ここのところ,不思議な事件が続いている。2026年3月23日、京都で起きた義父による息子殺害事件と,5月6日、福島県郡山市の磐越道で部活の遠征でのマイクロバス事故である。
メディアの報道は,いずれも「憶測」であり,それをカバーするために犯罪の専門家や犯罪心理学の専門家を使って「可能性」ばかり説明する。警察からの発表がないので,確信報道ができないが,可能性についてさまざまなシナリオを作って,専門家にコメントを求める。視聴者はまったく納得の行かない番組を見せられることになる。
特にワイドショーは,素人のコメンテーターによるコメントで番組を盛り上げていくが,結局は真実が分からないままに時間だけ消費しているだけになっている。多くのMCが議論の煽り側に立っているのが,問題だと感じる。
事件や事故が起きて,被害者が見つからない,あるいは加害者が見つからない,原因が不明,あるいは誘拐事件の可能性,といった場合には,報道協定で箝口令が敷かれ,警察側からメディアに対して情報提供されるが報道は控えるように協定を結ぶことがある。たまにフライングをするメディアがあったりするが,一般には協定どおり報道を控えることになっている。
今回のケースでは,どちらかと言えば警察側はノーコメントを続けていたのではないかと考える。メディア側に何の情報も提供されていない段階で,メディアが取るべき行動は「取材」である。警察からの発表を指をくわえて待っているのではなく,独自のルートで情報を集める。何かそういう記者の「熱さ」のようなものがまったく感じられないのである。
昨今は,へたに情報を発信すると,それに尾ひれがついて炎上したり,またさらなるニセ情報として一気に拡散したりする。事情を知らない人が何千件も返信を発信したりする。恐ろしいほど思考行動過程が単純化していて,情報の暴走を止めることができないのがSNSの世界の恐ろしいところである。
メディア側も,そういう炎上を恐れて,警察発表だけを発信するだけになっているように思える。何か別ルートでの取材ができるのではないかと,筆者は感じるのである。
一方で,このSNSを最大限利用していると思われるのが,アメリカのトランプ大統領である。記者発表も,メディアインタビューもなしに,どんどん発信される。このブログと同様,ファクトチェックが事前に入るわけでもなく,公式見解としてフォロワーに伝わる。メディアもこのSNS情報を常にウオッチして,いち早くメディアに発信する。完全に大統領に情報操作されているように思える。
CNN創設者のテッド・ターナー氏が死去、87歳 ケーブルテレビニュースのパイオニア - CNN.co.jp (2026/5/8)というニュースが入ってきた。メディアも新聞だけの時代からラジオ,テレビとどんどん進化し,電線で地域をまとめたケーブルテレビ,光ファイバーでつないだインターネット,そして無線の電話回線を使ったSNSへと展開しているが,情報発信者が「不特定多数」になることで,情報の質がどんどん低下していると筆者は感じる。放送権を取得して情報発信するテレビが,唯一の歯止めにならなければならないのが,すべて後追い報道になっているように見えてしまっている。
かつて,スクープを狙う週刊誌・写真週刊誌が跳梁跋扈して,大手メディアが翻弄されていた時代があった。いまや,街中に動画録画やスチール撮影ができるスマートフォンが溢れ,既存メディアが巷のインターネット情報をウオッチして情報収集するような時代になってしまった。独自の取材ルートやネタ元を使った情報収集・発信をする気骨あるジャーナリストが不在になってしまったような気がする。素人が紛争国に勝手に潜り込んで政治問題を起こすような時代である。既存メディアの取材力が,相手任せになり,取材力が低下しているのを感じる。しかも,番組そのものも憶測だけで進行させるようになっては,もはや視聴の価値がないように感じる。
政治部,社会部の記者に,「喝」を入れてほしい。