太陽光発電設備の太陽電池パネルをつなぐ電線が大量に盗まれている。電線の中にある銅線が高く売れるからである。円安の影響もあり,価格は高騰している。
しかも発電設備に使われる銅線なので,品質はピカイチ。太さも十分あり,高額で売買される。設置されるのが人の気配の少ない山の斜面や荒れた広い畑にあり,監視されることもない。堂々と犯行が行われている。
盗む方ももちろん問題だが,これを買い取る側も正直言えば同じ穴のムジナということなのだろうか。どこからこれだけの大量の電線を持って来たかに対して,不審を抱くのが普通だと思うが,「どうせ盗んできたんだろう」という思いで買い取る。買い取った電線はさらに高く転売される。
かつては 新聞紙や段ボール箱などのリサイクル用の紙ゴミが高く取り引きされたが,今は価格も低迷しており,取り扱う業者も減り,リサイクルゴミの日に前もって持ち去る人物もほとんどいなくなった。現在は,銅線,金属クズなどが高値で取り引きされる。
だからと言って,道路のグレーチングや,公園の水道の蛇口,消火栓,果ては神社のお清め用の龍の彫り物や記念碑,橋のネームプレートなど,あらゆる金属が盗難の対象になっている。
海外から日本に働きに来ている人たちの中に,この金物窃盗をする人は確かにいる。しかし,ここのところ起きている金物窃盗犯罪は,日本人が犯人のケースがほとんどである。ほかにも,果物などの農作物や,盆栽など,売れそうなものを盗んでいく犯罪が後を絶たない。
海外でも,金物を盗んで金にする犯罪は多い。特に発展途上国では,金物そのものが貴重品である。きれいな水を求めているというので,水道設備を整えて提供してきたのに,数カ月後に確認したら,水道の蛇口がすべて持ち去られていた,という話もある。きれいな水という大事なものが得られたのに,それを利用するための蛇口を盗むというのは,明日の生活にも困るという現実があるのも事実なのだろう。
人のモノを盗むという犯罪は,盗まれた側の気持ちを考えられないほど余裕がなくなっている証拠である。犯罪を犯す前に,何か別の方法はないのだろうか。それほど困窮してしまっているのだろうか。
困窮の度合いからすれば,発展途上国では今日生きるだけでも精いっぱいという感覚がある。日本では,まだそこまでの困窮になるケースは少ないのではないかと思う。炊き出しや子供食堂といったボランティア活動も行われている。やはり働いてお金を稼ぐことが,人間には大切な義務だと思うのである。
昨今は,まともな就職ができず,1日1日を食つなぐような生き方をする人が増えている。その中で,金物の転売はある意味で安易に金になる。しかしそれは犯罪である。農作物の窃盗と転売も同様である。闇バイトも同じような流れで手を出してしまうのかもしれない。
これらの犯罪にはおそらく元締めがいて,実行犯はバイトである。SNSを使い,匿名で実行犯を操るという悪質な犯罪である。とりあえず,監視カメラの性能をさらに上げるようなシステムが必要だし,犯罪に至るまでのやり取りを追跡できる高度な情報システムも必要である。個人をもっと監視する仕組みが求められる社会になりつつある。厄介な時代である。
犯罪行為につながる電話やメールのやり取りを,もっと高度に分析できる仕組みが必要だろう。AIの利用もこういう分野に関しては優れていると思う。AIの使い方を誤ってはいけない。