筆者は、セルフレジが基本的には好きである。QRコードの読み取りがいつも迷うのだが、エコバッグに自分の好きな順に入れてそのまま運べるからである。有人レジでの作業を見ていてイライラするのを避けられる。
一方で心配なのが、万引である。筆者は細かい買い物をしてカゴの中にまだ清算前の商品を残したまま集計して、後から清算忘れに気がつくことが何度かあった。しかし、これを意図的にして未精算商品をエコバッグに入れてしまえば、これは立派な万引である。
セルフレジには本来不要な係員が立っているが、客全員の行動を監視できる訳ではない。
技術的にこうした万引行為を防ぐ方法はいくつも提案・導入されている。しかし、完璧を目指せばコストアップになり、結局は有人レジがベストということになりかねない。
1つの方法としては,棚側に重さセンサーと視覚センサーを設けて、商品を手に取った時点でトレースを始め,カゴに入れた段階で価格を加算する。商品を棚に戻せば加算されないが,戻らなければその時点で加算されるため,万引は防げる。モノを動かした個数もカウントできる。買い物中の個数や合計はすでに計算されているが,レジ段階で再度,商品個数をカウントし,差分がないかどうかが判定され,問題なければそのままゲートを通過できる。
しかし,商品をカウントする方法がなかなかない。全商品にタグを付けていれば無線でトレースしてカウントできるが,一般消費財では現実的ではない。結局は,QRコードの再読み込みやカメラによる判断となる。
つまり,棚の重さセンサーに加えて,カゴの重さセンサーやQRコード読み取り,天井からの監視カメラによるカウント,そしてレジでの重さセンサーとカメラによるカウントをセットしなければならない。システムの構築も大変だし,精度が十分という保証もない。
人間の監視においても,あらかじめ不審な行動を予測したうえで現行犯として捕まえるしか方法がない。専門のGメンと呼ばれる人以外の店員がなかなかできることではない。
有人レジに戻しても,店内での万引そのものを防ぐことはできないが,店内監視も甘い状態でセルフレジとの組み合わせは,万引の温床にもなりかねないように思える。
かつて,日立製作所が開発した「ミューチップ」という超小型のICタグが話題になったことがあった(https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/030902a_030902a.pdf 2003/9/2)。0.4mm角という指先でゴマ粒よりも小さな薄型チップで,1つの応用としてあらかじめ紙に漉き込んでおけば,書籍を作った際の1冊単位での個別認証が可能になる,というもので,万引防止に役立てられるというものだった。残念ながら,その後2015年には読み取り装置の販売も中止となり,市場を作ることはできなかった(RFIDタグへの熱狂と失望 https://www.tel.co.jp/museum/magazine/public/140530_topics_06/02.html)。
空港の搭乗口での持ち物チェックでも, 荷物のX線検査と人体の金属探知ゲートの二重のチェックをしたとしても,たとえばセラミック製のナイフやプラスチック製の3Dプリンター作成のピストルなどの危険物がスルーしてしまう可能性は否定できない。そこに係員がいたとしても,見抜けないケースもある。
セルフレジは性善説,空港搭乗口は性悪説であり,セルフレジを性悪説で否定することはあまり建設的ではない。しかし,個人を特定した上で精算するようにすれば,抑止力にはなりうる。ここで役に立つはずなのが,マイナンバーカードである。レジでまずマイナンバーカードを読み込ませ,可能なら顔認証で本人確認をする。その後,レジでの精算をし,レシートのQRカードをゲートに読み込ませて初めて退場できる,という 流れである。
商品のスキャン漏れを防ぐには,ベルトコンベア方式の商品認識装置の中に個別に投入し,全面スキャンでバーコードを読み取って個数カウントと金額計算をする。コンベアの出口でロボットが商品を整理するといった仕組みが望ましい。ベルトコンベアをループ状にして,スキャン後の商品を客が取り出してエコバッグに入れる,というのもコンパクト化は可能だが,これだとスキャンしない商品が出てくる危険性もある。
どうやっても,万引の可能性を払拭できない。やはり個人の特定と,有人レジの組み合わせが必要ではないだろうか。まあ,レジ係が不正を働くという危険性もあるので,ベルトコンベア式スキャナーも必要かもしれない。そうすると,スーパーマーケットや100円ショップのような薄利多売ショップの投資は増え,一方で面倒さを嫌って顧客数は減ってしまい,ダブルパンチになって経営が苦しくなる。結局,万引による損を必要悪として容認してしまうという流れになってしまうのだろうか。どうせ,警備員を配置しなければ,ゲートの強制突破をする顧客も出てくるから,その場で犯罪を防ぎようがないことになる。
日本はまだ性善説が9割は通るが,他国では店舗への入店,退店をチェックする警備員を配置し,犯罪者を力づくで取り押さえることも現実である。なんだか悲しくなってくるが,日本の無人販売店での万引,窃盗が跡を絶たないことを考えると,設備投資に対する補助金の設定なども必要になってくるかもしれない。