国道などの道路では,クルマの標準法定速度は時速60kmである。市街地は30kmに制限される。もともとは時速100kmは出せる乗用車やオートバイが基準になっている。
高速道路も標準では時速100km制限で,一部で120km区間がある。これも乗用車やオートバイが基準となっている。
これまでの規格では,速度制限があるのは原動機付き自転車(原付)で,一般道では時速30kmまで。言うまでもなく高速道路は走れない。しかも,実際に時速はどんなに走っても50kmぐらいしか出ない。一方,排気量125ccの小型バイクは,スピードは100km出せる能力はあるが,高速道路を走ることはできない。
いずれも,車体の持つ走行能力から,走り方が規定されている。走行能力の低いクルマは,速い道を走ってはいけないのである。
筆者は,社会人になって一人暮らしを始めたときには乗り物がなかった。都内への通勤は電車を使っていたので,自転車すら必要なかったからである。1年ほど経って少し余裕ができたが,クルマを所持する余裕はなかった。そこで,まず入手したのが原付バイクだった。一般道ではそれほど問題なかったのだが,加速力が足りないのが頼りなかった。実際,路肩に停まっているクルマを避けようとして車線中央に寄って抜かそうとしたのだが,スピードが十分に出ず,後方から迫ってくるクルマと接触しそうになり,慌ててブレーキを掛けたところ,車輪が滑って転倒した(幸い,横滑りしたため,身体が地面に触れることなく,また車体がひっくり返ることもなく,また停車しているクルマに突っ込む5m手前で停まって,ケガも相手への破損もなかった)。
つまり,その当時でも原付バイクは一般道路でも運転者がケガをする可能性がある危険な乗り物だった。現在でも,50ccスクーターなどの原付バイクは,非力な面があり,一般車と並んで走るには危険な乗り物であると言える。もちろん,車道しか走れないので,クルマからは逃げようがない。
一方,電動キックボードは,車道走行時は時速20kmしか出ない。原付バイクよりも加速能力も最高速度も遅い。基本は,クルマと張り合うことはできないと認識してブレーキを掛けて身の安全を図るので事故は起きにくいとも言えるが,ヘルメットもなし,免許証もなし,で走行できるとすると,交通ルールへの認識度はさらに低く,無茶な運転をしかねない。
ところが,電動キックボードは歩道走行ができる。時速6kmの歩道モードにすることが前提だが,歩道モードにしている場面を見たことがない。乗り物に乗れば,速く移動したくなるのが人情である。わざわざ凸凹の多い歩道を走って,歩行者との接触の危険を冒すよりは,より平らで走りやすい車道を選んでスイスイ走るだろう。
ここに来て,自転車の走行ルールが「原則は車道通行」となったので,実はビックリしているのである。原付バイクでも危険,電動キックボードでも危険,そんな車道を自転車が走るのが原則で,自転車通行が許可された歩道以外は走行してはいけない,というルールである。
ロードバイクのようにスピードが出せる自転車なら,車道走行の方がスピードも出せるし安全な面もある。多くのサイクリストはヘルメットをきちんと着用している。しかし,ママチャリとも呼ばれる一般車はスピードが出ないし,女性なら子供を乗せて走ることも多い。なのに「原則は車道走行」というのはいかに荒っぽすぎる。
もっとも,「歩道の“普通の”自転車走行は,青切符は切られない」と考えていい警察庁の「自転車ルールブック」を見つけた - jeyseni's diary (2026/2/21)で書いたように,普通の自転車なら歩道を走っても,注意はされるが罰金は取られないはずである。しかし,注意・指導されるのは心外である。文句を言われないためには,車道を走らなければならず,スピードを出すこともできないので,実に危険である。
日本の道路は,クルマ優先である。クルマの運転者も,時間もお金を掛けて免許証を取得しており,自分の方がエライと思っている。運転中に,バイクは自転車,電動キックボードが周囲を走っていれば,迷惑に感じる。自転車走行帯があっても,自転車がルールを守らなければイライラしてしまう。
2026年4月からの自転車に対する青切符対応について,世の中からは反対意見が多く寄せられているが,結局何の変更もなく,実施に向けて突っ走っている。筆者は「普通の自転車なら歩道を走行しても,注意はされても罰金は課されない」(警視庁・「自転車歩道走行ルール」2025年9月)を盾に抗議しようと思っているが,気の弱い方は黙って青切符に従ってしまうかもしれない。
つまり,やはり日本における今回の自転車の走行ルールそのものが,おかしいのは明白である。道路整備もきちんとしない間に,ルールばかり決めるのは本末転倒と言わざるをえない。
法律を施行するならするで,自転車乗りはとりあえずルールに従うとして,きちんとクルマ用と自転車/電動キックボード用の車線を完全分離する必要があることを認識してもらいたいのである。