指差し確認,あるいは指差し呼称というのがある。主に鉄道運行上の安全確保のために,行われてきた。
仕事をする上でも,たとえばメールを発信する前に,宛先,添付ファイルなどが適切かどうか,指差し確認した方がいい場合がある。
先日,高齢者の免許更新のための実技講習の場面が放送されていた。70歳台の女性,80歳台の男性の運転講習で,一時停止個所で停まらなかったり,右左折で縁石に乗り上げたりと,見ていて信じられなかった。筆者にとっても,この年齢までの期間はあと5年で達する。自分がこんな状況になるとは,信じられないが,急に認知機能が衰えないとも限らない。
そこで,少しでもこんな恥ずかしい状況にならないように,運転時にいろいろな動作で指差し確認をすることにした。もちろん,手をハンドルから離すわけではなく,口で声に出して確認する声出し確認である。
横断歩道で歩行者が待っていないかどうかの確認,信号で横切るクルマがないことの確認,赤信号から青信号に変わった時の確認など,主に歩行者への確認事項を,声を出して確認することで,自信を持ってアクセルが踏めることが分かった。
ただ,スピードが出ていると,指差し確認の時間をしている間に目標に接近してしまう。それに一度気づくと,スピードを少し控えめにするような運転になる。これも安全側に寄せられていると思うのである。
ただし,指差し確認をすることに注意が行き過ぎると,その周囲の確認が疎かになる危険性も感じている。対向車の位置や速度,前を走る自転車の動きなど,読めない動きに対する瞬時の判断ができなくては,クルマを運転する資格がない。
しかも,指差し確認の判定時間は,瞬時の判断時間に比べて長くかかる。前者が1秒,後者が0.6秒として,通常の0.6秒の判断でもクルマが停まるのに20mは移動してしまうから,1.0秒だとその倍は動いてしまう危険性もある。
クルマの運転は,まさに瞬時の判断だなと改めて思う。指差し確認は,もしかしたらクルマだけでなく,歩行時や自転車などでより有効かもしれない。
クルマのドライブと言えば,同乗者との会話によって緊張がほぐれ,滑らかな運転ができるように思う。1人で乗っていると,他人の運転が気になって,つい自分のクルマの運転への注意が疎かになる傾向もある。その自戒の意味も込めて,また同乗者がいる場合でも,気をつけて運転しているということをアピールして安心してもらう意味でも,指差し確認,声出し確認の努力をしてみようと思う。言葉を発することは,ボケ防止にもなると思うからである。