ここのところ,テレビ番組をネタとしたブログをよく書いてしまっている。別にポイントを稼ごうというわけでもないのだが,残念ながらそれぞれの「専門家」の意見が優等生の答えでしかなく,何の解決にもなっていないことにモヤモヤしているからかもしれない。
今回はNHKスペシャル「もしも今核兵器が使われたら 初のシミュレーションが示す脅威」を視た感想になる。核兵器を一度使い始めると,連鎖が止まらなくなる。たとえ1往復の使用でも,環境や住民への放射線被害は想像以上になる。アメリカが北朝鮮のミサイル基地攻撃に2発の核兵器を使えば,そのしっぺ返しが日本に流れて来る。現在の核兵器では熱線,爆風,放射線のほかにさらに広い範囲に火災嵐が起きて逃げられずに死亡する人がさらに増える。大気圏外で核爆発を起こすことによる強烈な電磁波により,電子化社会のコンピュータや通信インフラ,記憶インフラが一瞬のうちに破壊される範囲が,ほぼ日本全土をカバーする。そのような情報を知ることができた。
しかし,結局は西側諸国の議論に過ぎない。先に手を出さないが,攻撃を受ければ躊躇することなく反撃する仕組みになっている。
「正当防衛」という言葉がある。相手が先に仕掛けて来たから,反撃して相手を殺してしまったが,そこに犯罪性はない,というような考え方だろう。しかし,一般のケンカで相手に殴られたとしても,自分はまず死なない。死なないから相手に対して反撃できる。相手からの攻撃が続かないように,相手を動かないようにする。生きたまま動かないようにできないから命を奪って動かないようにする。相手の力が圧倒的に強い場合に「正当防衛」が成り立つ,ということかもしれない。
核攻撃の場合,最前線の当事国だけでなく,その仲間国が次々に加わるから厄介である。最初に仕掛けるだろうという北朝鮮の場合,相手はいきなりアメリカになる。核兵器の数では桁違いにアメリカが有利だが,北朝鮮の地下軍事基地まで破壊することは困難と言われている。一方で,オープンなアメリカの都市が攻撃されれば,一般市民の被害は甚大である。さらにそこに中国やロシアが加われば,おそらくアメリカもマヒしてしまうだろう。とても1往復では終わらないし,ゲリラ戦にアメリカが弱いことは,ベトナム,アフガニスタンなどの戦いで勝てなかったことで証明されている。高性能兵器だけでスマートに戦おうというアメリカに対し,チープな兵器(神風特攻隊,自爆ドローンなど)も持ち出す小国,そして大量のドローン連携で一気に上陸できる中国などが相手だと,核兵器そのものの戦争抑止力は実に限定的である。しかし,おそらくロシアが抱える5000発以上の核弾頭は,老朽化によって維持できなくなりつつあるのではないかと推測する。ウクライナ紛争をきっかけに,とにかく国外にばらまきたいのではないか。そこで爆発するかどうかも極めて怪しいのではないか。
さて,今回の核戦争の話題では,ロシアがほとんど出てこなかった。シナリオ1が北朝鮮とアメリカ,シナリオ2が中国と台湾,アメリカ,韓国。このシナリオ2でほぼ世界全滅状態である。現在,戦闘の当事者であるロシアを刺激しない方がいいという意図が感じられる。
つまり,今回の話題の中心が,北朝鮮と中国であるように筆者には思えた。そこで気になったのが,福島第一原子力発電所の冷却処理水の海洋放出である。韓国も反対はしているが,なぜか北朝鮮と中国が猛烈に反対をしている。
核保有国である両国は,その原料を供給するために原子力発電所を稼働している。その冷却水には,トリチウムが含まれており,その濃度は福島からの処理水の数倍にもなる。それでも反対するのは,日本のトリチウムの排出を容認すると,自国からの核の拡散を自ら認める,つまり最終的には核兵器を使うことを積極的に肯定することになり,「核は自国を守るための抑止力である」と宣言していることに矛盾が生じるからなのではないか,と考えたのである。
漁業資源,ひいては世界全体へのトリチウム拡散に反対,と言っているのは単に表向きの理由である。事実,両国の原発からは大量のトリチウムが冷却水の放水に伴って日本海や東シナ海に日々放出されているからである。言わば「目くそ,鼻くそを笑う」である。もちろん,日本も海外の原発からの処理水中のトリチウム量を突いて「そっちの方が多い」と揚げ足を取っているのも情けない議論である。
原発を運転する限り,トリチウムの排出は避けられない。人間が安全に生きるためにプラスチックは無くならない。人間が豊かに暮らすためには大量の電気が必要であり,これを作るのに大量の二酸化炭素と大量の熱が放出され,地球温暖化はもはや止められない段階に入ってしまった。
国同士の「目くそ,鼻くそ」戦争・紛争・対立も低レベルに思えるし,そんな愛国心のない自由人がエンタテインメントやマネー,そして犯罪という別の価値基準の世界でどんどん拡大している。世界の警察は存在しない。その警察自身も統制が取れず,犯罪者を輩出している。
大人はすでに惰性で生きている。次の世代のことなど,考えていない。ならば若い世代に任せるしかないのかもしれない。問題意識の高い若者が,地域に活躍の場を見つけつつあるように思う。ただそれを個人や地域の成功ではなく,共有の輪を作って行ってほしい。
そう考えると,筆者が子供のころ参加したボーイスカウト活動は,いい活動だったと思う。国境もないトランスナショナルで,自然との調和で生きるSDGsで,相手のことを思いやる博愛の精神で,しかも自分の身も自分で守るという正義感や,規律,統制もできていた。田舎のボーイスカウトで自然と多いに融合して育った筆者の目には,都会のボーイスカウトの姿は残念ながら非常に人工的な活動に見えた。文明の利器に頼り過ぎているように見えたからである。
すでに,日本を含む世界のボーイスカウト活動は,ほぼ形骸化しているように思える。子供に対する親の価値観が変わってしまったからだろうか。自然や生き物に接する機会が唯一与えられている生物学の教育が,ほとんど絶滅危惧状態にあるのと同じだろうか。道具だけ買って形から入る1人キャンプだの,無人島サバイバルだの,あまりにも演出が多すぎて筆者には受け入れられない。
権力を持った者は戦争をしてさらに権力を強め,金力を持った者は自分の好きな世界に入り込んでしまう。国民から搾取できる社会主義国,財団に資金を集中させる自由主義国。その中で何の主義主張もない平和主義国ニッポンは,もはやピーピー騒いでいる外野扱いである。核戦争が始まったら,ほとんどの人間は逃亡するだろう。自ら抑止力を持たず,アメリカの核の傘の下に隠れ,そして抑止力のないことの象徴として,原発処理水の放出をやらざるを得ない日本。結局は「何の主義主張のない国」というレッテルを貼られているのだから,もう放出するしかないのである。
漁業関係者の話を聞いていると,「中国が買ってくれなくなるから困る」というコメントが聞かれた。筆者のわがままな考えで言えば,「そんなに金持ちに食わせて,その代金をもらえることが嬉しいのか」と言いたくなる。金さえ儲かるのなら,何をしてもいい,といった安易な考えは,筆者は嫌いである。別に中国が不買運動するのなら,それでもいいと思っているし,第一困るのは中国の国民である。でも,別に中国にペコペコすることはないのではないかと思うのである。海外からの観光客のインバウンド効果についても,なんだか日本の伝統文化がただの見世物になっているようで,非常に抵抗感がある。本当に日本の文化に関心があるのなら,まず日本語を勉強してから来い,とも言いたくなる。
処理水放水に関しては,海上の適切な場所に「放射線モニタリングポスト」を設置し,放出前との比較データを発表することで科学的な証明になると思う。その検出値が異常を示せば,放出を止める,あるいは薄める量を増やす,などの対策を取ればいい。「科学的」とは事実の積み重ねである。お題目を並べるだけでは「根拠なし」と言われても仕方がない。この場合は,やはり官僚の力量不足と言わざるを得ない。でなければ,岸田首相が常に原稿を棒読みし,同じ文言をオウムのように繰り返すだけになってしまう。岸田首相も,結局自分は何をしたいのか,をもっと明確に宣言すべきだと思うのである。