筆者には,スマホやEVのリチウムイオンバッテリーのことがよく分かっていない。そもそも,バッテリーであろうが乾電池であろうが,化学反応によって電圧差が生じ,電気が流せるようになるのだが,この化学反応が極めて速度も遅く,常に同じ電圧,同じ電流を供給できるわけではない。
充電も不安定である。100%充電したらバッテリーの寿命が短くなるとも言われている。高速充電は時代のニーズだが,高速充電はバッテリーに負担がかかるのではないか,とも思われるのだが,いままで3時間ぐらいはかかっていた充電が1時間ぐらいで終わるのはありがたいとも言える。
スマホが登場するまでは,ガラケーの充電器は各キャリア各様で,それぞれのキャリア専用の充電器しか使えなかった。コネクタも独特の形状をしていた。
スマホの登場で,Androidではまずmicro USBコネクタが標準となり,現在はType Cコネクタが標準となっている。一方iPhoneではlightningコネクタを採用し続けてきたが,ここに来てType Cコネクタとの併用,あるいは全面移行が行われている。
充電池の大容量化に伴い,充電器の電流値がどんどん上がっている。電圧は,USBコネクターの互換性から5Vになっているが,電流は当初の1Aから2.1A,そして現在は4AのPD20Wも登場している。PDはPower Deliveryの略で,急速充電できる。充電池側の回路の工夫で高速充電を実現しているようである。
充電をしている間,バッテリーは温度が上昇する。急速充電すると,さらに温度が上がることが予想される。
バッテリーの充電・放電は,化学反応である。可逆的反応なはずなのだが,材料は何らかの劣化を起こす。これが繰り返されると,充電容量が減ったり,放電速度が速くなったりする。急速充電で温度が上がれば,材料の劣化も促進されると考えるのが普通である。
最近は,「100%の満充電すると,バッテリーが劣化する」と盛んに言われ,スマホでも80%で充電が止まるようになっているものもある。しかし,残容量が20%になると「すぐに充電してください」とメッセージが出る。低消費電力モードに切り替わって画面の明るさを抑えたり,画面ON時間を短くしたりし,さらに超消費電力モードだと,通信を制御したり,使えるアプリを制御したりする。それで5%ぐらいまで使うこともできなくもない。ただ,普通に使えるのが20%~80%だとすると,本来の容量の2/3しか使えないことになる。
通常は,充電回数が500回である。毎日は充電しないとしても,2年で寿命になるという計算になる。だいたい,スマホの新機種への更新が2年なので,電池交換ができなくなっているのとだいたい一致する。しかし,なんだかもったいない気がする。
EVだと,普通の人なら1週間に1回ぐらいの充電だろうか。走行距離を考えると,80%充電ではなく100%充電をするだろう。しかも,20%とか10%までギリギリまで充電しない人もあまりいないだろう。たとえば50%,あるいは60%ぐらいになれば充電ステーションにつなぐ。これは,バッテリーの寿命をさらに短くしていることになる。
バッテリーのリサイクルも進んでいない。EV用なら製造メーカーも限られているが,スマホ用の内蔵バッテリーも,モバイルバッテリーも,日本だけでなく,主に中国のバッテリーも多く使われている。形状も千差万別。中の構造も不明。使い方によっては,パッケージが膨れてしまっているバッテリーもある。これを分解して部品単位に分離し,リサイクルを図ろうというリサイクル業者もまずないだろう。結局はリサイクルと言って廃バッテリーを集めては,不法投機,不法埋め立て,不法焼却などでほとんど資源化されていないだろう。
1個のバッテリーの利用時間は,どんどん短くなっているのではないだろうか。しかも1個のバッテリーの容量は大きくなっている。貴重な材料をより多く使いながら,利用時間が短くなっているのではないか。つまり,同じ量の材料に換算すると,取り出せるエネルギーが減っているのではないかと思うのである。
しかも,材料が増えた分,廃棄される量も増える。その分,多くの材料を使って,新しいバッテリーを作らなければならない。やはり,どこかで材料は枯渇するのではないかと考える。
日本や中国で開発が進んでいる固体電解質乾電池は,これの解決策になるのだろうか。筆者は,ここは化学反応ではなく,物理現象を使うキャパシターの登場を期待したいところである。コンデンサーの原理なので,ごく短時間(おそらく数秒)で満充電でき,劣化もほとんどないからである。
乾電池ですら,結局は大量に廃棄されている。バッテリーは便利だが,どう考えても今の時代に合っていないと思う。
海外には,エネルギーの貯蔵技術として,バッテリーではなく,重力エネルギーに変換したり,温度エネルギー(砂を温めて保管する)に変換したり,空気圧エネルギーに変換したりする設備が作られている。いいアイディアだと思う。日本にはそういう発想がない。揚水発電以外はバッテリーだけである。
バッテリーの適切な回収場所がないので,筆者の部屋にはガラケー時代のバッテリーも多数残っている。責任を持ってリサイクルしてくれる場所が見つからないのである。
このまま,ゴミとしていずれは処分されてしまうのだろうか。同じような運命のバッテリーが,世の中のほとんどではないかと思うのである。