通勤の満員電車で押されながらも,いろいろなことを考えている。そういえば,「吊り革」とは変な言葉だなと,ふと思った。現在の電車の吊り革に,革が使われているわけではないからである。
たしか,子供のころに乗った市電の吊り革は,革の帯に木製の輪が付けられていたのを思い出す。現在はより強靭なナイロンベルトにプラスチックの輪という組み合わせである。
では「吊り革」を英語ではどういうのかと考えてみた。機能的には,hanging gripかな,と思ったのだが,辞書では「strap」だった。ストラップといえば,携帯電話に取り付けていたヒモが思いつく。筆者はガラケー時代から現在のスマホに至るまで,手首に掛けるだけの短いストラップを愛用しているが,近年はポシェットのようにスマホを肩から斜めにかけるショルダーストラップが流行った。しかし,画面はむき出しのままで,どうにも危なっかしいので,筆者は使わなかった。なんと2022年の「現代用語の基礎知識選 2022ユーキャン新語・流行語大賞」で「スマホショルダー」がトップ10に選ばれたが,いつの間にかブームは落ち着いているようだ。
しかし,考えてみると「吊り革」がブラブラと揺れている光景は,どうも日本独自のようなのである。たしかに,アメリカや中国,韓国などでは,床から天井までつながるポールがあり,横方向にもつかまるパイプはめぐらしてあるが,吊り革的にぶら下がったものは思い出せない。
もう1つの「網棚」については,かつては本当に漁網のような網を張った荷物置きだったのだが,これもいつの間にか金属パイプを並べる形に変わり,現在は透明なアクリルの板を置いたものになっている。呼び方も「荷棚」に変えた電鉄会社も増えた。
この「網棚」も海外の鉄道では見られないようである。しかも,荷物を手から離して荷棚に載せておいてもだれも持っていかないという安全なのが,日本のいいところなのだそうだ。
筆者は,電車で立つときはカバンを足元に置くか,網棚に置く。その分,自分の周りにスペースができ,より多くの人が楽に乗れると思うからである。ところが昨今は,デイパックを背負ったり,腹側に背負ったりして,床に置くことも網棚に載せることもしない人が増えた。自分の手から荷物が離れるのが怖いのか,あるいは会社のコンプライアンスで荷物を手から離してはいけないと言われているからなのか,とにかく荷物でギュウギュウ押されるものだからたまったものではない。
満員電車なのだから,もっと網棚を活用してスペースを作るべきだと思うのだが,注意しようとしてもイヤホンが装着されているし,下手に怒れば反撃される。こういうじっと我慢な日本の通勤電車は,相変わらず“痛勤電車”なのである。