などが重視されており,NXTPAPERの特徴を出しにくい。輝度や色再現で優れる有機ELパネルの利用も広がっている。今一つ,押しが弱い。
筆者としては,タブレットよりもパソコンを使っている時間の方が圧倒的に長い。TCLはタブレットからスマホへのNXTPAPERを展開させているが,次はノートパソコンを作ってほしい。また屋外に強い特徴を生かしたデジタルサイネージ分野でも,市場を開拓していってほしいと思う。
さらに,ライセンシングを拡大して仲間を増やした方が,世の中の理解を得られるのではないかと思うのである。