2011年3月11日の東日本大震災から14年,各地で災害に対するイベントが行われている。震災の後,大きく取り上げられたのが,南海トラフ地震と首都直下地震である。特に南海トラフ地震では,東日本大震災以上の大津波が襲ってくると予測されている。
しかし,「災害に対する準備」ができているか,というアンケートに対して,6割の人が準備ができていない,と回答した。「災害に対する準備」とは何かを,もう一度考えてみたい。
①災害に対する初動の準備をする
身近には,交通事故がある。とにかく油断しないことだが,歩道に乗り上げたり,反対車線から突っ込んできたり,急発進したりと,さまざまなパターンが考えられる。落ち着いて歩くこともできない。ただ,スマホ歩きをしていれば,判断が一瞬遅くなることは確かだと思うので,「スマホ歩きはしない」がまず前提かと思われる。
万が一事故に巻き込まれた場合は,救急や警察への連絡も必要だが,事故を拡大しないように人とクルマの動きを規制する行動が求められる。これを冷静にできるかどうかだが,まず難しいだろう。まして,心停止でADSで蘇生措置をすることなど,1度や2度程度の講習を受けても実際に動けるかどうかはわからない。自分が巻き込まれた場合や,周囲で事故が起きた場合など,これも頭で想定して,行動パターンを作っておく必要のある案件である。(生命保険証書,健康保険証,などの場所の確認)。
雨,風,雪も,実は油断はできない。自宅にいても雨漏りすることもある。雨漏りといっても,リビングにポタポタと垂れてくる以外に,屋根裏にジワッと染み込んで家の構造を腐らせるといった被害もある。大雨だと道路の冠水を皮切りに,内水氾濫,土砂崩れなども想定しなければならない。被害が長引くこともありうる。風は屋根が飛んだり,アンテナが倒れるなどが考えられるが,昨今多い竜巻などは,一瞬のうちに被害を及ぼして駆け抜けてしまう。何が起きたか分からないし,予測すらできない。雪も,積もれば屋根を押しつぶす危険があり,さらに雪かきで落雪に埋もれたり,屋根から落ちたりする。雪国以外では,積雪が解けてもまた凍り,翌朝の歩行が危険になることもある。
火災も厄介である。自宅で起こした火災は自分で責任を取るとしても,隣近所からの延焼はたまらない。まして,先月末から今月にかけての山火事などは,延焼を防ぎようがない。避難して命は助かったとしても,避難中に自宅が燃え尽きてしまう可能性もある。災害が発生してから時間が経って延焼を受けるので,「何とかならないのか」という思いが強いだろう。絶対に燃えない家というのも,ほぼありえない。
さて,本題の地震である。地震に対する初動の準備としては,あらかじめ家具が倒れないような突っ張り棒をセットするとか,さらに家屋に地震対策の補強を加えるなどから始まる。しかし,雨,風,雪,火災などが事前の天気予報や消防車の警報によって,被害に至るまでに時間的なタイムラグがあり,その間に準備できると思われるのに対し,地震と,それに伴う可能性のある土砂崩れや津波は,発生の予測もできないし,襲ってくるのがまさに「またたく間」である。結果,家屋がつぶれたり,押し流されたりというまさに「命を守る行動」が必要な災害になる。
②起きた災害からすぐに逃れる「命を守る行動」
地震が起きたら,最初の強い振動を何とかやり過ごしたあと,火を消すとか,ドアを半開きにして避難路を確保するとか,言われている。家屋が崩れるような大地震であっても,家から逃げ出すぐらいの数十秒の時間はあるだろう,という前提である。しかし,実際はどうだろうか。特に夜間や就寝中に明かりがない状態で,起き上がったり,家具が倒れないように押さえるのが精いっぱいで,その後に来るかもしれない大きな揺れの前に家の外に出る,という行動が取れるだろうか。
さらに,次に起きることが予想されている大地震で心配されるのが津波だが,東日本大震災でも地震の大きな揺れがあったあと,10分ぐらいで津波が押し寄せている。震災の後,津波警報が出たらすぐに高いところに登るように指導されているが,「高いところ」の基準がない。実際,ビルの3階や屋上にまで上がったのに水に巻き込まれてしまった方もおられる。裏山の高台に登れ,と言っても,そこが最終的に安全かどうかの保証もない。第一,家から高台への移動に普段でも10分以上かかることも多く,さらに町全体で避難をした場合,人が渋滞して避難が遅れるということも予想される。
とにかく,津波の恐れのある海沿いの地域では,震度6といった地震が発生したら,指定の高台の避難場所まですぐに移動できるための日頃の訓練が必要だと思う。これを,自治体や地震警報などを見てから判断する,といった程度では,もはや遅すぎるだろう。周囲が何と言おうと,とにかく一次避難することを何度も訓練することが「準備」なのだと思う。
③災害後,ライフライン復旧までの生活の準備
現在,「災害に対する準備」の大半が,防災リュックを準備するとか,バッテリーを充電しておくとかの,ライフライン復旧までの生活の準備や,避難所生活のための準備,という意味に偏っているような気がする。「準備していますか」という質問に,4割が準備している,6割が準備していない,と回答しているが,準備しているという回答にしても,せいぜい非常食を少し買ったりしているだけではないだろうか。
もちろんその準備も必要なのだが,本当は「災害がいつ起きるかもしれないという心の準備」が必要なのだと思う。3.11の東日本大震災を機に,9月1日の防災の日と合わせて年2回も防災を呼び掛ける機会が増えたことは望ましい。しかし,実際には隣近所で声を掛け合って助け合うというコミュニケーションネットワークが作れるかということが一番重要だと思うのだが,町内会や自治会などへの参加がおそらく各地域の1/4ぐらいの住民だけなのではないかと思われ,取り残される人がいる可能性を否定できない。まず,完全な住民登録と,呼びかけのためのネットワークをきちんと整備するところから,もう一度考え直すべきだろう。