jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

政治の駆け引きのすごさ--タフ・ニゴシエーションをもう一歩願う

ウクライナ情勢が一瞬の平穏を取り戻したかのように見える。マリウポリの製鉄所で抗戦していたウクライナ軍がロシアに投降し捕虜となったことで,製鉄所への攻撃はいったん止まり,ウクライナ南部・東部がロシアに制圧された形で均衡状態に入っている。

 ロシアにとっては,先に併合したクリミアまでの陸路が確保され,とりあえず1つの目的は達成した。一方,ウクライナは製鉄所にいた1000人以上の兵士の命をとりあえず生き残ってもらう道を選んだ。ロシア兵の捕虜との交換交渉が現在進んでいる。

 ウクライナの民間人にも多くの犠牲者が出たウクライナ侵攻だが,1人1人の命を守ることが重要なことは言うまでもない。日本が掲げる平和主義は,紛争ではなく議論で解決の道を探る,という意味では最も人間らしい考え方だが,北方領土竹島尖閣列島という他国との領土問題が戦後77年経った今も未解決なのは,いかに政治交渉が難しいかということを物語っている。

 このウクライナ侵攻のタイミングで,フィンランドスウェーデンNATO加盟を表明した。またアメリカのバイデン大統領が日本と韓国を訪問する。いずれもロシアをまた刺激する内容であり,ここに北朝鮮も加わってくる。ウクライナ侵攻で軍事力にかなりのダメージを受けたとされるロシアにとって,フィンランドとの国境1300kmとウクライナとの国境を同時に守ることは物理的に困難が予想される。

 マリウポリの製鉄所の最後の攻撃で,殺傷能力の高いナパーム弾や焼夷弾を使ったとされる。さらに燃料気化爆弾が使われた可能性もあるとされている。映像で見ても,クラスター爆弾のように広範囲に被害を及ぼす兵器が使われたことは間違いない。ただ,化学兵器生物兵器,そして核兵器が使われなかったことは,1つの救いだったと思う。今後も使用されないことを望むばかりだが,戦力が極端に落ちているロシアにとって最終手段を使わないという保証はどこにもない。

 一方で,ロシアとウクライナからの食糧輸出が止まっていることで,アフリカを中心に数千万人の飢餓が進行するという懸念が発表されている。すでに,地球温暖化人口爆発の影響で食糧危機が叫ばれていたことに追い打ちがかかる。本当に真面目に取り組まなければ,人類は滅亡してしまうと改めて危機感を覚えるのである。

 日本でも食糧安全保障の提言が自民党から出されたというが,具体策は何もない。何をどう対策して,自給率を上げようというのだろうか。「今から,それぞれの地元に戻って,田んぼを耕してきます」という宣言ならともかく,相変わらずの上から目線でしかなく,予算を作ってそれをぶん取って地元に持ってくるだけ,という動きにしか見えない。

 まず,ヨーロッパの軍事均衡について,冷静な議論の場を作ることが,次の一手と考える。プーチン大統領にも冷静な判断をしてもらうために,ウクライナは東部・南部を手放す代わりに黒海へのルートは確保することを交渉する。この冷静な議論のために,スウェーデンフィンランドNATO加盟をいったん保留にすることも重要だと考える。

 とにかく今は,地球の危機であることにもう一度みんなの意識を目覚めさせなければならない。すべての国がまず自前で食糧を作って自給自足するためにどうすればいいかを考えよう。輸出・輸入は,為替リスクで一気に平衡が崩れる危険性がある。各国が努力して,一種の鎖国状態にならなければ,経済が不安定のままであり,再び世界大恐慌を招く恐れもある。

 日本は,植物工場,陸上養殖,そして水素燃焼発電の技術をもっと伸ばすとともに,世界に貢献できるような方策を取るべきではないか。海外からの観光客によるインバウンド需要だけを充てにするようでは,もはや終わりだと筆者は考える。

 そのための政治的な駆け引きが,日本は弱い。リアルの世界でもメタバースの世界でも,どうも日本は絶滅危惧種のように見えてしまう。岸田さん,もっと英語で発信してください。そうすれば,世界は振り向いてくれます。それが,タフ・ニゴシエーションに入るための第一歩だと思います。