埼玉県八潮市の国道で2025/1/28に起きた陥没事故で,大掛かりな救出作業が進められている。5日目に入り,重機が陥没の底に入った。1秒でも早く救出されることを祈っている。
防災評論家が,地域の消防隊の対応について批判していたが,今回の初動は広域消防隊でも的確にできたかどうかはわからない。
事故現場は常に二次災害の危険がある。救助に向かった自衛隊や消防隊が災害に巻き込まれる可能性があるからである。慎重を期すのは当然だが,大胆な作戦も必要になる。地下にできた空洞の大きさも分からないし,さらに穴が広がる可能性もある。
そもそも,地下に空洞ができる最大の原因が,水道管の破裂による土砂の浸食である。2016年11月8日に博多駅前の大通りでの大規模陥没事故が記憶に新しい。あのときは早朝だったため,幸いなことに人的被害がなく,水道管の漏水を止め,管を修復し,埋め戻すという作業が比較的順調に進められた。しかし今回は,トラック1台が穴に落ちて,抜け出せなくなったことで違う判断が取られた。
初動後,トラックを重機で吊り上げて取り出そうという処置が行われたが,一度ワイヤーが切れて失敗。2度目は引き上げができたが,トラックの荷台部分のみが吊り上げられ,人が乗っているコクピット部分が取り残された。その間に,さらに土砂と水が底に溜まるとともに,周辺の土砂が崩れ,別の場所が陥没した。
2度目の陥没は,救出作業がいったん止まっている間に起きたので,救出作業が原因ではないと言える。しかし,初動でも穴周辺に重機類が集まっており,道路のひび割れが拡大していなかったとは言えない。そもそも,穴周辺に重機を近づけることは間違いだったのではないかと思えるのである。
危険な地帯の状況確認のために,現在最も活躍できそうなのは,ドローンではないだろうか。山や海などでの人的救助であればヘリコプターを動員し,被害者を吊り上げるだろうが,街中では危険だし,ヘリコプターの風圧で陥没が広がる危険性が高い。しかしドローンなら,穴の中に入って状況の把握を迅速にできたのではないか。被害者の状況もつかめたのではないかと思うのである。
その次の段階としては,レンジャー部隊がロープを使って穴の中に入ることが考えられる。今回は周囲の建物や電柱を使って穴の上にロープを渡し,そこから垂直に穴に降りて,まず被害者を救助することを優先的にできたのではないかと思う。穴の周囲の舗装にダメージを与えず,さらなる崩落を防ぐ方法が取れたのではないかと思うのである。トラックの吊り上げなどは,その後でもできたのではないかと思うのである。
重機を穴の中に入れるために,周辺を崩してスロープを作るという大掛かりな救出作戦になってしまったが,時間がかかりすぎている気がする。
救難作業の初動の機動力が気になったのは,能登半島地震での現地入りに1週間かかったことを指摘した(自衛隊の有事対応の不安--機動力が発揮できていないのは政治のせいなのか - jeyseni's diary 2024/1/10)。アプローチが難しい地域なのと,冬場の日本海の荒天のため,ヘリコプターでのアプローチが難しいことは理解できる。道路の復旧に重機が必要なのは目に見えていたが,とりあえずオフロードバイクや四輪駆動車で現地入りする機動力が必要だったのではないかと思う。
関越自動車道路が大雪で大渋滞になった際は,ドローンで非常食を運べないか提案した(災害の中継はしても手出し(助け)はしないマスコミ(追記メッセージあり) - jeyseni's diary 2020/12/19)。この時は,スノーモービルが渋滞の中央を突破して非常食を運ぶという機動力が使われた。
現場の状況把握にドローンを使う,現場へのアプローチにオフロードバイクや小型の四輪駆動車,タイヤの代わりにクローラー(キャタピラー)を装備したトラックなど,機動力のあるモビリティをもっと活用すべきである。
また,人の救助のために最も応用力のあるのは,やはり「人」である。救助隊員をいつでも吊り上げられる態勢にして早く穴の中の捜索をすべきだったのではないだろうか。水害で取り残された人を救出できるのは,ロープでアプローチしたレンジャー隊員の柔軟な判断でしかない。ガラスを割る,手で掘り出す,何らかの形で呼吸を確保する,そして火事場のバカぢからで被害者を引きずり出す,といった咄嗟の判断は,被害者を目の前にしたレンジャー隊員だけでしかない。それも,自分の危険を顧みずに一刻も早い対応を取るための訓練を受けたレンジャー隊員だけだったのではないだろうか。
豪雨が当たり前になり,一般道路の冠水も当たり前になってきた。舗装した道路は,表面上は問題なく見えても,舗装の下の土砂が雨水で流されて空洞になっている可能性は,全国どこにでも存在する。今回のような下水管や水道管の破裂だけが道路陥没の原因ではない。道路だけでなく,住宅地でも陥没の危険はある。
インフラの崩壊は,道路,橋,線路,高速道路,地下鉄,堤防(川,海岸)そして上水道,下水道,ガス管,電線などに及んでいる。高度成長期の産物が次々に寿命を迎えているのである。持続可能な構造物とは何なのか,真剣に議論すべき段階かもしれない。