jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

小中高の先生が大変な理由を分析--常に動き回る生徒×50人×6時間+当日の事務処理×2時間+翌日の準備×2時間ー[食事時間+休憩時間]

日本の教員は仕事時間が最長 「授業」は短いのに OECD国際調査:朝日新聞 (2025/10/7)。国際調査で,日本の小中高の先生の労働時間は1日14時間で,これでも6年前の調査より1時間ほど短くなったそうである。

 他国より長いのは,クラブ活動などの課外時間と事務時間。ただ,これはただ拘束時間が長いという問題だけではない点が抜けている。

 まず認識しておきたいのが,教員は「命(いのち)を守る」仕事である,という点である。担任であれば50人の生徒の命を守らなければならない。ケガをさせてもいけないし,お互いにケンカをさせないように仕向けなければならない。担任でなくても,学校の敷地内への侵入者から生徒の命を守らなければならない。低学年では生理現象の失敗もある。物理的にサポートしてやる必要がある。

 一方で,教員は「心を守る」仕事でもある。子供たちの健全な心を育て,社会人として世の中に役立つ人を輩出するという責務を背負っている。

 命や心を守る,という意味では,生徒間のトラブルにも対応しなければならない。いわゆるイジメで心や身体が傷つかないような環境を作ることも仕事である。

 学校という閉じられた空間の中だけなら,学校のルールや方針に従って子供たちと接することで,信頼関係を築くこともできる。しかし,ここに外部からの圧力が加わる。1つは,文部科学省教育委員会からの指導,そしてもう1つが親からの圧力である。

 そもそも,子供を学校に行かせるのは,教育や教養を学ばせるだけではない。学校という社会の中で,役割を持ったり,お互いの関係の中で建設的な社会を築けるような人格が育つ場でもある。学校に入れたら学校の方針に従って育て上げてもらう。それが親が子供を学校に行かせる理由であるはずである。

 ところが,学校の方針に注文を付けてくる親が昨今非常に増えている。いわゆるモンスターペアレントである。教育の方針が悪い,指導監督が行き届いていない,ほかの子供と差別をする,など,ありとあらゆる注文を担任や学校に持ち込んでくる。

 このように教員は,まだ社会生活ができていない50人のバラバラな生徒を四六時中コントロールしなければならない上に,外部からの危機や要求に応えていかなければならない。授業中はもちろん全力投球だし,授業が終わって休み時間や昼食時間も生徒たちの動向に気を配らなければならない。一日が終わればその日の記録と処理をし,翌日の準備をしなければならない。そこに部活動の指導時間も加わってくる。

 教員は専門職なので,会社勤めのサラリーマンとは比較すべくもない。むしろ,一日中緊張を強いられるとすれば工場勤めやドライバーなどの肉体労働者に近い。また人の命や心を扱う仕事からすれば医療関係者にも近いし,取り扱いの難しさからすれば介護関係者にも近いとも言える。一般に,労働時間が長い職種である。

 教え子が巣立ち,何年か後に自分を訪ねてくれたり,みんなで集まって昔を懐かしんだりする,という先生冥利に尽きる話はよく聞くことだが,昨今はなかなか熱血先生をしていられないようである。教える内容もどうしても受験につながってしまうし,かといって授業を進める早さをどこに合わせるのかも難しい問題である。

 給与が安定し,将来の年金も一般企業より充実している,などの魅力はあるものの,給料あたりの残業が長く,しかもその仕事の質は一般企業よりも多岐に及ぶ。キツイ仕事というイメージが昨今は先行し,教員への成り手も減少している。生徒数も減る傾向にあるが,先生1人当たりの仕事量は増え続けているように思える。

 昨今,高齢者の労働力をあてにするきらいがある。ドライバーや清掃員,警備員といった定番の仕事以外に,飲食店のフロア担当まで採用がある。リゾートバイトというのも増えているようである。筆者としては,シニアの労働力の行先の1つに,この教育現場のバックアップがあるべきだと思っている。筆者年齢のシニアなら,パソコン操作もある程度できるはずなので,資料準備やタブレット整理など,手間のかかる作業を教員とシェアできると思うのである。もちろん,教員免許のある方なら,補助教員として教室に入って手伝うこともできる。

 2025年は,ノーベル賞として生理学・医学賞と化学賞で日本人科学者が2人選ばれ,世の中がにわかに「科学押し」の雰囲気になっている。NHKではSSHスーパーサイエンスハイスクール)を取り上げ,その成果を報じている。しかし,サイエンスや基礎科学に進んだ人の多くが現在は安定した研究環境が得られていない。大学の教員になったとしても任期付きがほとんどで,しかも研究費も自分で調達しなければならない。20世紀後半の日本がまだモノづくりに力があったころは企業との共同研究で研究資金を確保するという道があったが,これだけ経済が沈滞していると企業が共同研究するテーマも余裕もなくなっている。

 宇宙に憧れ,ロケット実験をし,科学実験に興味を持ったとしても,現実を考えると研究者,科学者,サイエンティストの道を選ぶのは,リスクが高いのが現状である。

 本来なら,先生は子供たちに将来の夢を与えてあげなければならない立場にあると思う。しかしその先生の世代がすでに,周りに不況の風が吹き,安定を求めての教職選択だったということになれば,子供たちに未来を語るのも難しいかもしれない。

 そういう意味でも,教員をサポートする体制をもっと強化するとともに,親の再教育も必要なのかもしれない。教育だけでなく,躾からなんでも学校に押し付けて文句ばかり言う親たちから,教員をガードするような仕組みも必要なのかもしれない。