和歌山県白浜のアドベンチャーワールドにいる4頭のパンダ(「良浜」「結浜」「彩浜」「楓浜」)が,2025年6月いっぱいで中国に返還されることになった。これにより,日本のパンダは,上野動物園にいる2頭(「シャオシャオ(暁暁)」と「レイレイ(蕾蕾)」)になるが,この2頭も2026年2月で中国に返還されることになるという。これにより,日本のパンダは0頭になる日も近い。
上野動物園もアドベンチャーワールドも,繁殖の実績があり,中国との共同の繁殖プログラムの一環で貸与されていた。繁殖実績もあり,そのノウハウのクオリティも高い。しかし,パンダの飼育実績のある中国で,全面的に繁殖プログラムを進める方針にしたのではないかと思われる。
パンダの飼育はなかなか微妙なうえ,年間の飼育維持費も数億円かかるとみられている。日中友好交流の一環としてのパンダ貸与だったが,これほどの費用を掛けての飼育にこれ以上かかわることもないのかもしれない。
今,世界中で動物園で飼うための動物の値段が高騰しているという。ホッキョクグマ,サイ,ゴリラ,ゾウ,キリンなど,数千万円から数億円と価格が跳ね上がっている。これは中国や中東アラブ諸国が観光目的で作った動物園での買い占めによるものと言われている。
そもそも動物は自然の中にいることが望ましい。アフリカのサバンナのホテルでは,ホテルの近くまでゾウやライオンが近づいてくる。動物は自然の中で生きている。
一方,動物園ではなるべく自然に近い環境を作っているとしても,しょせんは「見せ物」である。
筆者ももちろん,子供のころに動物園に行き,ゾウやキリン,ライオンなどの生きた姿を見て感動したことを思い出す。体験することは教育上は重要である。しかし,そのために動物たちには狭い檻の中でストレスを感じながら生かされている。動物保護という視点からすると,虐待と言えなくもない。
ペットもすでに,適正に飼育されているかどうかが問題になっている。ブリーダーも仕事として正しく評価されているかどうか怪しい。動物園,水族館などの施設で正しく飼育されていたとしても,動物そのものが幸せかどうかという視点から見ると,見せ物としての動物園,水族館の存在意義についても怪しくなってくる。
パンダは,日本パンダ保護協会が窓口となって中国との間で飼育・繁殖プログラムが組まれてきた。日本人にとってのパンダは,1972年にやってきたオスの「カンカン」とメスの「ランラン」である。結果としては見せ物であり,「客寄せパンダ」といった言葉すら生まれた。上野動物園にしてもアドベンチャーワールドにしても,結局は客寄せが最大の目的になっていることに変わりはない。
生き物の命も生きる権利も,一種の尊厳であることを考えれば,もう動物園や水族館の使命は終わったと考えてもいいのではないだろうか。技術が発達し,バーチャルで見せる技術もほぼ完成したといえる。いまさら,実物にこだわらなくてもいいのではないだろうか。日本パンダ保護協会は,現時点でのパンダの意義についてどんな見解を持っているのだろうか。相変わらず,「日中友好の印」としてパンダの貸与を求める,というのであれば,それはもはや時代錯誤ではないだろうか。パンダ人気にあやかって,本質的なパンダの尊厳を考えてこなかった協会は,批判されても仕方がないと筆者は考える。