火事といえば,昔は冬場の暖房による火災か,タバコの不始末と相場が決まっていた。しかし現在は,なぜか夏場に頻繁に火災が起きているように思える。その原因を考えてみた。
1つは,異常気象が考えられる。夏場の不安定な大気でゲリラ豪雨と落雷が頻発する。落雷による直接的な火災も増えるとともに,過電流が家中に流れる。これによって家電やコンピュータはもちろんのこと,ネットワーク系のルーター,充電中のスマホなどが故障する。古い家電は電源をやられ,リチウムイオン電池搭載のモバイル機器などはバッテリーの発火も否定できない。
猛暑日の記録更新するような夏場に,適切にエアコンを使用すると言っても,連続運転の負荷,そしてホコリ汚れなどによる負荷でエアコンも過熱する。大阪道頓堀で2025/8/18に起きたビル火災では,エアコンの室外機からの発火という見方もある。
もう1つの原因として,家の電源タップの劣化と,とコンセント周りのホコリの蓄積を問題視してみたい。特に,何十年も住み続けている家だと,コード類の劣化もギリギリのところまで来ている可能性がある。
壁の中の電気配線は,太い銅線とガッシリした被覆の太いケーブルを使って,電気配線の資格を持つ者が設置しているだろうから,壁に出ているコンセントまではとりあえず安全と考えていいだろう。接続部もきちんと処理されているだろう。
さて,壁のコンセントは一般に1つの部屋に2ヵ所で,合計でも4口しかない。昔はテレビとラジオ,電気ストーブ,こたつ,扇風機といった程度しかつなぐものがなかったから事足りた。黒電話は電源不要だった。しかし,高度成長期には,これにビデオ機器と留守電機能付きの電話機が加わった。さらにインターネット時代に入ると,パソコンや携帯電話,ルーターなどのネットワーク機器やプリンター,ディスプレイなどを接続する必要ができた。台所には,電子レンジやトースター,そしてIH調理器も備えられた。
これらに電源を賄う方法としては,3~4口の電源タップをコンセントに差し込んで,仕事机や棚の近くまで引き出し,そこに機器の電源プラグを差し込んで使用することが日常的に行われている。筆者は,この電源タップの長期にわたる使用が,昨今の火災が増えている原因の1つではないかと考えているのである。
一般的な電源タップの電気容量は,1500Wである。大型テレビでも200W,レーザープリンターでも1000Wぐらいなので大丈夫そうに思えるが,電気ストーブになると弱で600W,強だと1200Wの切り替えが普通ぐらいになる。本来は,コンセントに直接接続して使うべきところだが,電源タップで延長して使う場合もある。
もちろんこのケースでも,電気容量をオーバーしていなければ使えないことはない。しかし,プラグやタップ,そして電源コードを触ると,熱を発しているのが分かる。
電流が流れれば,そのコードや接続部の電気抵抗によって熱を発することは,理科で習ったジュール熱のことである。壁の中の配線のように太い銅線を使っていれば電気抵抗は低いが,電源タップのように細い銅線のより線を使っている場合は,電気抵抗が高く,発熱しやすい。
また,コードが家具に挟まれたり,イスの脚で踏んでいたりすると,コード自身が変形したり,破損したりする。しかし,普段は目に見えない壁際に沿わせているので,不具合を見つけることが難しい。
これに経年劣化が加わると,プラグなどの金属の接触部分の電気抵抗も大きくなる。また,銅線を固定するネジなどの緩みで接触抵抗が大きくなる。さらに,電源コードのビニール被覆も劣化してもろくなったりひび割れしたりする。
これらの原因のどれかで,部分的に高熱になり,火花が出たり発火したりすることが考えられるのである。
こうした電源タップ自身の劣化に加えて,コンセントにプラグを長年差し込んだままだと,プラグ周辺にホコリが溜まる。このホコリが着火材となって発火が大きくなる。トラッキングと呼ばれる現象である。
さらに,電源タップが物陰に隠れていると,周囲に燃えやすいものがあると火が大きくなるのである。
筆者の机の周りも,パソコンや周辺機器,スマホの充電器などで溢れかえっている。これらを整理したくて,ボックス型の電源ステーションを自作した(ボックス型電源タップを試作--箱の内側にタップを配置し,ケーブルをすべてボックスの中に収める - jeyseni's diary 2023/1/4)。ボックスの中に収めることで,周辺のモノを動かした際にプラグが緩んだりしないことを狙ったものである。しかし,ホコリは普通に溜まってくる。ホコリが入らないように密閉することもできなくはないが,熱がこもると逆に火災や劣化の原因にもなりかねない。
まず,古くなった電源タップは,適切な時期,約5年を目安に交換する必要がある。また,電源タップにさらに分岐を付けたりしないように,適切な口数の電源タップを用意する必要がある。さらに,コンセント周辺のホコリの清掃をするとともに,プラグを差し込む際に隙間をなくす「トラッキング防止カバー」や「プラグ安全カバー」なども併用すべきだろう。
モノを減らすこと,電器機器を整理することも重要だろう。しかし,それにしても電器機器が増えすぎてしまった。家のコンセント数ももっと増やすなど,法律的にも根本的な対策を考えた方がいいと思われる。
しかし,もっと厄介なのがスマホやタブレット,その他の携帯機器の充電である。数時間かかるものもあり,つい不在中に充電したり,夜間に充電したりする習慣があると思われる。もし,不在中に発火したらどうなるだろうか。大事な初期消火をすることもできず,あっという間に燃え広がって全焼,ということになりかねない。
電器機器類をコンセントに差したまま外出することも,考えてみれば危険な行為である。通電によってどこに不具合が起きて発火につながらないとも限らない。
面倒だが,すべての電器機器のコンセントは抜くか,元でオンオフできるスイッチ付きの電源タップで通電をオフにしておくことが望ましいかもしれない。
特に長引く猛暑の中では,エアコンと冷蔵庫以外は電源から切り離す習慣をつけた方がいいかもしれない。しかし,現代人には厳しい選択である。