2026/4/1に始まった自転車への青切符制度。自転車乗りである筆者は,当面は乗ることを控える決意をした。どこで何にイチャモンを付けられるか,分かったものではないからである。歩道通行可能な場合でも,暴走するわけではなく,歩行者の横は徐行して通るのが当たり前の安全運転をしてきたと自負しているが,「はい,それは危険行為」と相手の基準で判断されるのがいかにも歯がゆいからである。
一方,クルマ乗りでもある筆者からすると,車道を走る自転車や特定小型原動機付自転車(電動キックボードなど)は,これまでの自動二輪や原付バイク以上に接触の危険を感じたことを報告しておきたい。
そもそも,自転車を含む二輪車が安定して走るには,スピードと重さが必要なことは物理の「慣性の法則」を知っていれば理解できるはずである。走り始めは不安定だが,スピードが上がるにつれて安定する。コマが安定するのと同じ原理である。重心が下にあれば安定する。重さ60kgもの人間が乗っても,車両そのものの重量があれば,重心は低く保てる。小型バイクより大型バイクの方が安定しているのは自明の理である。ただし,いったんバランスを崩せば,大型バイクを倒さないように支えるのはコツがいる。そのための「一本橋」走行練習であり,実技検定試験での合格が求められる。筆者は中型二輪限定免許を所持し,かつては250ccバイクに乗っていたが,教習所では400ccクラスで練習・検定を受けた。明らかに重いモデルである。
原付50ccを乗っていたときは,停車時にバランスを崩して車体を倒したことが何度かあったが,250ccバイクでは一度も倒したことがない。そもそも自重があるため,左右に重心が崩れにくいからである。
これらに対して,自転車はせいぜい重さが10kg程度。その上に体重60kgの人間が乗ると,全体の重心は高くなる。特に走り始めのスピードが出ていないときは不安定である。しかも,ペダルを左右交互に踏み込むので,中心軸より離れたところで横方向の分力が働く。これも左右のバランスが崩れる要因である。
電動キックボードは,重さが20kgで本体の重心は低くなっているが,そこに立った姿勢で人間が乗るのだから,全体の重心は高い。しかもなぜかハンドルの幅が極端に狭い。左右のバランスを取るのに腕を広げた方が安定するのは,綱渡りの原理と同じである。ロードバイクのように,風の抵抗を減らす目的でハンドルの幅を狭くするのは理にかなっているが,自転車や電動キックボードでハンドルの幅が狭いのは,物理の法則に反している設計である。
こうした発進時や低速でのバランスの悪い自転車や電動キックボードが,こぞって車道に降りてきた。クルマのドライバーからすると,これまではバイクや原付に注意していればよかったのだが,さらに練習や検定試験を受けたことのない自転車や電動キックボードドライバーがクルマの横をすり抜ける状況が増えた。
自転車や電動キックボードのバランスが悪いことを警察も認識していると見えて,「自転車や電動キックボードの横をすり抜ける際は,相手が気づいている場合は1m,気づいていないと思われる場合は1.5mあけて徐行で走ること」が求められ,これに違反すると反則金対象になるという。軽く接触しただけで転倒してしまうと認識している証拠である。
軽量の原付(小型スクーターなど)も安定性は悪く,クルマとの接触で簡単に転倒してしまう。まして,自転車や電動キックボードは,ヘルメットも努力義務でしかない。接触転倒させたら大怪我をさせてしまう危険度がさらに高い。その責任度合いは,クルマ側が100%悪いという認定になることは明らかである。
自転車大国であるヨーロッパでは,車道,自転車道,歩道ときっちり分かれている。しかもその間に段差はない。日本のように歩道が一段高かったり,そこをクルマが出入りするために削ったりしているのは,誰の発案だろうか。明らかな設計ミスである。その歩道から自転車を「歩行者にとって危険な存在」として追い出すのが目的の今回の青切符制度は,今後は「クルマにとって危険な存在」にしてしまった。歩行者が自転車によって事故に巻き込まれるケースのほとんどは,すり抜け時に徐行しないことも含めた暴走による無謀運転である。これを取り締まらずに放置してきたことを反省することなく,逆にすべての自転車を車道に追い出して,今度はクルマが加害者になることを容認するような改悪制度である。
大至急,自転車道路を分離整備することを提案したい。歩道と街路樹を崩して車道と同じく平らにし,車道と自転車道,歩道に分け,自転車道と歩道の間にはガードレールを設ける。同時に電線は地中化する。これを基本として整備を図ってほしい。
このままでは,おそらく自転車の接触事故は増えてしまうのではないかと懸念する。筆者も,クルマにももはや乗りたくなくなってしまう。