戦後の高度成長期に,ベンチャー起業する若い人たちを「青年実業家」と呼んでいたのを思い出す。大企業の歯車になるのではなく,自ら市場を開拓して,財を成す意欲と,それに伴う膨大な収益が脚光を浴び,結婚相手のキーワードとして「三高(高身長,高学歴,高収入)」と並んで輝いていたように思う。
実業と言っても,若者に当初資金がないため,これに投資するファンドが組まれた。ファンドマネージャーなる金融界大企業の暗躍によってお金が動いたが,結局成功する実業は少なく,膨らんだカネがバブルとなり,それが弾けて一気に経済貧国に落ち込んだ。金融大企業も倒産して崩壊した。
現在は,この金融界でデイトレードなど個人ベースで活動する青年「虚」業家ばかりとなった。個人的には財を築いても,それはカネだけであり,何の「業(産業)」も生み出さない。要はバクチと変わらない。バクチで最終的に儲かるのは胴元であり,その胴元は海外にあるので,日本の財にはならない。
もう1つの虚業が,エンタテインメントである。かつては,レコード,CD,ビデオなどのモノを動かす情報だったが,いまやすべてデジタルでストリーミングでやり取りされる。動画に至っては,テレビや映画といった表の世界の下に,ネット動画という裏社会が拡大し,氷山と化している。裏社会なのでコントロールができない。ルールもない。やったもの勝ちの世界である。そこにアメリカで実業として活躍したGAFAが足を踏み込みつつある。従業員を大量に解雇して固定費を抑えても,まったく問題ない。GAFAのかつての青年実業家たちが虚業家として裏社会に入り込もうとしているだけである。
さて,ここからはどう動くかが,思案のしどころとなる。
考えてみると、虚業の実体は「転売」である。人件費分の費用を上乗せして次に送るだけで、何の付加価値もない。土地転がしも同じである。それをうまい言葉でいうと「サービス」ということになる。
サービス業、つまり第4次産業がGDP に寄与しない理由がここにある。頭を使ってモノを生み出さなければ国は豊かにならない。しかもその原料を海外に頼っていては、いつまでたっても転売ヤーでしかない。
エネルギーと食料を、これまで海外に頼っていたところから改めて、日本で材料を調達して海外に販売し、外貨とともに信頼を勝ち取ることこそ、現代の若者が目指す実業ではないだろうか。期待している。