スマートフォンに複数のカメラレンズを装備するスタイルが一般的になっている。フィルムカメラやデジタルカメラでは,フィルムの面積やCCDなどの撮像素子の画素数をできるだけ多く使って,高感度,高画質を目指すために,レンズ側でズーム機能を持たせる設計だが,スマホの場合は複数のレンズとそれぞれの撮像素子を使って幅広いズーム領域をカバーする方式が考えられた。ズームも基本的には撮像素子に写った画像の一部を拡大表示することで実現しているが,超高密画素の撮像素子と,撮像後のデジタル処理によって高い解像度を実現している。
画質などの画像処理も含めて,スマホ内でそれらしく加工されてしまっている。手振れの補正も画像処理で行われるし,複数枚を連続で撮影して,たとえば人が目をつぶっている部分を別の画像から組み合わせて,それらしい画像を加工して出力している。もはや「写真」と呼べるのかどうか怪しいほどだが,撮影者の意図する画像がほぼ出力されるので,ある意味でスマホカメラに乗せられてしまっているようなものである。
このスマホの複数レンズは,筆者にとってはかなり衝撃的だった。というのも,『天空の城ラピュタ』に登場する「ロボット兵」のように,レンズの直径が違ったり,三角に配置されたりしていたからである。
なんだか光軸がずれているような印象だったが,二眼の特徴を生かして,被写体までの距離の奥行情報を取得することができ,結果として撮影後にピント位置を変更したり,立体視データを取得したりできるようになったのはすごいことである。
ただ,レンズ部分がボディから少し前に浮き出したような形が標準になっているのも,デザイン的に今一つ好きにはなれない。なぜこの出っ張りをなくせるような設計にしなかったのだろうかと今でも不思議に思っている。
さて,電車の中で向かい側の人がスマホでゲームをしたりしている際,この複眼レンズ群が自分の方を向いていることになる。撮影されているわけではないのだが,どうも動画を撮られているような気持ちになるのである。
かつてのガラケーでは,カメラレンズには必ずといっていいほどスライドして閉じる蓋が付いていた。隠し撮りをしていないことをアピールするために,あえてレンズを隠していた。それがケータイを使う上でのマナーだった。ところがスマホになると,この複眼レンズがまともにこちらを見ている形になる。
スマホケースも,以前はディスプレイ面をカバーするノートブック型が主流だったが,今はなぜか透明シェル型でディスプレイ面が表に出たままのケースが主流になっている。この場合,レンズ側はもちろん常に見えた状態である。またノート型ケースでも,カメラレンズ用の穴はどんどん大きくなっている。これでは,カバーを掛けていたとしても「盗撮OK状態」に見えてしまう。
やはり以前のケータイのように,カメラ機能を使う場合にのみ選択的にレンズを出す,というような仕組みがあった方がいいと思う。でないと,あらゆる人が「盗撮中」に見える危険性があるからである。
逆に,ノートブック型のスマホケースでは,カバーを開くという動作が1つ入るため,時報など簡単な確認事項がある場合,すぐには表示が現れない。
そこで逆提案だが,ディスプレイの表側の面にも穴を明けてディスプレイの状況がみえるようにするといい。そして正しく撮影してもらい,トラブルなしで過ごしてもらいたいのである。