アメリカのトランプ大統領が世界各国に対して輸入関税を大幅に上げるという発表(2025/4/1)をして3ヶ月が経過する。元々,2025年1月20日に大統領に就任直後に,隣接するメキシコとカナダとの間の関税を上げると宣言していたぐらいだし,「I love tax」というぐらい関税をディール(交渉)のカードに使ってきた。
メキシコもカナダも譲歩案を出したことで,実施を1ヶ月猶予するという交渉がまとまった。その後,世界各国に対する相互関税を実施する2025/4/9を前に,2025/4/8に日本から派遣された経済再生担当大臣の赤澤亮正氏が直接会談する席にトランプ大統領が同席するという異例の待遇となり,日本との交渉成立で他国を追従させるという作戦が取られた。しかし,その後,赤澤大臣が7回も訪米して閣僚級との対話を重ね,G7の会場では石破首相とトランプ大統領の直接対話も実現したにも関わらず,交渉はまとまらなかった。
一方で,イギリスは5/8にアメリカとの交渉に成功し,最初に関税率引き下げを実現させた。その後も,7/9までの延期措置の間に10ヵ国程度の交渉が成立すると見られるが,その中に日本は入っていない。逆に,当初24%と言っていた税率を30~35%に上げるという発言もトランプ大統領の口から出ている(2025/7/1)。具体的な条件そ出さず,「日本からのアメリカへの投資がアメリカ経済に寄与している」ことを納得させようとした結果,引き延ばし作戦だと認識されて交渉分裂という結果になってしまいそうである。あと1週間で具体的な条件を提示しなければ,今度は延期はないだろう。
「コメが足りないと言っていながらアメリカからコメを買わない」「日本車はアメリカがたくさん買っているが日本はアメリカ車を買わない」とトランプ大統領は不満を言う。後者はアメリカの自動車メーカーが日本の市場で売れるモデルを作り切れていないから仕方がないのだが,前者は筆者も不思議に思っていることである(米騒動なら次は「打ち壊し」--相手はJA以外に考えられないのだが - jeyseni's diary 2025/5/9)。筆者はアメリカ留学中にニューヨークで1人用の炊飯器を買い,そして日本食品店でカリフォルニア米「錦」を買って食べていた。普通に炊けるし普通に美味しかった。コメを神聖化してきた日本の農政について,ビジネスマンのトランプ大統領が理解できるはずもない。そういう高飛車な態度で交渉に臨むから,妥協も得られないばかりか,かえって被害が大きくなってしまう状況にある。
あと1週間で,適切な妥協案を示すことはできないだろう。高い関税を掛けられ,日本の自動車メーカーが行先を失って初めて,政治の無策に気づくのだろうか。
まず,クルマの非関税障壁である灯火類の規制を緩和することと,コメの年内の輸入量を備蓄米レベルの100万トン追加することを提案すべきだと考える。
【7/8追記】トランプ大統領は,日本に対して書簡を送り,関税率を25%,発効を8/1とするとした。筆者は「40%は掛けてくるだろう」と予想していたが,意外にも当初の24%に近い数字だった。マスコミは「当初を超える」と報道しているが,ここにトランプ大統領のまた深読み交渉術が見られることを見逃してはならない。彼は,石破首相と7回もアメリカを来訪した赤沢大臣に対して「配慮」していると見た。つまり,交渉が完全に決裂しても構わない中国に対しては125%といったとんでもない数字を出すが,相互連携したい日本に対しては大幅に譲歩した形だと見る。さらに,参議院議員選挙に突入した日本に対し,ここで石破首相が「すばらしい提案」をすることで自民党が勝利することを望んでいることが見えるからである。石破首相は,まずトランプ大統領に対して大幅に譲歩してくれたことの感謝の意を伝えたうえで,先に筆者が提案したような譲歩案をきちんと提示して,元の10%関税に戻す道を取るべきだろう。でないと,この交渉に失敗すれば,自民党大敗,政権交代となることは目に見えており,それは日本の崩壊を意味するからである。