jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

汗かく“エンジニア”は日本には戻ってこない--3Kは変わらない

埼玉県の道路陥没事故…原因は“技術者をないがしろにしたツケ”? 配管のプロが提言「工業高校で“設備科”の拡充を」八潮市の道路陥没事故は,2025/2/9の段階でとうとう行方不明者の捜索が断念されるという消防からの発表があったようである。

 下水道本管の陥没地点から100~200mの位置でトラックのキャビンがドローンによって発見されたが,行方不明者は見つかっていない。管の中は下水が流れており,酸欠状態になっている可能性があり,作業員が入って捜索するのも危険な状態にある。まず,下水を遮断する必要があり,そのためにはバイパスで上流からの下水をすべて吸い上げる必要があるのだが,残念ながら現時点では全量の10%ぐらいしか迂回できていないようである。ここの吸い上げがもう少し大規模にできなかったのだろうか。

 現時点でも,この下水を上流で食い止めなければ下水管の交換・修復はできない。逆に,下水のバイパスができれば,下流でのトラックのキャビン周辺の捜索や土砂の除去も可能になると思われる。

 家を建てる時,まず必要なのは基礎を作る前の地盤工事である。土を掘って整地する必要がある。狭い土地で小型のパワーショベルを使って器用に溝を掘ったりするのだが,アームの操作などの運転は実に繊細な動作が必要になる。その後,基礎のコンクリートを打つためのパネル設置から,ライフライン用のパイプ設置,周辺からのライフラインの引き込みなど,それぞれの作業には資格が必要になってくる。

 町中の下水管,上水管の配管ともなれば,深さ10mといった深いところでの作業になる。危険度はさらに上がるし,工事の規模も大きくなる。

 さらに配管の点検のためには,管の中に入らなければならず,酸欠やガスの危険性があるし,メンテナンスにはさらに時間のかかる作業が待っている。

 こうした工事に携わる土木技術者,配管技術者は,屋外での作業になり,厳しい作業環境である。しかも物理的な危険も伴う。高度成長期は,現金支給など大盤振る舞いな業界で,人も集まったが,現在は日本人の成り手は激減している。工事現場に外国人労働者が多く見られるようになった。彼らにも資格は必要だが,無資格で作業させる違法な現場もないとは言えない。

 モノづくりの現場にも,機械技術者や電気技術者など多くのエンジニアが必要だが,やはり作業環境は悪い。現在,日本のモノづくりの品質が低下している理由の1つが,これらの汗をかくエンジニアの不足である。

 かつての電機,自動車などのモノづくり産業から日本人エンジニアが消えているのと同様,土木・建築現場からも日本人エンジニアが減っている。3K(きつい,汚い,危険)な状況は続いており,日本人エンジニアは成り手は減っている。危険な割りに給与水準は低い。汗をかく肉体労働であり,汚れることも多い。成り手が増えるとは思えない。

 きれいに出来上がったモノは,仕上げる前の段階で必ずしもきれいだとは限らない。料理の下ごしらえでも,肉や魚をさばく段階は力仕事だし,さらにその上流を見れば,家畜を育てたり海に漁に出たりする仕事は肉体労働だし,きれいな作業ばかりではない。

 大部分の都市生活者(日本に限らないが)は,汚れモノと縁のない生活を送っている。お金を払えば衣食住すべてが出来上がったモノとして手に入る。その出来上がるプロセスのことなど意識しない。

 一方で,仕事を選ぶ側も,収入の良さや目立つ仕事に目が行きがちである。医者,パイロット,料理人,歌手や芸人,モデルなどから,Youtuberなどが流行りとなり,経済が停滞した現在,投資というバクチまで推奨される中でデイトレーダーを含む投資に走る人も多い。しかし,医者の中でもキツイ外科や救急医療,産婦人科,小児科などは敬遠される傾向にある。

 汗をかく仕事で,その仕事量に見合った収入を得ている人は減った。何事もコストダウンが求められ,その矛先はまず材料費の削減と人件費の削減に向けられる。安い材料を使い,時には偽装までして,形だけ作る。検査もまともに行われなければ,検査偽装も行われる。そして安い人件費の海外研修生を使ったり,非正規労働者,アルバイトなどで当座しのぎをする。これでいい製品や仕事ができるとはとても思えない。実際,かつて世界一の品質を誇っていた日本製品は,海外にも売れなくなり,かつての家電産業トップだったパナソニック松下電器)までが解体されようとしている。自動車業界再編の目論見であった日産自動車本田技術研究所(ホンダ)の合併話も破談に終わった。

 まして,表に出てこない土木分野で,汗をかいていい仕事をして達成感を得ようという人材は,基本的には育たないのではないだろうか。下水管を敷設する,といった最初の仕事は,新しい材料を使ってきちんとできるが,すでに土に埋まってしまっている下水管の点検やメンテナンス,交換といった地味な仕事は,やり手が出てこないのではないだろうか。

 医療現場や介護現場,建設現場,モノづくり現場,そして教育現場といった社会を下支えする現場で働くエッセンシャル・ワーカーに対して,社会的な評価を高めて適切な収入が得られるような道がなければ,エンジニアは現場には戻ってこないと思う。資格に対する評価のほか,サポートするロボット技術やAI技術などの導入,そして単なる労働時間制限ではない社会保障の仕組みが必要なのではないだろうか。そう考えると,本当に自由主義経済が正しい道なのか,怪しく思えてきている。