昭和後半の居間は、テレビが中心にあり、チャンネル争いが普通だった。時間帯によって子供の時間、みんなの時間、そして大人の時間とほぼ明確に分かれていた。大人の時間が来れば子供たちは寝る時間となった。
ビデオレコーダーの登場で予約録画ができるようになると、この時間帯という概念が無くなった。それでも、再生するにはテレビしかないので、居間は時間帯によって子供中心だったり大人中心だったりした。
パソコンが普及し、DVDをパソコン上で再生できるようになると、レンタルビデオで借りた映画を好きな時間に好きな場所で視聴できるようになった。また、ワンセグという地上波テレビサービスの開始で、パソコンにアダプターを取り付けてテレビ視聴も可能になった。ワンセグはさらにカーナビに組み込まれ、ガラケーでも標準的に視聴できるようになった。
スマートフォン時代になって、環境が激変した。テレビを視聴するのは大人中心になった。子供はスマホでYouTubeやInstagram、Tiktokを見る。テレビは視ない。情報はSNSである。
レンタルビデオは減少し、動画のストリーミング配信かほとんどを占める。ビデオデッキもDVDデッキも無くなりつつある。Blu-rayですら、記録メディアの生産が打ち切られつつある。
これらの動きによって、我が家でも異変が起きている。家族が集まるリビングで、メンバーそれぞれがタブレットでドラマや映画をじっと視聴している状況がたびたび起きる。テレビ画面もゲーム機の再生になったり、スマホのストリーミングをシェアして再生したりしている。
画面はそれぞれの手元にあるから構わないが問題は音声である。2人が別々の内容を視ている場合、いずれかがイヤホンを使わざるを得ない。すると、用事ができた時の呼び掛けが聞こえないことになり、変なギクシャクした雰囲気になったりする。
これと同じことが、街中でも起こる。電車内や歩行中のイヤホン使用である。歩きスマホをする人はまず100%イヤホンをしている。歩きながらドラマを視たりして画面にも集中している。周囲への配慮などまったくない。
カバンが当たっていても濡れた傘が当たっていても気づかない。声を掛けてもイヤホンをして聞こえない。注意を聞こうとイヤホンを外す人もいない。
歩きスマホはやめるように呼び掛けされているが、そもそもイヤホン使用が前提なので、注意そのものも届かない。
かつて、ソニーがウオークマンを発売したとき、移動中に音楽が聴けるという画期的な状況が生まれた。このときも音楽に気を取られて周囲への配慮がなくなると指摘され、またヘッドフォンからの音漏れに対する批判があった。しかし、ウオークマンを使う若者に対する批判でもあった。いまや、傍若無人なのは若者だけでなく、大人まで含めてスマホ利用者全員に広がっている。
ケーブルのある有線イヤホンが減って,bluetooth無線イヤホンが増えている。しかもどんどん小型化して,着用していることが分からないモデルも増えている。注意しようと声がけしようとして,イヤホンが耳の穴に差し込まれていることに気づくと,声がけをやめてしまう気になってしまう。どうせ声がけしても聞こえないからである。
電車の中は,さまざまな情報収集のいいチャンスである。かつての新聞や雑誌,書籍に加えて,スマホでの文字情報や動画情報,イヤホンを使った音声・音楽情報へと進化し,情報収集の選択肢も幅も広くなった。それだけに,マナーも求めたい。
2026/4/1からスタートした自転車の「交通反則通告制度(青切符)」では,イヤホンの着用を厳しく禁止している。耳の穴に差し込まれているタイプはもちろんアウトだが,ヘルメット側に取り付けたインカム式や骨伝導式,さらにイヤカフ型などのオープンイヤータイプについては,おそらくグレーゾーンで,やらないに越したことはない。警察官からの呼びかけが聞こえない可能性もあるからである。
同様に,電車内や歩行中のイヤホンの使用にしても,密閉型やインナーイヤー型(カナル型)は禁止にすべきかもしれない。筆者はイヤカフ型を愛用している(イヤカフ型Bluetoothイヤホンが流行り--かなり先行した中華モデルを筆者は耳ナビ用に使用中 - jeyseni's diary 2024.11.23)が,電車内で使っている人はまだまだ少ない。車内騒音が大きいので,カナル型やさらにノイズキャンセル機能付きのイヤホン,またいまだに大型の密閉型ヘッドホンを使っている人も多い。まったく自分の世界に入り込んでしまっており,注意したら逆切れされそうである。
ちなみに筆者は,家の中では,絶対に聞きたくないお笑い番組(ダミ声タレント席巻 - jeyseni's diary 2019/7/7)がテレビで掛かっているときは自室に逃げるか,カナル型イヤホンでテレビ音を完全遮断して黙々とご飯を食べるかしているが,それ以外のテレビ番組や映画などが掛かっている場合はイヤカフ型で周囲の音も聞こえるようにしている。家族からの呼びかけに答えられなかった場合,後の祟りが恐ろしいからである。
かつてのウオークマン音害による「音ハラスメント」や,強いニオイによる「スメルハラスメント」に加えて,周囲への傍若無人の「エゴハラスメント」に対しても,「ないね!」と知らせられるアプリがあるといいのだが。