ヒグマやツキノワグマによる人的被害が増えている。原因として,異常気象によるドングリなどのエサ不足,人里との接近による遭遇機会の増加,などが挙げられている。
さすがに筆者はクマに出会ったことがないので,実際に対応可能かどうかの自信はない。筆者が住んでいる地域ではイノシシ出没のニュースが少し前にあり,多少緊張しながら歩いた時期はあったのだが,現在は目撃情報はなくなっている。
クマの場合,草や木の陰からいきなり目の前に現れ,逃げる間もなく襲われたり,休憩をしている背後から近づいて襲われるケースが多いようである。数mという距離になっては,もはや逃げ場はないのだろう。クマの走る速さは時速40kmほどにもなる。イノシシはもっと速いかもしれない。軽自動車が向かってくるようなものだし,避けようがない。
いずれにしても,相手との距離を確保してゆっくりと相手の視界から消えるように逃げるしか,今のところ手段はないと考えられる。それ以前に,出没する可能性のある地域ではクマ鈴を着けて歩くなどの基本対策はまず必要だろう。
そこで思い出したのが,野良犬との遭遇の経験である。現在は,ペットの犬と楽しい生活をしている筆者だが,子供のころからずっと犬嫌いだった。実家で飼っていた犬が中型犬で,じゃれつかれると子供では対応できず,怖かった思いがある。それがトラウマなのかもしれない。近所で飼われていた小型犬にも吠え付かれ,駅前で出会ったペット犬にも急に吠えられたりして,犬は苦手だった。もちろん,噛まれたことはない。
そういう筆者の子供時代は,街に何匹も野良犬がいた。今ではまず考えられないが,学校の行き帰りの道にも平気で出没する。ときには道の真ん中に立ってこちらを見ているときもあった。
相手が筆者に気づけば寄ってくる。犬は自分より立場が上か下かを読み取り,それを基準に行動する。当然,犬を怖がる筆者に対しては犬の方が立場が上になる。しかも,近づかれて筆者が怖がっていれば,さらに立場を高めて吠え付いてくるのは明らかだった。
そこで筆者は,「とにかく相手に気づかれる前に迂回する」という手段に徹することにしていた。角を曲がって向こうに野良犬がいれば,すぐに引き下がるか,別の道に迂回することにしていたのである。相手が行動する前に,自分が先に引き下がる,という対応をずっとしてきた。
おそらく,クマやイノシシに対しても,「相手に気づかれる前に避ける」という知恵が必要だと思う。今話題の映画「8番出口」ではないが,「異変を感じたら引き返すこと」が重要だと思う。
その前に,「異変」が何かを知る必要があるだろう。クマの場合は独特のニオイがあるらしい。そのニオイを察知したら引き返したり,別の道を探す必要があるかもしれない。また,草木を動かすザワザワとした音も目印になるだろう。相手より先にこちらが察知する知恵とセンサー感覚が必要になる。レジャーの気持ちで歩いていては,気づきようがないかもしれないので,常に遭遇を予測して歩くぐらいの用心深さが必要と思う。
イヌは噛みつくだけだが,イノシシにはキバがあり,クマには強力なツメがある。接近戦になってからでは勝ち目はない。先に気づいてゆっくり逃げる。そのための気づきのセンサーを地元の人や登山客などは磨く必要があるのかもしれない。