jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

重症直前の「地球さん」のための“ワクチン”開発--環境の自己回復はそろそろ限界

生き物には,自己回復能力がある。いわゆる生命力である。傷を受けても病気になっても,回復する力がある。回復力を高めるための知恵も持っている。生命というのは,ものすごい設計をされたものだと思う。もちろん,すべて100%回復できずに死ぬパターンもある。環境に適応した種が生き残って来た壮大なストーリーがそこにある。

 人類が作り上げた文明の成果物は,ほぼすべて崩壊してきた。人類はそれを保存するための技術も発明してきたが,生き物ではない成果物は進化しない。木造建築物でも1000年はもたない。○○の大修理などで部材を徹底的に入れ替えて形を継承していくのがせいぜいで,一般住宅など,2世代50年ももてばいい方である。戦後の耐震ビルや道路,橋,堤防などの社会インフラですら,50年でほぼ限界に達している。その修復はほとんど不可能に近い。

 結局,人類は地球のあらゆる資源を活用して文明を築いてきたのだが,「活かして」というより「搾取して」人類だけが生き残ろうとしてきた歴史が見える。1850年ごろの産業革命以降の「人新世(アントロポシーン)」は,これをさらに急拡大させた。

 動力と電気の発明がその最大の革命である。地球が蓄積してきたエネルギーをすべて短期間に放出して,エンジンとモーターを作り上げた。自動で移動する手段と,常に明るい照明のある生活を手に入れた。また,その他のあらゆる文明に必要なモノづくりのためのエネルギーを使い,人類のみが快適な生活ができる世界を作ってきた。

 その反作用が,筆者の時代までは「公害」「大気汚染」「海洋汚染」であった。人類自身が被害を受けることになったこの文明に対し,これを抑える技術も生み出していった。しかし,おカネのない地域では抑える技術に使うおカネはなく,延々と公害と汚染を撒き散らし続けている。先進国では人体に危険をわかったものは使わない,という方向を選ぶが,後進国にはこの情報が伝わらない。「なぜ先進国だけが恩恵を享受するのか」と反発して使い続ける。いずれ,その悪影響を知ってやめるだろうという希望的観測はなかなか起こらず,逆に不幸な環境が周辺地域に拡大を続け,先進国や支配階級がその恩恵を搾取する形になっている。

 環境破壊が広がるのと同時に,動力と電気という「文明の利器」も広がり,また人類の生命を維持する技術である「医療」も広がっている。しかしこれまで失われてきた生命を生き延びさせる医療技術によって,後進地域においても人口爆発を招いている。筆者が生まれたころに30億人と言われた世界人口が,50年で70億人と倍増している。これによって,必要なエネルギーはさらに増える。必要な食糧もさらに増える。

 筆者の時代に開発された最も画期的な発明品は,原子力発電である。ウランという限られた資源だが,超高密度に蓄えられた原子核エネルギーをここから取り出して利用することで,本来は環境に影響を与えない発電技術なのである。実際,軍需技術として桁違いの資金をつぎ込んで開発した原子力潜水艦は,ほぼ予想どおりの性能を発揮している。

 ただ,商用発電に持ち込む際,最終的には「おカネをケチる」企業の経済感覚のために,安全率がおろそかにされた。格納容器も,厚さ1mのコンクリートで囲えば安全とされたが,本当は10mぐらいの厚さは必要だった。もしその安全率どおり作っていたとしても,50年後までその性能を維持できるという保証がなかったのは,すべての社会インフラと同様である。最終的に「臭いモノに蓋」という判断が下ったが,厄介なことに発電させなくても「生き続けて」いるのは,福島第一原発のその後を見ればわかる。

 さらに,「地上に太陽を作る」という核融合技術も発明され,これが「未来のエネルギー源」と言われたが,いまだに実現できていない。素粒子のプラズマ状態を維持するために注入する電力エネルギーの割に,取り出せるエネルギーがわずかにプラスになるだけで,長い目で見れば永遠のエネルギーといえるが,その制御と運用の知恵ができる前に,開発が破綻してしまった。「常温核融合」なるマユツバ物の研究発表によって,核融合自身がウソっぽく見られたともいえる。

 結局人類は,火を使い始めたころと何ら変わらずに,石炭と石油を山のように「燃やして」生き延びており,これが地球温暖化という「目に見えない公害」を引き起こしている。かつての「公害」はその地域の住民だけが被害を受けていたので,対症療法で間に合わせてこられたが,地球温暖化は,「地球さん」という1個の大きな生命体の自己回復能力を脅かしている。

 たまたま,氷河期に生成された氷が,南極大陸北極海,そして緯度の高い国の地下に氷河やツンドラとして蓄えられていたために,地球の温暖化の進行が抑えられていた。すでに北極海の海氷やグリーンランドの氷河,シベリアのツンドラなどが大規模に解け始めており,地球自身が持っていた冷却能力が一気に減りつつある。

 地球の温度が上がることで,さらにこの氷解が進むと同時に,海底に閉じ込められていたメタンの氷,メタンハイドレートも解けてメタンガスが大量に放出されると,メタンの温暖化効果が二酸化炭素の30倍もあることから,二酸化炭素を問題にしている現在の地球温暖化対策ではまったく間に合わなくなる。

 本来なら,どこかのバカな政治家が言ったように,温暖化によって作物を生育できる地域が増えるというメリットもないわけではない。しかし,実際は海水面の上昇によって陸地が狭まり,人類が住みやすい平地が減り,当然のように農地も減ってしまう。これまでの荒れ地を開拓して農地にして生産を上げる前に,食料供給も限界が来る。

 現在の地球温暖化は,「地球さん」が熱を出しているのにどんどん毛布をかけ,熱を下げる氷枕もどんどん解けているような,重病人のような状態である。COVID-19に例えるのは不謹慎ではあるが,2年前には本当に打つ手がなかったこのウイルスに対して,人類はECMO(人工心肺装置)とmRNAワクチン,さらに抗体カクテル療法などの治療法を開発した。最終的には個人の自己回復能力を引き出すための治療法だが,重症化した患者をすべて回復させることは難しい。重症に至る前に食い止めるワクチンと,行動制限が,COVID-19拡散に効果を上げていることは確かである。しかし,相手も次々と変異株に進化する。mRNAワクチンが効かなくなる日が来るかもしれない。

 しかし,「地球さん」も重症化直前の危機的な状態にある。「地球さん」の温暖化に対する“ワクチン”はなんだろうか。先進国に行動制限はどこまでかけられるか,また同じ行動制限を後進国にかけて不平等が起きないか,など,両立できる道を選ぶのが極めて困難なことにある。

 12月に入って,急に季節らしい寒さになった日本で,このブログをまとめる際,部屋には電気を使った暖房を入れている。何とも矛盾した行動を取っていると,筆者自身も感じている。電気も水も,いわゆるライフラインを通じて際限なく利用できる便利さが,先進国の感覚を麻痺させているとも言える。

 おそらく,次にやってくる大地震によって,日本の経済は壊滅状態になる可能性がある。首都圏は,関東大震災のあと100年以上も大地震に遭遇していない。ライフライン,交通インフラ,そしてビルなど,おそらく想定以上の被害を受けて壊滅するのではないだろうか。数十年にわたってようやく構築してきた何層もの都市インフラを,再生してまで,東京に固執する理由はあるだろうか。

 ここまで考えると,1つの答えが見えてくる。ライフラインでつながったインフラは,とにかく「もろい」し,それを維持するためのエネルギーは,作ったときの数倍,さらに再構築するにも数倍のエネルギーを要する。ならば,自己完結型の生活に戻し,一極集中をやめることである。

 このとき,通信インフラだけは充実させる。メタル回線ではなく光ファイバ,あるいは無線ネットワークでつなぐ。通信料金はほぼゼロとし,その分,電力料金や水道料金を10倍ぐらいに上げる。すると人々はどうするかと言えば,電気や水を節約するようになる。自家発電であれば電気代もかからない。キャンプ状態である。あるいは「北の家族」状態と言ってもいい。分散した生活により,食料の自給も視野に入る。大災害があっても,あまり変わらない生活ができる。テレワークで仕事も継続できる。移動はカーシェアリング,物流は専門業者とドローンでもいい。人の密集がなくなれば,ドローンの活用も悪くない。

 電力の余りはないかもしれないが,二酸化炭素の排出を抑える政策と同時に,氷河やツンドラの再凍結化の工夫も必要ではないか。とにかく,「地球さん」の中で唯一熱を下げられるのは,これらの氷しかない。冷凍庫で製氷するのと同様,氷という冷却源を増やすことも,温暖化を食い止める1つの方法ではないか。

 福島第一原発の地下汚染水の流出を食い止めるための地下凍結技術が現実に使われている。電力をどれだけ使うかわからないが,とにかく全部融け出してしまう前に,ツンドラや氷河を再凍結させて,「氷嚢」をキープする必要もあるのではないか。あるいは,人工降雪機を何万と稼働させて,グリーンランドやシベリアに氷を溜め直すなどもありかもしれない。

 こうした対症療法とともに,エネルギー節約などの行動制限を人類全体が行うことも求められる。COVID-19でもワクチン接種率が100%にならない。ズルをするヤツはかならず1割はいる。プラスチックの使用を減らしなさいと呼びかけた場合は,おそらく「気持ちだけは協力」して少し実行する人が9割いたとしても,全面的に使用しない生活に戻せる人は1割しかいない。エネルギー消費も減らしなさいに協力する人は9割としても,ゼロにする人は1割しかいない。逆にこれまで贅沢三昧の生活をしてきたセレブ層は,まったく意に介せず,「自分たちは勝ち組,吠えているのは負け組」と何の行動も起こさない。国の指導者,政治家,企業経営者が基本的にほぼすべてがこのセレブ層なので,結局何も進まない。行動を起こした若者が迫害を受けたり拘束されたりするのも,すべてセレブ層が自分たちの生活が脅かされるのを恐れるからである。

 カネだけ出せばいい,というのが,これまでの先進国のやり方である。自分たちの生活を振り返って変えるという行動は起こさない。しかし,COVID-19でわかるように,世界が一致した行動を取らなければ,解決には向かわない。日本のマスク習慣という文化が世界に輸出されたのは,唯一の成功例である。これもWHOの呼びかけがなければ欧米諸国の人々がマスクを着けることなどなかったろう。結局,制限緩和とともにマスク習慣がなくなり,再拡大を招いているのだろうか。

 同様に,地球温暖化を止めるために,都市集中をやめ,電力の自給自足,自家用車の禁止,空中物流の強化,といった行動改革(マスクとロックダウンに相当)とともに,氷塊再生という対症療法的な技術の実行(ECMOや治療薬に相当),そしてワクチンや抗体カクテル療法に相当する重症化を防ぐためのもう1つの決定打がほしい。

 エネルギーを支配して世界を支配しようと目論んでいる米テスラ社のCEOイーロン・マスクに,宇宙旅行や電気自動車,真空チューブ鉄道などの寄り道をせず,エネルギー部門で一気に成果を出してくれることを望むしかないような気がする。