昭和の戦後生まれの筆者にとって,アルバイトは身近な存在ではなかった。思い出す限り,当時のバイトと言えば新聞配達ぐらいだった。「新聞少年」という歌謡曲が歌われたのが1966年。それ以前の1962年に「新聞配達の日・新聞少年の日」(毎年10月15日〜21日の「新聞週間」期間中の日曜日)という記念日が制定されている。「当時配達業務の主力を担っていた少年たちの労をねぎらい、広く一般に理解を求める目的で設けられました」(日本新聞協会)とある。
歌謡曲「新聞少年」の歌詞では「あだなは朝刊太郎」となっている。少年の年齢は高校2年生という設定のようである。1947年3月27日に成立し,4月7日に交付された労働基準法(労基法)では,小学生・中学生の労働は禁止され,労働できるのは高校1年生(15歳の誕生日以降)と定められている。しかし,午後8時から午前5時までの間の就業は深夜業として禁止されているので,18歳未満の高校生が朝刊配達をすることはできない(労基法61)。なんとなく歌詞が矛盾しているようにも思える。
筆者は高校時代はバイトをしていないし,大学時代も家庭教師を少しした程度だった。別に実家が裕福なわけでもなかったし,通学に片道2時間も掛かったのでバイトどころではなかった。2年生から大学の近くで下宿するようになってからも,学業に使える時間が増えたと思って一生懸命勉強した。遊ぶこともなかったので,実家からのこずかいだけで十分生活できていた。ちなみに,高校も大学も部活やサークル活動はしていない。
ところが子供の世代になった現在,飲食店を中心に高校生のバイト活動が当たり前のようになっている。逆に,新聞配達は夕刊紙が無くなったため,高校生でも募集が無くなっていると思われる。
アルバイトの労働力は,あらゆる業態でもはや不可欠になっている。長期・中期だけでなく,短期さらに隙間時間単位で募集するスポットバイトを使う企業・店舗も増えている。逆に,スポットバイトだと担当者が毎回変わったり,業務も毎回違ったりすることから,曜日固定,時間固定などのレギュラーバイトの募集も盛んである。
それにしても高校生と言えば,勉強も部活も習い事もいろいろある上に,多くの生徒が大学受験という1つの目標を持っている。おまけにゲーム機やスマートフォンなども当たり前に使うようになり,リアルなカードゲームなどとともに課金ゲームなども勝手にするようになっては,親からの小遣いだけでは足りないということなのだろうか。
大学生にもなれば,将来の進路を決める参考としての体験バイトという位置づけもできるが,高校生の場合は,社会勉強とはいうもののどちらかと言えば労働力を搾取されているようにも感じる。また夜間のバイトでは,身の危険に見舞われる確率も高くなる。
バイト募集のWebサイトやスマホアプリは10以上もあり,片っ端から登録してしまう傾向もある。かつては知り合いの紹介といった案件しかなかったが,現在はシステマチックに絞り込んだりできる。それだけに,怪しい闇バイトへと導かれる危険性も高まっている。栃木県で起きた強盗殺人事件(少年ら、夫婦に脅されたか 「スマホで指示」の供述も 強盗殺人事件:朝日新聞 2026/5/20)の実行犯となった高校生4人も,割のいいバイトという触れ込みで足を踏み込み,家族への危害という脅しに屈したともされている。
少なくとも,高校生は勉強にスポーツに部活に,そして友達作りに青春を謳歌してほしい。大人にあしらわれるようなバイト,しかもゲームや推し活などにのめり込んで不相応な金額になる前に,理性を持って立ち止まってほしい。
教育の崩壊が起きている現在,経済が悪いのか,親が悪いのか,原因は複雑に入り組んでいると思うが,まず大人が襟を正して誇りを持って仕事ができる社会を立て直さなければ,子供を救うことができないと思う。手当を増やすといった小手先の政治では,日本の将来はない。